2009
01.05

2009年1月5日 年の初めに

らかす日誌

皆様、明けましておめでとうございます。
えっ、遅い? 5日にもなって年賀の挨拶は読みたくない?
更新されていることを期待して、年末年始に何度アクセスしたと思ってんだ?! ですって?

いや、遅ればせのご挨拶であることは重々承知しております。そして、あえて弁解を試みるならば、元日にご挨拶を書こうと思ってはいたのであります。ところが、できなかった。
できないには、できない理由があったのであります。かなり長くなりますが、私の弁明をお読み頂けますでしょうか?

というわけで、2009年の日誌は、弁明から始まる。けったくそ悪い。

年の瀬は何かとあわただしいものである。12月22日に日誌をアップして以降、なかなかまとまった時間が取れなかった。そうこうしているうちに、27日には四日市から啓樹がやってきた。

当日、次女とその長男瑛汰を乗せて、私は車で新横浜駅に向かった。長女と啓樹のお出迎えだ。到着時間は、午後2時過ぎであった。
その足で、川崎のラゾーナに向かった。目的地は4階の島村楽器である。啓樹との約束を果たす。そう、予約しておいた子供用エレキギターを引き取りにいったのである。
倉庫から出てきたエレキギターを見て啓樹は言った。

「ボスのと同じだね」

当然のことである。啓樹は、桑田佳祐が昨夏の30周年コンサートで使った、3トーンサンバーンという色目の、ストラトを欲しがった。だから私もそれと同じ色目、形の大人用エレキギターを先に買っておいたのだ。

買い物はこれだけではなかった。マイクスタンドがいる。ストラップも必要だ。取り替え用の弦もいくつかは持っておかねばならない。それに、いま我が家にあるアンプは啓樹が四日市に持っていくから、私用のアンプも1台買わねばならない。
そういえば、瑛汰用のクリスマスプレゼントも、マイクスタンドとマイクにした。だから私は昨秋以降、島村楽器で、マイクスタンド3セット、マイク2本、エレキギター2台、アンプ2台を買ったことになる。いや、瑛汰用のキーボードを買ったのも確か昨秋。瑛汰用のアコースティックギターも、そういえば買ったなあ。
私以上のお得意様はいるのかな?

すべてが揃って、店を出た。

「啓樹、ギター重たいから、ボスが持ってあげようか?」

少しガタイが大きいとはいえ、啓樹はまだ4歳になったばかりである。エレキギターの運搬は辛いに違いない。

「ん~ん。僕が持つ」

啓樹は、エレキギターの入ったケースを背に背負った。ケースの最下部は床につきそうである。やっぱり無理じゃないか?

「僕が持つの!」

恐らく彼の胸は、欲しくて欲しくてたまらなかったエレキギターがやっと自分のものになった喜びに震えているのであろう。ここは、多少重たくても啓樹に背負わせるしかない。啓樹はエレキギターケースを背負い、ラゾーナの店内を練り歩いた。

我が家に戻る。瑛汰も一緒である。当然、瑛汰は言う。

「サザンしたい!」

かくして、我が家の茶の間にマイクスタンドが2セット並び、マイクが取り付けられる。啓樹はケースから我がものにしたばかりのエレキギターを取り出し、瑛汰は我が家に置きっぱなしにしておいた子供用アコギを持った。薄暮コンサートの開始である。

エレキギターの調整に島村楽器に行った日もある。弾くとビビッた音が出ていたからだ。ネックに触れているのであろう。弦の高さを調整してもらう。トレモロアームも違ったものが同梱されていた。どうやってもブリッジにある穴にねじ込めないのだ。
川崎のエスパにも行った。日常の買い物に加え、風呂でのおもちゃを仕入れるためだ。なにしろ、啓樹と瑛汰を風呂に入れるのも私の仕事なのである。

啓樹を連れて映画を見に行ったのも暮れのことだ。「トミカヒーローレスキューフォース」というのだそうだ。子供用の映画とは、ここまでの無茶苦茶が許されるのか、という内容は感心しなかったが、啓樹はジュースも飲まず、食べ物も口にせず、スクリーンに見入っていた。
子供向けの映画を見たのは何十年ぶりだろう……。

終わって、啓樹のリクエストでオムライスを食べに行った。帰りに、川崎アゼリアで甘栗とケーキと久留米ラーメンを買った。

「いつまで遊んでんのよ! 啓樹は昼寝の時間なんだからね!!」

長女から電話が来た。あわててタクシーで帰宅した。
しかし、啓樹を連れ出して楽をさせてやっているのに、製作責任者からどうして怒られなければいけないのだろう?

つまり、我が家は12月27日から、完全に保育園と化した。私は園長兼運転手兼サンタクロース、妻は賄い婦である。
30日には啓樹のパパが四日市から到着した。夜は当然宴会となる。こんな日々に、らかすの原稿を書く時間が入り込む隙間はない。
事情はご理解頂けたであろうか?

いや、実は隙間がないことはなかった。大晦日の31日と元日である。私は、年末のご挨拶と年明けのご挨拶をこの両日に実行する予定を立てていた。
それが実行できなかった。当然、訳がある。

まず、大晦日。
この日長女一行は、啓樹のパパの実家である群馬に向かうことになっていた。では、年越しそばはお昼にいただこということになり、そばを予約していた横浜の山本まで次女一家が引き取りに行ってくれた。我が家についたのがお昼前。啓樹と瑛汰が競うようにそばを食べ、

「瑛汰と遊びたい。群馬には行きたくない!」

とダダをこねる啓樹を、エレキギター、アンプ、マイクスタンド、マイクと一緒に車に放り込んだのが午後1時過ぎ。次女一家もいなくなり、我が家に静けさが戻った。

久しぶりに自宅のパソコンを立ち上げた。立ち上げてすぐ、その日のうちにやっておかねばならないことがあるのに気が付いた。 DVDのコピーである。
長女の一家は、一家をあげてサザンオールスターズのファンである。加えて、子どもというのは、親を死ぬまで利用するものらしい。

「お父さん」

と長女から何度も電話をもらった。

「WOWOWでサザンのコンサートやるんだけど、録っておいてくれる?」

番組録画の依頼である。いま思い返す。結婚した長女から私にかかってくる電話は録画依頼を除いては皆無ではなかったか?
とは思いつつ、でも依頼は断れない。老いては子に従うのが人の常なのだ。こうして、長女宅には、膨大な量のサザンのコンテンツが動画として蓄積されている。

そこへ、啓樹の影響で新たな熱烈なサザンファンが登場した。瑛汰である。であれば、長女が保有するサザンの動画コンテンツを瑛汰のためにコピーせねばならない。
というわけで、車でやってきた啓樹のパパは、膨大なサザンのDVDを運んできた。そのコピーは、長女一家が四日市に帰るまでにすませねばならない。

「今日のうちにやっておかないとできないな」

パソコンを立ち上げた私は、そう考えた。直ちにコピー作業に手を染めた。

なにしろ、膨大な量である。午後10時をすぎても、作業はまだ残った。

「そうか、じゃあ年末の挨拶は抜きにしよう。明日、新年の挨拶を書けばいいじゃないか」

年末の挨拶はこうしてなくなった。この事情は納得頂けるものと信じる。
私は布団に入った。

元旦。6時前に目が覚めた。元旦とはいえ、目覚めてやるべき事はいつもと変わりない。犬の散歩である。
着替えをすませ、犬を連れて外に出た。まだ日は出ていない。明るくなりかけた空を見上げる。初日の出を見るのは何年ぶりだ? それにしても、綺麗な空だなあ。雲一つない元旦の空。

今年こそ何かいいことある如し元旦の空晴れて雲なし

石川啄木のパクリかも知れないが、そんな句が浮かんだ。よし、2009年のらかすは、これで始めよう。
まだ肌寒い平安公園で犬の糞を取りながら、そう思い決めた。清々しい年明けである。

元旦である。元旦とは1年で唯一、私が朝から酒を飲む日である。ぬるめの燗を2合ほど飲み、雑煮の餅を2つ食べた。腹ごしらえはできた。さあ、パソコンでの作業だ。

まずは、新年の挨拶を書く前に、昨日からの作業を完成させなければならない。ダビングしたDVD-Rのラベルプリントである。午前中にこの作業を終え、酒が抜ける午後から挨拶を書く。

スキャナの電源を入れ、フォトショップでラベルにするための画像を読み取る。少し綺麗にするため、フォトショップで画像に手を入れる。
ん? おかしいな。作業にえらく時間がかかるな。あれっ、作業がまったく進んでないぞ。フォトショップ、どうした? なんで命令したことをやらないんだ?
仕方ない。フォトショップを強制終了しよう。あれっ、強制終了もできない。どうした?

そういえば、この愛用のMac、年末から調子がいまいちだったな。年賀状を作ろうと宛名職人を立ち上げたのに、宛名職人が画像を読み込んでくれない。あれは仕方なく最新版のダウンロード版を購入してして何とかなったが。
ほかにも、エクセルが突然ダウンしたり、MacTheRipper(知る人ぞ知るフリーソフト)でDVDが読み取れなかったり。
あれかな、OSが壊れてるのかな?
よし、新年だ。気持ちよく作業をするために、OSを再インストールするか。

何故か、そう考えてしまった。そう考えて、作業に取りかかってしまった。数時間後に頭がパニック状態になり、顔面蒼白になるなど、神ならぬ身の私が予見得きるはずもない。

このパソコンには、必要なファイルがたくさん入っている。だから、ファイルやアプリケーションはそのまま残さねばならない。OSだけを入れ替えるには、OSのインストールで、オプションから「アーカイブしてからインストール」(という表示だったと思う)を選択すればいい。
という知識が、後に裏目に出る。知識が人を裏切るとは、知識本来の働きをしていないではないか、と文句の1つも言いたくなるが、さて、この文句は誰に向かっていえばいいのか?

外付けのDVDドライブにOSがはいったディスクをセットする。このディスクから起動し、インストールを選択。オプションから「アーカイブしてからインストール」を選択して次に進んだ。次にインストールボタンをクリックすればいい。まあ、所要時間は1時間程度か。
ボタンをクリックした。私は読書を始めた。年末年始に読もうと思って買っておいた「ローマ亡き後の地中海世界(上)」(塩野七生著、新潮社)である。長い休みは知的な読書をする絶好の機会である。

30分ほどたった。パソコンを見る。えっ、インストールが進んでいない? 作業の進行状況を示すタスクバーは作業が10分の1も進んでいない状態で止まっている。

「このタスクバー、動いているか?」

ディスプレーを見る。どう見ても動いてない。残り時間14時間28分の表示も見える。OSのインストールに14時間もかかるというのも問題だが、念のために10分ほど待った。タスクバーは同じ場所で止まっている。残り時間14時間28分の表示もそのままだ。
OSのインストール作業が途中で止まってる?!

後で考えれば、私はこの瞬間からパニックに陥ってしまったのだと思う。パソコンを使い始めてかれこれ15年。ずっとMacを使い続けているが、OSのインストール作業が途中で止まってしまうなど前代未聞のことなのである。

私は慌てた。元旦から慌てた。原因を考える。だが、私の頭の中をどう覗き込んでも、現在の障害の原因を特定できる知識は転がっていない。だが、何か原因らしきものを特定しないと、次に何をしたらいいのかが見えない。

「外付けのドライブから、というのがいけなかったのか?」

そう考えてみた。ファイヤワイヤで接続してあるからそのようなことが起きるはずはないのだが、ほかに何も思いつかない。内蔵のドライブからOSの再インストールを試みた。
インストール作業は、やっぱり途中で止まった。おかしい。何が起きているんだ?

雲一つない空では、すでに太陽が中点をすぎ、西に傾き始めていた。

この状態で疑うべきは、内蔵のHDに残っているソフトのどれかが、インストール作業の邪魔をしている可能性である。とすると、内蔵HDを一度初期化してOSを入れ直すしかない。では、必要なファイルを外付けのHDに保存しなければ。
まず、内蔵HDから立ち上げて、と。?! 立ち上がらない!!
えっ、途中までOSのインストールが進んだということは、内蔵HDに入っていたOSはその分だけ消えちゃったということなのか?

仕方ない。では外付けのHDから立ち上げよう。よし、これはうまく行った。では、必要なファイルを外付けHDに移さなくては。必要なのは、iPhotoに貯め込んだ写真と、エクセルで整理したDVD、ブルーレイの情報と、メールと……、
おい、ないぞ! なくなってるぞ!! どうして……。
あっ、内蔵ドライブからインストールしようとした時、そういえば「アーカイブしてからインストール」をクリックしてない……。外付けHDにバックアップを取ったのはいつだっけ……。

パニックが頂点に達した。それはそうであろう。OSの再インストールはできない。必要なファイルはすでに消えてしまった。パソコン所有者なら、どちらか1つでもパニックになる。なのに私は、2つものパニックの素に同時に襲われてしまったのだ。
とほほ……。

気を取り直した。人間、諦めが肝心だ。失われたものは泣いてもわめいても取り戻せない。であれば、目先の課題を解決するのが先決問題だ。OSのインストールである。
ここまで来て覚悟を決めた。内蔵HDを初期化して、まっさらにしてインストールする。残された道はそれしかない。

早速取りかかった。今度はうまく行った。うまく行って、新しいOSが初期設定を要求してきた。その中で、外付けHDから各種の設定やアプリケーションを引き継ぐかと聞いてきた。当然、すべて引き継ぐ。ネットワークの設定は面倒なのだ。ソフトのインストールにも膨大な時間がかかる。外付けHDに取っていたバックアップから引き継げれば楽である。

すべての作業が終わった。
インターネットへの接続も、苦労したが何とかなった。これで健康なパソコンに戻ったはずである。

もう夕暮れが迫っていた。

午前中に終えるはずの作業が中断していた。スキャナから画像を読み取らねばならない。フォトショップを立ち上げる。スキャナから画像を読み取るには、ファイルメニューから「読み込み」を選び、出てきた選択肢からスキャナの型番を指定すればいい。
……、「読み込み」にスキャナが出てこない。スキャナのドライバーが入ってなかったか? じゃあ、キヤノンのホームページにいってダウンロードしてインストール、再起動、フォトショップを立ち上げて……、出てこない!

どうした、Mac、お前、健康体になったのではなかったのか? これじゃあ、作業ができないではないか!

パニックの追い打ちである。どうすりゃいい? 水を換えてもらえず、溶存酸素量が減ったため、水面に口を出してぱくぱくやっている金魚の心境である。

そうか、フォトショップが壊れていると判断するしかないか。外付けHDに入っているフォトショップが壊れているとすれば、解決策は1つだけ。内蔵HDをもう一度初期化し、OSをインストールする。外付けHDからは何も引き継がず、ソフトは新たにインストールし直す。これしかない。
と方針を決めた。とすれば、ネットワークの設定もゼロからやり直しである。現在の設定をプリントアウトする。これを見ながら同じように設定すればつながるだろう。さあ、初期化にかかるか。

いや、待て!
「らかす」を作るのに使っているDreamweaver8の設定はどうすればいいんだっけ? 最初は人にやってもらったから、まったく記憶にないぞ。Dreamweaver8でサイトにつなげられれば、ひな形もすべてサイトにおいてあるから何とかなるが、Dreamweaver8をどうやってサイトにつないだらいい?
解説書は? 困った、どこを捜してもない。分かりにくい解説書だったから、ひょっとしたら捨てたか? Dreamweaver8が使えないと、「らかす」の更新はできないぞ!

というわけで、年末年始に更新ができなかった、わけではない

何とかしたのだ。フォトショップに問題があるのなら、外付けHDに入っているフォトショップを捨て、その上で外付けHDに入っている設定やソフトを引き継げばいいと考えた。

結論を急ぐ。これはうまく行った。そしてフォトショップだけを新たにインストールし、スキャナとプリンターのドライバもインストールして、我がMacはなんとか使えるようになった。時はもう午後10時を回っていた。

そこからDVDのラベルプリント作業が再開したのだ。残り2時間を切った元日に、年始の挨拶を書く時間があるはずがなかった。

というわけで、2009年は、年明けからなんだか不安である。
いや、不安は私だけでよい。ひょっとしたら、お読み頂いている方々のこの1年の不幸も私が元日に背負い込んでしまったのかも知れない。
皆様には、パニックと縁のない1年をお過ごし頂きたい。

2日には、群馬から啓樹たちが戻ってきた。再び我が家は保育園と化した。
今日から出社。会社でこの原稿を書きながら久々の息抜きをしている。

そうそう、我がMac、実はまだ健康体ではない。ソフトを立ち上げると読めない文字が書き連ねられたウインドウが現れ、Quick Timeが 壊れているとのメッセージが出る。
エクセルに長い文章をペーストしようとしたらクラッシュした。何度やってもクラッシュする。文章を多少短くしてペーストしたら何ともなかったが。

近く時間を取って、根本的な治療に取り組まねばならないようである。

というわけで今年も、あらゆる困難と闘いながら「らかす」は書き継ぐ予定である。事情ご賢察の上、サポートをよろしくお願いしたい。