2009
04.12

2009年4月12日 4月病

らかす日誌

人間とは気分で大きく左右される生き物だと、つくづく思い知らされた。
桐生市に移転してきて、もう2週間になる。読者の方ならすでにご承知のように、この間、日誌を更新したのはたったの1回だけである。

「さぼるにもほどがある!」

と失望された方も、中にはいらっしゃるかも知れない。その方々へのいい訳が冒頭の文章である。

時間はある。いつも午後6時か6時半には自宅に戻り、風呂に入って夕食を取る。首都圏と違い、桐生は地方都市である。通勤時間、なんてものは無視できるほどに短い。
遅くても7時に始まる夕食は、どうやったって8時には終わる。だから、時間はたっぷりすぎるほどある。

ついでに書けば、朝だって時間はある。初めての土地なので愛犬「リン」を連れての散歩が近隣視察となり、やや長くなったことはある。それでも7時には自宅に戻る。そして朝食。なにしろ通勤時間がほぼゼロに近い街なのだ。仕事に出かけるまでに、時間は有り余るほどある。

なのに、日誌の更新が進まない。気力が沸いてこない。

当初は引っ越し疲れだった。定年間近という年齢は、肉外労働には向かない。段ボールをあけて荷物を整理するだけなのに、引っ越して数日間は歯ぐきが痛んだ。次女の旦那に頼んで抗生剤と痛み止めを贈ってもらった。おかげで、痛みは去った。同時に疲れも抜けた。

だが、気力が沸かない。
あれほど好きだった本が、あまり読めない。横浜にいたときに読み始めた「カポネ」(佐藤賢一著、角川文庫)は、やっと下巻の92ページまで進んだだけである。これまでの私の読書量からすれば、文字通り遅々として進まない。

テレビを見ない。朝食をとりながらNHKの7時のニュースを見る習慣は残っている。夕食を取りながら夜のニュースも見る。それだけである。NHKの帯ドラマは見る気が起きない。

あれほど好きだった映画も、機械的に録画をするだけである。録画済みのディスクを取り出して映画を鑑賞しようという気が起きない。

ステレオは2セット設置した。横浜のダイニングキッチンにあったシングルコーンスピーカーのシステムと、リビングにあったマルチアンプのシステムである。だが、CDを取り出して音楽を聞こうという気にならない。我がステレオはいま、単なる家具と化している。

アコースティックギターも、エレキギターも持ってきた。早く上達して、四日市の啓樹に聞かせ、自慢をしなければならない。そう思うから、ギター教室も探した。1回30分のマンツーマン指導を月4回で7350円。店主と話しもしたが、我がギターたちはギタースタンドで突っ立ったままである。手も触れられず、うっすらと埃がたまってきた。

という状態が続いた。
では、たっぷりの時間に何をしていたのか?

焼酎を飲んでいた。パソコンに向かい、ちょっとした調べものをしながら、ゲームに時間を潰しながら、湯飲みに注いだ焼酎を口に運んでいた。自宅で泥酔するのもありがたくないので、せいぜい2、3回お代わりするだけだが、そうしながらボーっとした時間を過ごしていた。
まるで、失恋でもしたかのような時間の過ごし方である。

おまけに、睡眠障害まで加わった。寝酒に焼酎をたしなんでいるにもかかわらず、睡眠が浅い。夜中に2度、3度と目覚めてしまう。トータルの睡眠時間は6時間、よくても6時間半である。最近はなかったことだ。
だから、ボーっとしているのには眠さも加わっていたのである。俺はこの年齢にして恋患いか?

大学に入ったり就職をしたりで自宅を離れた若者は、5月になると望郷の念がにわかにわき上がり、落ち着かなくなるという。5月病である。
私には望郷の念は薄い。だが、ボーっとして、何かに取り組む気力を失ったのは確かである。桐生市に引っ越してわずか2週間。知人も友人もいない土地で、早くこの街になじみたいという思い、遅々として人脈作りが進まないという焦りがストレスになったらしい。
私は5月病ならぬ4月病にかかってしまったのだ。流行は追わない、いいものしか見ない、をモットーにする私なのに、これだけは季節を1ヶ月も先取りしてしまった。

が、それもほぼ終わりを迎えたらしい。今朝は朝から買い物に行き、桐生のそばとうどんをたべた。そばはそこそこだが、うどんは美味しかった。ツルツルしてのどの滑りがよく、噛むともちもちした弾力がある。コシが強すぎることもない。極めて上質のうどんである。
で、お腹がくちくなったころで自宅に戻って昼寝をした。これがよかったらしい。目が覚めたら久しぶりに日誌を書こうという気になっていた。

だから4月12日は、私のサラダ記念日、ならぬ、4月病からの脱却記念日となった。

気を取り直してみると、皆さんにお伝えしていないことがたまっている。明日以降、できるだけ頻繁に日誌を更新しようと思う。

ま、実行できるかどうかは不確かだが……。
あまり期待をせずにお待ち頂きたい。