2009
12.13

2009年12月13日  末期?

らかす日誌

さて、久々の愛犬「リン」の登場である。

ガンの宣告を受けてから、間もなく3か月。相変わらず尿の出は悪い。朝夕散歩に連れ出すと、

「待ってました!」

とばかりに体を丸める、雌犬独特の排尿ポーズをとる。それですっと出てくれたら本人、いや本犬も楽なのだろうが、それが出ない。出ないから本犬も力を入れる。

 「ウーン、ウーン」

といううなり声が聞こえてくる。声だけで、リンが渾身の力を込めて尿を押し出そうとしていることがわかる。それにもかかわらず、彼女の股間からは、ポタポタという、壊れた水道の水漏れのような尿しか出ない。3分、5分……。道路に世界地図はできず、せいぜいが日本地図、いや群馬県地図といった量である。やがて、あきらめたのか、力尽きたのか、リンはすたすたと歩き出す。が、激しい残尿感があるらしい。5mも進まないうちに、また排尿ポーズに入る。
可愛そうだとは思う。だが、してやれることは何もない。

2週間ほど前から、様子が変わった。屋内で排尿を始めた。 散歩の時間を待ちきれなくなったらしい。しかも、1度始めると3度、5度と立て続けに排尿をする。
まあ、その程度なら対処の仕方もある。できるだけ庭に出す回数を増やす。いまの住居は庭があるからありがたい。それでも排尿を始めたらすぐ庭に出す。2度目以降の排尿は外でさせ、被害を最小限に食い止める。
屋内の被害箇所は水分を拭き取り、ファブリーズを振りかけてにおいを消す。

1週間ほど前から、さらにひどくなった。朝の散歩から戻って1時間もたたないうちに屋内で排尿するのだ。1回あたりの尿量はそれほど多くはないが、20分、30分の散歩の間に10数回排尿をする。全部合わせればそこそこの量が出ていたはずで、だから、それまでは散歩の後しばらくは排尿行動をとらなかったのだろう。それが、散歩が終わって1時間もしないうちに次の排尿……。排尿障害が進んだとしか考えられない。

2日ほど前から、症状をさらに進んだ。餌を食べなくなった。

いま食べさせているのは、膀胱結石ができにくくなるドッグフードである。獣医の指示で、その獣医から買ってきた。ドライフードと缶詰の2種類ある。ドライだけでは食が進まなくなった後は、両方を混ぜて与えていた。缶詰だけ食べてドライは残す、ということもあったが、それは好みの問題だから仕方がない。
ところが、2日前から缶詰も食べなくなった。

今朝、獣医に行ってきた。事情を話すと、鶏のささみやキャベツを湯がいたもの、一般のドッグフードの缶詰を与えよ、とのことだった。食事ができずに体力が落ちるリスクと、膀胱結石ができるリスクを比較し、まず食事をとらせる方がいいと判断したものと思われる。
獣医からの帰り、缶詰のドッグフードを5種類ほど購入してきた。うち1つを与えると、瞬く間に食べ尽くした。
ホッとした。まあ、1年ほどと見立てられた余命である。計算をすれば、あと9ヶ月ということになる。だったら、食べたいものを食べろや。

それもつかの間だった。

「あっ、全部戻してる!」

妻の素っ頓狂な声が玄関から聞こえた。行ってみると、食べたばかりのドッグフードが、大きな塊になって玄関のたたきにあった。胃が食べ物を受け付けなくなった?

同時に、昨日から下痢気味である。私も、酒を飲み過ぎた翌日は下痢をすることがあるが、リンは酒は飲まない。
そろそろ消化器系がおかしくなってきたのか?

とりあえず胃腸薬を飲ませた。これで止まってくれればめっけものだ。
夕方からは食事もさせる。あんなに嬉しそうに食べるのに、やっぱり吐くのかなあ……。

我が家はいま、リンのホスピスである。