2010
01.24

2010年1月24日 今日は

らかす日誌

今日は、久しぶりに朝から散歩をした。暖かい日だったので薄いセーターだけで出かけ、途中でセーターも脱いだ。

今日は、Martin D-41の弦を張り替えた。まだ音に狂いは出ていなかったが、弾くたびに、左手の指が黒ずんでいた。おそらく錆び始めたのだろう、と判断した。

今日は……。

いや、そんなことはどうでもいい。今日は、リンが退院してきた。そして、ひょっとしたらいま、死の淵にいる。

午後7時の迎えと思っていたが、医者が

「落ち着いているので、夕方でもいいですよ」

といったので、4時過ぎに迎えに行った。病室、といっても金属製の檻だが、そこから出てきたリンは、覇気がなかった。落ち着いてる?

呼んでも振り向かない。私の顔を見ても寄ってこない。何故か足元がヨロヨロしている。歩くのもしんどそうだ。

まあ、激しく動き回ったりしないので、落ち着いているという表現はまんざらはずれではない。しかし、これは落ち着いているのではなく、病状が悪化しているのではないか?
これを落ち着いてる、という? 専門家である医者が?

車に乗せた。妻が後席で抱く。声も出さない。動きもしない。じっと抱かれている。やはりおかしい。

自宅に着いた。車から降ろすと、駐車場で長々と排尿した。それはいい。だが、排尿時の態勢がこれまでと違う。
雌犬は排尿時、後ろ足を大きく曲げ、腰を思い切り落とす。これが定番である。
リンの場合、尿が出にくくなってからは、さらに体全体を大きく曲げ、まるで大便時のような姿勢を取っていた。そちらの方が力が入るのであろう。

だが、車から降りて排尿を始めたリンは、腰を落としもしないし、体を曲げたりもしない。立ったままで力んでいた。そして、立ったままなのに、時々ふらつく。

「おかしいな」

とは思った。が、問題の尿はかなりの量が出た。だったら、まあ、いいか。檻の中の生活で運動不足にでもなったか?

異変は、徐々に形を取った。
かなりの尿を出したにもかかわらず、屋内に入ったリンは頻繁に排尿をした。ついには、床に伏せたまま、排尿を始めた。
そのたびに、妻が、私が尻を持ち上げてペットシートを敷く。排尿が終わると、そのままの姿勢で自分の尿の上に横たわったままだ。立つ元気もない。

犬は綺麗好きである。排尿、排便は自分のテリトリーの外でする。特にリンは、引き取ってきたばかりの子犬の時、屋内での排便をしつけようとしたが、どうしてもなじまなかった。彼女は、自分のテリトリーである我が家を離れる散歩時にしか、排便、排尿をしなかった。徹底的な綺麗好きなのだ。
それが、自分の尿の上に横たわる。ここまで来ると、おかしいな、ではない。異変である。落ち着いているのではない。弱っているのだ。医者はどんな眼を持っているのやら……。

屋外で排尿させるのはあきらめた。仕方がない。屋内で出せばいい。尿の上から動けないのなら、毎朝下半身を洗ってやろう。
そう思い決めた。それしか、私たちにしてやれることはない。

いまリンは、ダイニングの床に敷いたペットシートの上に横たわっている。眠ってくれればいいのだが、どうやら眠れないようだ。間断なく低いうなり声を上げている。
うなり声が高くなったので、事務所を出てそばに行ってみた。眠ってはいない。なのに、私がそばに行っても顔も向けない。尾も振らない。呼吸が荒い。時折、ピクッ、ピクッ、と痙攣してる。

「血液検査もしたのですが、脱水症状もそれほどひどくないですね。肝臓の数値は少し悪くなっていますが、これくらいなら問題ありません。病状はそれほどひどくなっていません」

動物病院で聞いた医者の話を思い出した。
そうかね、俺の目には病状はかなり悪いように見えるのだが。あんたは血液検査の数値だけしか見てないんじゃない? リンの様子を、自分の目で見てみたのかい?

 「そうですね、できれば週に2回連れてきて頂いて、点滴をしたいのですが。餌は少量ずつ、何回にも分けて与えてください。水は置きっぱなしにせず、ホンの少量あげてください。あと、尿検査もしたいので、尿の採取器を入れておきます」

リンは、確実に病状が進行して退院してきた。
この間の治療費とこれからしばらくの病犬食で合計3万7000円。

いや、金を返せとはいわない。だが、退院直後のリンを見ていると、何だか納得できないのである。

また様子を見てきた。リンの呼吸は相変わらず荒い。だが、呼吸をしてくれてくれるだけでもありがたいと思わなくては……。