2010
03.31

2010年3月31日 桐生

らかす日誌

桐生に移り住んで、丸1年。
そんなことを記憶していらっしゃる方が読者の中にいらっしゃるとはとても思えない。
限りなくプライベートなことであってみれば、読者という立場で、私のそんなことにまで思いを馳せられる方がいらっしゃるとは思えない。

しかし、早いものである。正確に言えば、桐生に移ったのは昨年の昨日、3月30日のことだった。そのころの事情は「2009年4月3日 ごめんなさい」に詳しい。興味を呼び起こされた方はお読み頂きたい。
日誌の通しナンバーは、その日が271。今日は399である。ということは1年間で129本の日誌を書いたことになる。3日に1本強。よく書いたものだ。これだけは自分を褒めなければならない。一文にもならないのに……。

1年前、私は書いた。

「まだ友はいない。行きつけの店もない。何もない中で、ひたすらに生きている」

新たな土地に移り住んだ直後の、多少の心細さもあったのだろう。しかし、転居しただけで心細くなるとは、還暦を過ぎた私も、まだ可愛いではないか?

当時の私は、おずおずと桐生の人々のお話を伺っていた。
1年たった私は、決しておずおずとお話を伺うことはない。

 「いいですか? 桐生の人たちは井の中の蛙(かわず)に見える。自分の暮らす範囲内のものしか見ない。外の世界があることを意識しようともしない。自分の目で見える範囲が世界だと思い込んでいるから、桐生の動物園や遊園地を誇る。あれはただだから幼稚園の遠足が来るのであって、入場料を100円でもいいから取ってご覧なさい。入場者は10分の1に減りますって」

などと言ってのける。

「えっ、それだったら、俺が市長になった方が遙かにましじゃん!」

と、飲み屋で叫ぶ。無論、

「立候補しても絶対に当選しないけどね」

と付け加えることは忘れないが。
ああ、時間とは、慣れとは、習熟とは、ここまで人を変えるものなのか。

ん? ということは、俺もギターに時間を費やし、慣れ、習熟したら、若い女の子をブイブイいわせる男に変身するってか?

ギターは相変わらず、Diamond Headを やっている。少しずつ慣れてきているとは実感するが、習熟までにはほど遠い。日暮れて道通し、である。
ということは、あれか。俺が若い女の子をブイブイいわせるのは80歳を過ぎてから、ってか……。

明日から4月。1年前、満開の姿で私を迎えてくれた桐生の桜は、まだ恥ずかしげにつぼみのままである。無理もない。寒い。桜は、全身を包む冷気の中で、じっと春を待つ。

私に引き戻すと、毎朝の散歩は、寒さとの戦いである。戦うといっても、両手をポケットに突っ込んで歩く程度だが。

これで、明日から4月。どうやら今年から、地球は寒冷化に向かっているらしい。