2010
06.02

2010年6月2日 やめちゃった

らかす日誌

やめちゃったね、鳩山さん。
昨日は小沢さんとの会談のあと、憮然とした表情の小沢さんとは対照的に笑みまで浮かべながら報道陣の前に姿を現し、左手の親指を立てるポーズまでとって

「ああ、やっぱり宇宙人?」

なんて感じがしていたのに。
それで、今朝の朝刊はどこも、鳩山さんはやめないんじゃないかと書いていたけど、すっかりだまされたんだね、ありゃあ。
あの人たち、ちゃんと取材してるのかなあ……。

でも、振り返ってみれば、シナリオ通りのやめ方だね。
鳩山内閣は最初から政治と金の問題でやり玉に挙がり、新年度予算編成で期待を裏切り、あのころから

「これで内閣支持率は落ちる。でも、ギリギリ引っ張って夏の参議院選前に鳩山さんと小沢さんがそろってやめる。そうすれば支持率が回復して選挙に勝つ」

っていわれてたもんねえ。思惑通り行くかどうかは分からないけど。

普天間で醜態をさらしたのも、その前に首相が替わっていたら、新首相が醜態をさらす結果になるから、どうせなら鳩山さんに全部おっかぶせちゃえ。そうすれば、新しい首相はピッカピカのままで参院選が戦える、と誰かが考えたとしても不思議はないもんなあ。
政治とは、そういう計算を積み重ねるものらしい。

しかし、鳩山さん、もう少し頭がいいのかと思っていたけど、結局は学生気分が抜けきらない、お金持ちのお坊ちゃんだったね。
この人が、多分真面目で、正直で、日本の政治を何とか変えなければならないという使命感に燃えていたことは間違いない。
でも、人間関係は、正直なだけではうまくいかない。特に、様々な思惑がぶつかり合う政治の世界では、真面目で正直、というのは、馬鹿に限りなく近い形容詞になってしまう。

普天間問題で

「少なくとも県外」

といったのは、この人の正直さの表れだろう。だけど政治家とは、それが実現できる道筋をつけるまでは、そんなことは口が裂けてもいってはいけない。
結果的に沖縄県民の怒りに油を注いでしまった顛末を見れば、政治家の正直さは美徳ではないといわざるを得ない。

で、次は誰?
誰なら期待できる?
うーん。誰にも期待できないのが悲しい。

 

昨夕、自宅に私を訪ねてきた若き女性がある。我が社の前橋で働くアルバイトのM君だ。
電話があったのは月曜日である。

「大道さん、夕方いますか? お届けしたいものがあるんですが」

月曜日は知人と酒を飲む約束があった。その旨を告げると、

「じゃあ、火曜日の夕方おじゃまします」

M君が、私に届け物がある? なんだろう? いきなり

「これ、あんたの子供だからよろしく」

といわれる覚えもないし。
月曜日は深く考えずに酒を飲んだ。

昨夕になって、再び、なんだろう? と考えた。そういえば彼女は6月いっぱいでアルバイトをやめ、知人の会計事務所で、正社員として働くのだと聞いた覚えがある。
だとすると、あれか。在職中はお世話になりました、って菓子折でも持ってくるのか?
といわれてもなあ。私は桐生、彼女は前橋で、顔を合わせるのは年に数回。顔を合わせてもたいした話をした憶えはなく、彼女の仕事を手伝った記憶もない。もちろん、コーヒー1杯ごちそうしたことすらない。

届けるというのだから、この推測に間違いはないはずだ。でも、私が彼女から何かをいただくいわれは全くない。

「だとしたら、彼女を手ぶらで帰すわけにはいかない」

そう思い立って夕方、マリーポールに出かけた。この店の生チョコレートケーキ、特濃チーズケーキは評判がよい。

「これ持たして帰そう」

彼女がやってきたのは7時を回っていた。前橋での仕事が遅くなったという。

「おい、もうこんな時間だから、飯食っていけ」

 「いやあ、これから太田にも回るんで」

 「どこに回っても、腹は空くだろう。まあ、いいから上がれ」

初めて、彼女と少しまとまった話をした。

「あのさあ、経済って、経世済民、つまり世をおさめ、民を救う、って言葉を縮めたものなんだよ。なのに、いまや、民を絞って企業を太らせるのが経済になっている。アルバイトなんかで働かせるうちの会社は酷いものだ。やめたのは正解。正社員の口があってよかったなあ」

彼女、27歳。フルーツゼリーを持ってきてくれた。私は食べようとは思わないが、持ってきてくれた気働きに感じ入った。若い者も、なかなか捨てたものではない。
彼女は美味しそうに夕食を食べ、マリーポールのケーキを持って帰っていった。もう試食はすんだだろうか? 新しい職場で充実した日々が送れるよう祈ろう。

おめでとう、M君。