2011
01.08

2011年1月8日 ひな人形

らかす日誌

を見に行ってきた。

お断りせずともご理解いただけると信ずるが、私の趣味ではない。動かず、声を出さず、触っても何の反応も返してこないフィギュアに、私は何の関心もない。

が、我が妻女殿と次女は、年明けから大きな関心を示している。新宿。伊勢丹に出ているひな人形がどうの、横浜のそごうのやつがこうの、と情報交換に余念がない。

そうなのである。昨年、我が一族に璃子が加わった。今年、璃子が初めてひな祭りを迎える。
それだけなら、私は無関心を決め込むこともできる。白酒など飲みたくもないし、間食をしない私はひなあられを食べたいとも思わない。
ところが、である。どうやら、璃子のひな人形を買うのは私の役割らしいのだ。だとすると、他人事ではない。

「伊勢丹の、これいいねえ」

正月、妻女と次女の会話が遠くから聞こえてくる。

100万円かあ。値段もいいわねえ」

おいおい、お前たち、お前たちはいったい、私の財布をどの程度のものと考えておるのだ? 人形に100万円? そんな金があったら、横浜の自宅の駐車場のフェンスを新しくしても、まだお釣りが来るぞ!

今日は、みどり市大間々町まで出かけた。ここで、私の知り合いが人形店を開いている。

「最近はねえ、五月人形もひな人形もネットで買う人が増えて、私たちもネットの値段を気にせざるを得なくなってるんですよ。うちはねえ、ネットより少し安い値段をつけてます。そうじゃないと商売にならないから」

人形屋さんもなかなか辛い時代である。それでも、ひな人形が終わり、五月人形が終わると、ひな人形の仕入れを始める年末まで仕事は暇らしい。
1年を半年で暮らすいいじいちゃんが経営する人形店である。

それほど広くない店に、数十のひな人形が飾られていた。
まあ、都会ではない。高価なひな人形が売れる土地柄でもないはずだ。という思い込みは、値段札を見た瞬間に吹っ飛んだ。

「えっ、これが50万円!」

おいおい、ネットより安くするっていってたんじゃないの?
目をこすって値段札を見直してやや安心した。
42万5000円と書いてある札の右上に、小さな数字でこの店の値段が書いてあった。27万円

「へーっ、こんなに安くするんだ」

安くなっていても、27万円はちと、いやかなり高いが。

妻女が指さすひな人形を6つ、写真に収めた。
私が気に入ったのは、ちと、いやかなり高い27万円のものである。屏風には本物の桜の花が埋め込まれている。何よりよかったのは、官女のまとう着物の色だ。赤と黄色を主体にした派手な着物が多い中で、この人形だけは紫がかったシックな色合いの着物を着ている。お洒落である。

「でも、27万円はなあ……」

とつぶやいていたら、聞きつけたのか女将さんがいった。

「こちらは、全体はやや小振りになっていますが、人形は同じですよ」

なるほど。金箔の屏風の前で確かに同じ人形が鎮座している。30万円、売値は19万5000円……。

とりあえず娘に相談するといって引き上げてきた。
夕方、店主から電話をもらった。

「勉強させてもらいますんで、よろしく」

勉強程度ではなく、できればガリ勉して欲しいところである。

「娘の意向を聞かないと何とも。ところで、おたくの店に置いてないヤツも取り寄せてもらえますか? 娘が横浜や東京で見て気に入るのがあるかも知れないし」

「取引のある先だったら、お取り寄せします。ひとつ、よろしく」

さて、我が家の家計からどの程度の金が消えることになるのだろう?

しかし、と考える。ひな人形を買うとは、非常に不思議な買い物である。
これから買うひな人形は、璃子のものである。それなのに、所有者になるはずの璃子の意向は全く斟酌されない。どれを買うか決めるのは、璃子の母親である次女、それにバーバである我が妻女である。いや、部分的には私の財布の重さも関係するが。
璃子が物心ついたとき、

「璃子、このおひな様嫌い!」

といわない保証はどこにもないのだが。

 

さて、我がヘルニアである。
医者の言いつけをきっちり守り、毎食後、きちんと薬を飲み続けている。薬の効果か、我が自然治癒力のおかげか、あるいは単なる思い込みか、そのあたりははっきりしないが、左脚に少し力が戻ってきたような気がしてきた。ほとんど持ち上がらなかった左脚のつま先も、座った状態で12cmほどは持ち上がるようになった。右足は16cm持ち上がるから、まだ完全ではないが。

と、とりあえずは順調な回復過程にある私だが、妻女は再び腎臓が悪化しているようだ。排尿した跡のトイレが再び泡立つようになった。尿タンパク値が上がっているのであろう。腎臓の機能が衰えている証である。

「また薬の量が増えるのかしら」

妻女は憂鬱そうだ。
妻女を前橋日赤に連れて行くのは、今月は25日。今年も、お医者様にはたっぷりお世話になりそうである。