2011
04.21

2011年4月21日 ゼオライト

らかす日誌

という物質をご存じか?
原発事故に伴う放射性物質の飛散で知る人ぞ知ることになったものである。
ゼオライトが脚光を浴びたのは、こいつが放射性物質を吸着する性質を持つからである。

私が知ったのは、群馬大学工学部の教授と雑談していてのことだ。

「福島原発からでちゃったあれだけの汚染水、どうやって処理するんですかね?」

「水は蒸発させてできるだけ体積を減らし、残った水にゼオライトを放り込んで吸着させるしかないでしょう。すでに使い始めているじゃないですか。それを見て、それしかないよなあ、と思っているんです」

「へーっ、ゼオライトって、そんな便利な物があるんですか」

その時は、それだけの会話だった。
今朝になって、ふとひらめいた。
横浜で幼児2人を育てている次女は、放射性物質が怖くて水を買っている。水道水が汚染されているのか、その危険性があるのかを確かめるのが先だと思うが、まあ、子供に障害がでてからでは遅いという親心も理解できる。

「ゼオライトがあったら、安心して水道水が使えるのではないか?」

と思いついたのだ。
ネットで調べてみた。ある、ある。ゼオライトを使った水質浄化システムが五万とある。少し前のLEDライト同様、時流に乗った人気商品のようで、「在庫あり」などと麗々しく書かれている。
なるほど。ゼオライトに希望を見いだしているのは私だけではない。

が、高い。65%オフで13万5240円、などという途方もない価格がついている。
でもゼオライトは元々工業原料のはず。そんなに高いはずはないのでは?
群馬大学工学部に電話をした。

 

「えーっ、そんなにしてるんですか。確かに効果はあると思うけど、高すぎですよねえ」

いや、実は、と次女の話をし、見解をうかがった。

「ねえ、原料のゼオライトだと、安いはずですよね。それでいて、効果は同じ。できれば手に入れたいんだけど、でも、どこで手に入るのかが分からない。入手法、ご存じないですか?」

この先生は、自分の実験には使わないとのこと。

「使うのは無機化学の先生たちかなあ。聞いておきますよ」

それはそれでよろしい。ついては、次なる質問である。

「でも、入手できたとして、使い方なんだけど、ためた水に放り込むんですかね?」

 「いや、それよりも、何かに詰め込んで、そこに水を通す、つまり濾過するという使い方になると思いますよ」

なるほど。それはそうだ。そちらの方が効率的である。だが、ためた水に放り込むにしろ、濾過するにしろ、ゼオライトが放射性物質を吸着するのだ。使えば使うほど、ゼオライトには放射性物質が蓄積することになる。

 「どの程度使ったら新しい物と取り替えるんでしょうね。それに、取り替えたら、古い物は捨てるのかな?」

どの程度使ったら交換するか。それを正確に知るには放射線量を量るガイガーカウンターが必要になるが、それはまあ、別途考えればよろしい。

「そう、使ったゼオライトには放射性物質が蓄積することになるわけです。これ、もちろんのことだけど、 放射線を出します。だから、そのまま捨てるわけにはいかない。私たちの世界ではは実験でよく使うのだけど、使った物を廃棄するには、専門の業者さんに引き取ってもらうのです。家庭で、そんなことができるとは思えない」

なるほど。でも、市販のゼオライト使用浄水器の使用済みカートリッジはどうするのだろう? まあ、1つの家庭で使う場合は、蓄積するといってもたいした量にならないから、そのまま捨てる、ってことなのか。

 「それだけじゃありません。ゼオライトって、確か重金属を含んでるんじゃなかったかな。だから、放射性物質を濾過する目的で使っても、濾過したあとの水には重金属が混入することになる。それ、飲んで大丈夫か? って思うわけですよ。健康にいいはずはない」

なるほど。あちらを立てればこちらが立たず、ということか。
だが、このまま捨て置くには惜しい。

「まあ、鰯の頭も信心から、っていうから、この時代の守り神としてゼオライトの石の塊を自宅に飾っておくのもいいのかも知れませんねえ」

先生は、入手方法が分かったら教えてくれるという。そしたら買ってみるか。

にしてもだ。世の中には無責任な商品が溢れている。金を無駄にしないだけでなく、自分の健康を守るためにも、多少の知識と論理的な思考回路が必要な時代である。

 

今日はギター教室であった。ギターを抱えていそいそと教室に向かったのだが、私の学習がちっとも進んでいないから、授業時間の30分、小さくなっているしかない。

「ここ、ここの早弾きに指がついて行かなくて、なかなか先に進めないのです」

窮状を訴える私に、先生はお答え下された。

「左手の指が丸まってくっついてますよね。それでは動きが遅くなります。それぞれの指が離れて動くように、ストレッチをしましょう」

なるほど。普段は気にもしないが、指とは、まるで恋人同士のようにくっついて動きたがるものである。なかでも、中指と薬指の熱々関係が際立っている。私が中指で、あの娘が薬指であったら幸せいっぱいなのだが、中指も薬指も私のパーツでしかない。この2本の指が熱々関係を続けても、いいことは1つもない。

左手の指をできるだけ開いて指先を机の上に押しつける。その状態で指の第2関節を曲げる。指の付け根から手首にかけて大きなストレスがかかる。

 「こら、お前らのために、俺はOld Loveが上手く弾けないのだ。お前らら蜜月関係を続けすぎて、動きが鈍いからだ。別れろ。バラバラになれ。離れて自由に動け」

そう思いながら、指を押しつけ、関節を曲げる。痛い。

ひょっとしたら、明日はサロンパスが必要になるのか?