2011
06.26

2011年6月26日 横綱

らかす日誌

菅直人氏は、政治の道など志さねばよかった。自分の適性を考えることなく、政治の道に進んでしまったものだから、いつの間にか、似合いもしない総理大臣なんてポストにまで上り詰め、みんなのひんしゅくを買う。

放っておけばだらしなく緩んでしまう表情を、意識的にきつく引き締めた姿を毎日のように某国営放送局のカメラに撮られ(それでもどこか緩んでいるように見えるのは致し方ないが)、

「私の顔を見たくないのなら、再生可能エネルギー法案を通せ」

などと、訳の分からないことをいわざるを得ないはめになる。ご本人はそれなりに高揚していらっしゃるのかも知れないが、周りから見れば醜態である。

そもそも、国のエネルギー政策というものを、短絡的に決めていただいては困る。
無論、安全なエネルギーが望ましいのはいうまでもない。だが、一方で、エネルギーはできるだけ安くなくてはならない。エネルギーの価格が高くなれば、消費に回せるお金が減る。消費支出が減り、経済は減速する。
家庭でもそうである。さらに、企業にとっては死活を制することになりかねない。エネルギーの価格が上がれば、その分だけコストが上昇する。利益が減る。操業すればするほど赤字が膨らむ、ということにもなりかねない。それでなくても、日本の電力は世界の中で高いといわれる。

 「これ以上エネルギーコストが上がったら、国内では操業できない」

という企業だって出かねない。

かつての日本に、大きなエネルギー転換の時代があった。石炭から石油へ。その煽りで、私の故郷、福岡県大牟田市の三井三池炭鉱では労使の対立があり、暴力団が介入してのぶつかり合いがあった。時代は、そのような軋みを経過せずに次にステージに進むことはない。
法案が1つ、国会で成立したからといって、新しい時代の幕が開くわけではない。

ねえ、そもそも太陽光発電って、コストが高いんでしょ? 風力もコスト倒れなるのがめに目に見えているんでしょ? 地熱発電の適地は、守りたくなる自然の中にしかないんでしょ?

技術のブレイクスルー、コストのブレイクスルーがない時代に、政治の力でエネルギー転換を図ろうという政策は、かなりの無理がある。

しかも、だ。この法案が成立しなければ、その是非を問うて解散、総選挙に売って出るとの観測もある。小泉の郵政解散を念頭に置いてのことだという。

血迷っているとしか思えない。

自分の政権の延命のために原発の事故を最大限活用する。原発の怖さが身にしみた国民は、再生エネルギー法案選挙に打って出れば、雪崩を打って菅内閣を支持するに違いない。

菅直人よ、もしそう考えているとしたら、あんたはアホで、その上卑劣漢だ。

郵政改革は、国民にとって見たらどうでもいい話だった。小泉の口車に乗って、郵政改革を実現すれば自分の暮らしもよくなるに違いないと思い込まされただけである。
小泉が賢かったのか、国民がバカだったのか。
いずれにしても、どちらでもいい話だった。芸能人の結婚や離婚と同じレベルである。

が、菅直人がやろうとしていることは全く違う。福島第一原発の事故で国民の間に行き渡った

「原発は怖い」

という共通認識を使って国民を脅し、政権の延命を図ろうというだけだ。

ねえ、あなた。電力会社ではない会社や個人が発電し、余った電力を電力会社が買い取らなければならない、というシステムを作ったら、日本のエネルギー需給はうまく行くと思いますか?

私はとうとう。菅直人の常識、良識だけでなく、思考能力も疑うに至った。
1日も早い退陣を望むものである。

そうそう、菅直人は政治家になるべきではなかったと冒頭に書いた。では、何になればよかったのか。

相撲取り

である。その道に進んでも頂点を極めたに違いない。
どんな逆境に立たされても耐え抜く精神力は相撲取りには欠かせない。土俵を片足でも割れば負けなのだ。バカといわれようと、阿呆と罵られようと、勝つには耐えるしかない。

何より特筆したいのは、3枚腰とも4枚腰とも呼びたくなる粘りである。

普通。退陣を表明したトップは、その時点からレイムダックとなる。相手にする人がいなくなるから権力はなくなり、正式辞任の日を待つだけの哀れな存在となる。
ところが、菅直人の辞書にはレイムダックという言葉はないらしい。テレビで見る限り、最近は笑顔が戻り、ゆとりさえうかがえる。何なんだ、この男?

と思わせるほど粘る。とにかく土俵を割らないためにあらゆる手段を執る。曖昧な言葉で退陣をほのめかし、一難過ぎると

「僕の言葉をどう受け取ったか知らないが、僕はそんなつもりでいったのではない」

と開き直る。目先の危機さえしのげれば、時間さえ稼げれば、打つ手はあるのだ、菅直人の頭の中には。

菅直人が相撲取りになっていたら、横綱になったに違いないと確信する。

だが、いま見えている次の打つ手は、再生可能エネルギー法案、それを武器にした解散・総選挙でしかない。こんなもので選挙に勝てると、本当に思っているのであろうか?

相撲取りになった菅直人は横綱になる。でも、名横綱にはならない。なれない。器が小さすぎる。

てなことを考えなくてすむ日が早く来て欲しい。