2011
08.29

2011年8月29日 野田君

らかす日誌

決まっちゃったよ、野田君に。えーっ!

えーっ?
じゃあ、海江田君がよかったのか?
海江田君? えーっ!

てな、民主党党首選であった。
こんなもんしかいない、いまの政界の人材難を嘆くばかりである。

「だって、野田さんって、増税論者なんでしょ?!」

と妻殿がいった。その程度のことは知っているらしい。テレビのワイドショーででもやっていたか。
なにしろ、我が家は収入の大半を年金に頼る。夜を日に次いで働いたところで、昇進することも給料が上がることもない。増税は、直ちに暮らしに響く。

「心配するな。どうせ増税なんて決められないうちに代わるから」

私はそう答えた。
野田君、ねえ……と思いながらである。

民主党は、増税なんかしなくても、子ども手当は支給できるし、高速道路の無料化だってできる、といって政権を奪い取った政党である。なのに、この人、菅直人と並んで、すっかり財務官僚に魂を抜かれた、といわれている御仁だ。

「いまの状況は、お子さんやお孫さん名義のクレジットカードを親や祖父母が勝手に使っている状況に似ています」

と野田君は、文藝春秋9月号に書いた。こんな短い文章に「状況」という単語が2回も出てくるのは、彼の言語能力の拙さのせいである。

ま、それはこの際どうでもよろしい。

確かに、国家財政は危機なのであろう。だが、この危機を招いたのは、旧大蔵省、現財務相の官僚たちの無策のせいである。自民党にせっつかれるままに放漫財政を繰り返し、財政危機を招いた。危機であると彼らが感じ始めたのは、さていつ頃のことだろう。
ま、そのうち何とかなるさ。だが何ともならず、自分たちの先輩が残した負の遺産の膨大さに唖然となった現役たちが、増税しかないと騒ぎ回る。それに、幾分かのヒロイズム——目先、国民に嫌われても、政治家たるもの、国家100年の体系に乗っ取って決断しなければならない——に乗っかったのが、菅直人であり、財務相である野田君である。
その心意気をよしとするか。アホ! と罵るか。

だけど、野田君。あなたは借金を返すためにはどの程度の増税が必要なのかも示していない。いまの財政規模を維持する限り、消費税を10%に引き上げた程度ではとうてい間に合わないというのは、広く知られていることである。どの程度の規模の増税をするつもりなのかね。
金が足りなきゃ支出を減らす。万古不易の法則だと思うのだが、それもできない。

緊縮財政には多方面から反発が来る、というの? 増税だって多方面から反発が来るぞ!

それに、国民に負担を強いるためには、貴方たちが率先して身を削らねばならない。何かというと赤坂や築地の料亭で会合を繰り返し、料亭は使わないまでも、近くの高級料理店でシンパとの飲み会を続け、ワインで頬を染める夜を繰り返すあなた方に、国民に負担増を押しつける正当性はあるのか?
まず、あなた方が新橋の焼き鳥屋で焼酎を飲むしかないまで身を削ってくれ。国会にはユニクロのポロシャツ姿で出てくれ。政治を志したころのスリムさに体型を戻して話をしてくれ。

自らはたらふく飲み食いしながら、他に負担を求める人の話は誰も聞かないのである。

ま、長くて1年の政権である。増税など、とてもできまいと高をくくっている。

 

が、と思う。
野田君、今日のあなたの発言で1つだけ、

「おっ!」

と思ったのがあった。

「ノーサイドにしましょう」

小沢、反小沢で角突き合わせてきた民主党に、融和を呼びかけたものだろう。この表現はよい。
だから、思った。ひょっとしたら、この人、以外にキャパが大きいのではないか? 財政再建至上主義の財務省から離れ、首相の立場から幅広世界を見ることができるようになる資質があるのではないか? 野田君は変身できるのではないか? 短期政権ではなく、民主党中興の祖として安定政権を作ってくれるのではないか?

ん? 私も権力を手中にした男に期待をしてしまう人間に成り下がってしまったか?