2011
11.30

2011年11月30日 大阪

らかす日誌

ちとタイミングをずらしてしまったかも知れないが、やはり書いておきたい。大阪を舞台にした府知事選、市長選である。橋下徹率いる大阪維新の会が完勝した、あの選挙だ。

まあ、結果は事前の世論調査で分かっていた。だから、驚きは少ない。

「大阪って、横山ノックを知事にした土地柄だもんな」

という程度の思いしかない。

よく言えば、大胆な土地柄である。テレビの画面に登場して

「パンパカパーン」

のフレーズで笑いを取っていたタコタレントを、知事にする。歴史を見れば、横山ノックが知事になるまでは、大阪府知事はおおむね、元官僚、元大学教授が選ばれていた。

「あいつら、利口そうな顔してるけど、何もできんやないか」

そんな、あきれ果てた思いがあったのかも知れない。だから、大胆に変えよう。ノックやったら、おもろいことやってくれるで。
よく言えば、革新性実験性に溢れた土地柄ともいえる。

が、乗りがよかったそのノック、何と、選挙運動員の女子大生のあそこを触って有罪となり、政治の舞台から消えた。
まあ、そりゃあ、可愛い女子大生がいつもそばにいれば、男たるもの、妄想を持つのは不思議ではない。だが、世の男たちは、妄想の自由は謳歌しながらも、妄想に苦しむ。だって、妄想に駆られてやりたいことをやってしまったら、お先真っ暗になる危険があるからである。

ノックは、それを軽々と乗り越え、女子大生の下着に手を突っ込んだ。羨ましくないといえば嘘である。だが、そんなもん、

「やっていいか?」

って、了解をいただいてからやるもんだろ? 相手がうれしがってくれなかったら、楽しくないだろ?
という程度の理性は持ち続けたいものである。

橋下が、ノックと同じだとは言わない。だが、大阪の有権者は、多分、同じ乗りで橋下に票を投じた。

「あの兄ちゃん、何かやってくれるで」

ドジョウ首相を始めとした既成の政治家の体たらくぶりを見ていれば、その心情も理解できる。だが、やっぱり橋下はノックと同じ範疇にいるのではないか? 要は、テレビのディスプレイを通じてなじんだ候補に、大阪の有権者は、いまの政治へのノーを託したのではないか?

ま、子だくさんの橋下が、女子大生のパンツに手を突っ込むとは考えにくい。だが、それでも橋下でよかったのか?

アメリカでは、高校の授業にディベートがある、という話を聞いたことがある。
男と女は平等か、イラク侵略は是か非か、など、何でもいいからテーマを設定する。その上で、クラスを2つに分ける。一方は賛成派、もう一方は反対派である。2つに分けるとき、生徒の考えはまったく聞かない。機械的に振り分けるだけである。男女は平等であるべきだ、考える生徒が、男女差はあって然るべき、というグループに振り分けられたり、イラクは徹底的たたくべきだと考える好戦派が、侵略すべきでないというグループに入れられたりする。その上で、相手を論理的に叩きつぶさねばならない。
それがディベートの授業なのだそうだ。

何でもいい。自分で信じていようといまいと、とにかく、相手を言い負かす。その能力を磨くのがディベートの授業なのだという。

私は、アメリカのディベート授業に参加したことはない。参加した経験のある知り合いもいない。だから本当にそんな授業が行われているのかどうか、直接には知らない。

それをお断りした上で書く。
橋下のやりかたは、まるでアメリカのディベートである。

彼は、自分の主張していることがまっとうなのかどうかを、あまり気にしていないのではないか。主張がまっとうであることより、主張を認めさせるが大事なのではないか。

焦点になった大阪都構想。まあ、古くからある考え方である。それが今以て実現していないということは、恐らく、メリットもデメリットもあるはずだ。
だが、橋下にかかると、地盤沈下が続く大阪を救う画期的な政策となる。

「何か、東京に負けとるんちゃうか?」

という庶民感情を、橋下は大阪都構想のメリットと思われるものだけを現状批判を絡めて語り、何となくいいんちゃう? という票を集めた。
が、有権者は大阪都構想を理解して、賛同して票を投じたのではない。だって、まだ具体的なプランなんかないんだから、評価しようがないではないか。
橋下は、ディベートの名手である。

これ、じわりと怖い。
ヒトラー率いるナチスが政権を握ったのは、暴力によったわけではない。単純化すれば、第1次世界大戦の賠償金負担に加えて、1929年、ウォール街を発信地とする世界恐慌で青息吐息だったドイツ国民に、我々の苦しみの原因は旧来の政治家や政党の失敗であり、ユダヤ人の陰謀であると訴えて国民的な支持を得て、選挙で第1党になったのである。
何か、橋下のやり方と似てない?

さて、今回の選挙で、大阪は府も市も、橋下イズムが取り仕切ることになった。この流れに民主党、自民党などの既成政党がオタオタしている。メディアもどう扱っていいかわからない痴呆状態に陥っている気がする。
ドジョウが頂点に立ついまの政治がどうしようもないからといって、狼に権力を委ねていいのか?

と心配しても、私にできることは何もない。
平家物語にいう。

驕れる者久しからず

橋下一派の驕れる期間ができるだけ短いことを、ひたすら願う。