2012
05.06

2012年5月6日 連休の終わり

らかす日誌

ゴールデン・ウィークも今日で終わりだ。
皆様、どのような連休を過ごされましたか?

いや、当県内では高速道路で夜行バスが防音壁に突き刺さって死者が出た。北アルプスで無謀な高年登山者が凍死した。今日は今日で茨城県などを竜巻が襲った。全国的にはなかなか騒然とした日々であった。

が、私のゴールデン・ウィークは平穏であった。

瑛汰の一家がやってきたのは1日の夜中であった。瑛汰も璃子も熟睡したままのご到着で、待ち受けた私は瑛汰を車から抱えだして私の布団に寝かせ、瑛汰のパパとしばらく話をして就寝した。

「ボス、今日は映画に行くんだよね」

目覚めるなり、瑛汰がそういったのは2日である。確かに、電話でそう約束していた。瑛汰のリクエストは

仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦

であった。

「だって、戦いが格好いいんだよー。おれ(今回から、瑛汰は自分のことをそういうようになった。幼稚園の友人の影響だろう)、絶対好きなんだ」

そういう瑛汰に、

「えー、それはつまらないでしょう。タイタンの逆襲の方が面白いぜ。スピルバーグだし」

と私は混ぜっ返す。

「嫌だ。絶対仮面ライダーなんだから」

ま、この手の言い合いで、私が瑛汰に勝てるはずもない。

「で、ボス、終わったら本買って」

こうして、午前9時半頃出発、伊勢崎のスマークで映画鑑賞の時間を持った。終わると、書店。チビ丸子、カーズ、トイ・ストーリー……。
さて、何冊買ったのだっけ? 昼食にラーメンを食して帰宅。

「おれ、耳が痛いんだ」

と言いだした瑛汰を、午後は耳鼻咽喉科に連れて行く。中耳炎の初期。まったく、うちに来て医者に行かなかったことはあったっけ? 瑛汰。
夜は、添い寝をしながら「ピータ・パン」を読んでやる。3分の1ほど読んだところで、瑛汰、寝につく。

 

3日は朝から雨だった。が、この日は行くところがあった。
まず、有鄰館(ゆうりんかん)祭。そこを一巡りしたら、次は糸屋通りのお祭り。傘をさしての祭見物だが、この地に居着いて4年目ともなると、義理人情も絡んで足を運ばざるを得ない。瑛汰、糸屋通りのお祭りで1等を引き当てる。璃子は2等。ラッキー!
ま、商品はたいしたものではないが……。

午後は新里町のガラス工房を訪れた。ここで瑛汰に、「マイグラス」を作らせようというのである。
我が家に来て2日目の瑛汰はやや疲れ気味だったか、車の中で寝込んだ。着いて起こそうとすると、

「あん! おれ、眠いんだよ! 何で起こすんだよ!!」

が、工房に入ると目の色が変わった。

「ねえ、どの形がいい?」

工房の主が見本を示しながら、これから作るグラスの形を決めさせる。瑛汰は、上の方にくびれがあるものを選んだ。えっ、瑛汰、そんな難しい形を作れるのか?

「じゃあ、色はどうしようか?」

主が聞く、瑛汰は

「緑」

と答えた。

「そう、緑がいいのか。緑にも、ほら、この3種類あるんだけど、どの緑がいい?」

色のついたガラスの小さな玉々が紙の上に乗っている。濃い緑、緑、薄い緑、であった。

「うーん、全部」

決めかねたのだろう。それが瑛汰の結論だった。

それからは、あれよあれよという間にガラス工芸が進んだ。金属製のパイプの先にドロドロに溶けたガラスがくっつけられ、パイプをグルグル回しながら瑛汰が息を吹き込む。回さないと、ドロドロになったガラスが重力に引かれて地面にタレ落ちようとする。それを防ぎながら、息を吹き込んで風船のように膨らませるのである。
冷えてガラスが硬くなると。火に突っ込む。柔らかくなると、再びパイプを回転させながら息を吹き込む。徐々に膨らんでくる。それに、先ほどの緑色のガラスの玉々をくっつけて再び火の中へ。そしてまた、回転させながら吹く。
瑛汰の目が生き生きしてきた。

これから先はクドクドしくなるので、過程は省こう。

「ほら、できたよ」

主は、5歳の子供を見事に指導しながら、美しいグラスを作り上げた。

「温度が下がると、緑色がもっと美しくなります」

瑛汰が作ったグラスは、500度ほどの温度を保つ熱蔵庫(そんな日本語、あったっけ?)に入れられた。

「徐々に冷やさないと、割れちゃうんですよ」

半日ほどかけて冷やす。受け取りは翌日である。

出来上がったグラスを預けて帰途についた。

「面白かった!」

と瑛汰。やはり、何かを作り出すのは楽しいらしい。

「おれさあ、また作るんだ。家族みんなの分を作るんだ」

みんなって?

「ママとパパと璃子と、ボスとバアバと、啓樹と嵩悟と真穂ちゃん(私の長女。啓樹、嵩悟の母。瑛汰にとっては伯母)とやっさん(啓樹と嵩悟の父。瑛汰にとっては伯父)。ああそうか、友だちにも作りたいなあ」

ちなみに、このグラス、1個3000円である。いま挙がっているだけでも9個、2万7000円。負担するのは、多分私。破綻する。

「啓樹、璃子ちゃんはまだ割るかも知れないからね。それに、啓樹は自分で作りたいんじゃないか?」

 「そうだね。じゃあ。パパとママとボスとバアバと……」

とにかく、楽しかったらしい。

4日は朝から伊勢崎までイチゴ狩りに出かけた。

「ねえ、何個食べてもいいの?」

という瑛汰に

「ああ。お腹いっぱいになるまで食べていいんだよ」

と答え、

「じゃあ、おれ、100個食べる!」

という瑛汰と一緒に、前日からの雨でぬかるみに近い状態になったビニールハウスに入った。瑛汰が

「もういいや」

というまでに、さて、何分かかっただろうか? 何個食べただろうか? イチゴ狩り農園の経営、なかなかに利幅は大きいと見たが、いかがだろう?

それから、瑛汰自作のグラスを受け取りに回って帰宅。途中、相生町のヤオコーで買い物。

「ボス、瑛汰、また欲しい本が見つかっちゃった」

ということで、確か6冊お買い上げ。

 

ま、それはどうでもよろしい。
実は今回、瑛汰は大きな課題を抱えていた。

「瑛汰、パパとママと璃子が帰っても、瑛汰だけ泊まっていくか?」

私がそう問いかけたのは2日だったと思う。驚いたことに、即座に答えが戻ってきた。

「うん、おれ、ボスのところに泊まっていく!」

思えば、

「瑛汰、我慢ができなくなったの」

という言葉を残して瑛汰が桐生を去ったのは昨年1月1日であった。その時の経緯はその日の日誌を読んでいただくとして、あれから1年半。瑛汰は成長しているはずである。現に、横浜の自宅では、もう一人で寝ていると聞く。であれば、我が家に泊まっていくことも可能なはずだ。
親元を離れて寝る。それは、子供が自立する一里塚である。そう思って声をかけたのだが、瑛汰、乗りがいい。ま、本当に泊まっていけるかどうか、それで瑛汰の成長度合いを見ることができる。

次女たちは4日の夕食を我が家で済ませて横浜に戻る予定だった。4日になっても、瑛汰は

「おれ、泊まっていくから」

と明るい声で宣言し続けた。頼もしくなったものである。
その様子が変わったのは、4日の夕食時であった。

「あのさあ、おれさあ、うーんと、泊まっていこうかなあ、一緒に帰ろうかなあ……」

迷い始めた。
パパは

「それは瑛汰が決めることでしょ」

と突き放す。ママは

「いいから。一緒に帰ろうよ」

と誘う。我が妻女殿は

「瑛汰、今日は帰って、夏休みに泊まりに来ればいいじゃない」

と妥協案を提示する。私は

「ボスは泊まっていって欲しいけど、瑛汰が帰りたいんだったら帰ってもいいぞ」

と瑛汰のあらゆる決断を受け入れる用意があることを伝える。瑛汰の迷いは深まった。

「うーん、泊まろうかなあ、帰ろうかなあ……」

さて、どれくらいに時間がたっただろう。瑛汰が決断した。

「おれ、泊まる」

 

パパとママと璃子が車で去った。瑛汰は私に抱かれて見送った。もう、目はウルウルである。

「バイバイ、バイバイ」

といいながら、しゃくり上げ始めた。が、とうとう一緒に帰るとはいわなかった。車が見えなくなってからも、電話で呼び戻そうとはしなかった。

「ボス、DVD見ていい?」

いま瑛汰は一所懸命耐えている。見ちゃいけないとはいえない。一緒に

ブラザー・ベア2

を見た。
瑛汰は、私の胸に抱かれながらアニメを見つつ、

「ママたち、どこまで行ったかなあ」

と何度も繰り返し、嗚咽した。ブラザー・ベア2のストーリーがどこまで理解できたのだろう?
何度も涙を拭いてやった。アニメを見終わって布団に入り、「ピーター・パン」の残りを読んでいるときも、いまにも泣き出しそうだった。
10時前、ママから電話が来た。もうすぐ家に着くという。受話器を通してママと話した瑛汰は、何だかすっきりした様子で、間もなく眠りに落ちた。
瑛汰は、1度も

「一緒に帰りたかった」

とはいわなかった。
かくして瑛汰は、立派に試練を乗り越え、お兄ちゃんになった。

翌5日、朝食を済ませてすぐ、瑛汰を車に乗せて横浜に向かった。予定の行動である。

「ねえ、ボス、車で本を読んでいい?」

車が動き出すとすぐに瑛汰が言った。車で本を読む? そんなに本が好きになった?
それはいいことである。だが、目を悪くしてもらっては困る。路面が荒れているところでは車が揺れる。そこで活字を追うのは目によろしくない。

「高速道路に乗ったら読んでいい。ただし、ボスが休憩しろといったら本を読むのをやめるんだぞ」

 「わかった」

ほぼ30分に1度、10分ほどの休憩を取らせた。

考えてみれば、私もタクシーやハイヤーの中で本を読む。同じことを瑛汰がする。が、瑛汰の体はまだ成長しきってはいない。いま、特定の臓器を使いすぎると悪影響が出るかも知れない。それが休憩を取らせた理由である。

間もなく横浜に着くころ、

「ボス、おれ、全部読んじゃった。もう、今日は本は読みたくない。読み過ぎちゃったよ」

読書は知識と情操をもたらす。
我が家に宿泊する決断といい、読書欲といい、瑛汰は確実に成長している。

いや、成長しているのは瑛汰だけではない。
連休中、四日市の啓樹から長い手紙が来た。連休を利用して家族でハワイに旅した。その報告である。それを見た我が妻殿、次女夫婦は口々に言った。

「字は綺麗だし、文章もしっかりしてる。瑛汰、啓樹はこんなに綺麗な字が書けるよ。瑛汰も綺麗に書こうと思えば書けるんだから、丁寧に書きなさい」

はは、今日は少し、ボス馬鹿が過ぎたかも知れない。

 

バタバタして書き忘れたが、小沢さん、無罪である。
検察とマスメディアが力を合わせて犯罪をでっち上げようとしたのだが、裁判所は罪はないと判断した。
なのに、メディアは、限りなく黒に近い白、など、無謀な言いがかりをつけた。
法治主義、ということが、こいつらには分かっていないのか?

すべての原発が止まった。ほぼすべての新聞が1面トップで伝えた。
それはいい。いけないのは、ここからだ。

各地でデモがあったらしい。原発ゼロを続けようというデモである。メディアはこぞってそれを伝えた。伝えすぎて、原発をなくすことが国民全部の望みであるような紙面、ニュースを作った。
これは、一方的すぎる報道である。
故吉本隆明さんのように、原発をなくすなどというのは

「人類が積み上げてきた科学の成果を 一度の事故で放棄していいのか」

と考える人もいる。それが世の中である。
私は、原発は嫌だと思いながらも、それに代わる手段が見つからない以上、容認せざるを得ないのではないかと悩んでいる。

メディアは悩まない。つい先頃まで、地球温暖化を防ぐために二酸化炭素の排出量を減らさねばならないと口を極めて主張していたことは忘れてしまったらしい。
原発がない分の電力をまかなっているのは石油と石炭、ガスによる発電なのである。二酸化炭素の排出量は確実に増える。

さて、連休も終わった。
明日は、仲のよい後輩の定年祝いをする。市内のカフェで宴会だ。
私はギターを持参する。肩の痛みのためにもう1週間ほどギターには触っていないが、それでも明日は現在の腕前を披露する。
彼は「らかす」の愛読者である。私が書き連ねていることが「事実」であることを知ってもらうため、明日はギターを弾きながら歌い、大いにとちる予定である。

あわせて、プレゼントを用意した。
これまで仲間内での祝宴でも、プレゼントは用意されたと聞いた。モノもあり、商品券もあり、というところらしい。

私は、プレゼントに現金や商品券を渡すのははしたない、下品だと感じ取る人間である。人様に差し上げるには、それなりの思い、それを伝えるための苦労やストーリーがなくてはいけない。
と、作業したものを差し上げる予定である。

もし、明日の宴会までにこれを読んだら、少しだけでいいけど、期待してね、内田さん。