2012
07.06

2012年7月6日 暇に任せて

らかす日誌

桐生市の中央図書館に3日連続して通った。
中央図書館は、「新・平家物語」全16巻を借り出して読んだ仲である。従って、隅々まで熟知している、とまでは豪語しないが、おおむねの様子は分かった。分かるなかで、一つだけ記憶に残ったものがある。

この図書館、手塚治虫の全集があるのだ。なんでも、市内の奇特な方が寄贈されたらしい。ありがたいことだ。

それが気になったのは、NHKで「陽だまりの樹」を、時折目をウルウルさせながら見て以来のことだ。

「そうか、原作が中央図書館にある。読もう」

たまたま今週は、仕事に追われることがなかった。仕事に追われないということは、時間がたっぷりあるということである。使わない手はない。

水曜日、午前中に行って2巻まで読んだ。
木曜日、午後行って、3巻から7巻まで読んだ。
今日は午前10時過ぎに図書館に行き、残りの8巻から11巻をひっつかみ、日当たりの良いロビーの、出来るだけ陽があたらない場所にある椅子に座って読み終えた。

手塚治虫とは、やっぱり天才である。事実とフィクションを織り交ぜながら、幕末という時代の荒波の中で生きた不器用な武士と、その武士と心の友となる女好きの医者の生き様をドラマチックに描き出した。
いや、不器用な武士と、女好きの医者の生き様を描くことで、幕末という時代を見事に切り取った。

この武士、伊武谷万二郎は、恐らく手塚治虫が作り出した人物である。手塚が万二郎に託したのは、武士という身分にあって原則を曲げずに幕末という時代を生きた男の理想像である。

女好きの医者、手塚良庵は、医者の息子に生まれ、大阪の適塾で学ぶ知的エリートだ。曲がったことは大嫌いだが、女と名がつくものには目がない。芸者をあげて遊ぶ、1週間も10日も居続けてやり狂う、なんぞはあたりまえの男だ。
妻とのなれそめは、適塾から江戸に戻る途中、漫画では船の仲で、ドラマでは確か宿で、たまたま一緒になった旅の家族の娘を口説き、一夜情を交わしたことである。江戸に戻ると、その家族がなぜか自宅に来る。

「1回だけ、合議の上でやっちゃっただけじゃない。味もあんまりよくなかったし、その女が、なんでうちまで押しかける?!」

と慌てちゃうのだが、もう遅い。実はその家族は遠い親戚で、親同士が

「ちょうどいい組み合わせだ」

と、子供同士を見合いさせようという話になり、そのために江戸に上ってきたのだった。何のことはない。親同士がしくんだからくりに気がつきもせず、

「一夜の楽しみ」

にふけっちゃったものだから、今さら引くに引けず、初めてあった男に体を開く女と、泣く泣く夫婦になったのである。
この手塚良庵が、手塚治虫の3代前の先祖、というのだから笑える。
笑いながら思う。

ひょっとして、俺、女好きの資質だけを受け継いだ手塚治虫の親戚か?

という「陽だまりの樹」全11巻を、今日の昼過ぎ読み終えた。11巻の最後のページの最後のコマに、手塚良庵が手塚治虫の先祖であると書いてあった。知ってはいたものの、そのコマを見ながら、なぜか、目頭が熱くなった。
手塚良庵、単なる女好きではないのである。

手塚さん、自分で作品に仕上げたくなるなんて、あんた、いい先祖を持ってるね!

 

もう5日もギターに触っていない。先週の土日に、我慢できなくなってD-41を弾き、肩の痛みが激しくなったため大事をとっている。まだ、私の肩はD-41の大きさに耐えられるほどには治癒していない。
なのに、00028ECがなかなか戻ってこない。修理に出した販売店に

「まだか!」

と問い合わせても、

「何か、接着剤も完全に乾かさないといけないとかいって、まだ戻ってきてないんですよね」

とおっしゃる。

「あのさ、接着剤を乾かすって、木工用のボンドだって2時間もすれば、次の工作が出来るほどに乾くんだよね。1週間も10日もかけないと乾かない接着剤って、いったい何なのよ」

といってみても、こと修理に関しては仲介業者でしかない彼に答える能力があるわけはない。

「あんまり遅れると、直接俺がクレーム入れるから、連絡先を教えて」

まあ、ここまで脅せば押っつけ戻ってくるだろう。

1日弾かないと、3日分ぐらい下手になっているのではないかと心配な、最近の私である。