2014
03.07

2014年3月7日 CDプレーヤー

らかす日誌

事務室の片隅に、箱に入ったままのCDプレーヤーがある。
amazonから届いたのが、確か今週の月曜日。届いたまま放り出されている。明日は設置する予定だ。

これを買うには、長い逡巡があった。
我が家には居間と事務室にオーディオセットがある。居間のセットに組み込んだCDプレーヤーが壊れたのは、多分1年以上前である。
トレーにCDをセットする。ボタンを押してトレーを引っ込め、プレイボタンを押す。普通は演奏が始まる。壊れたCDプレーヤーの場合、トレーが出て来る……。

完全に壊れたのなら、直ちに買い換えたろう。が、このCDプレーヤー、なかなか根性者なのだ。満身創痍であるのに違いないのに、時々正常に戻る。プレイボタンを押されて順調に演奏を始めることが、そう、7、8回に1回はあるのだ。そんなときは、聞き終えたCDを取り出そうと取り出しボタンを押しても頑としてトレーを出さない事があるのだが……。

我が家で音楽を聴くのは、主に居間である。
それを思って、事務室のCDプレーヤーと居間の壊れたCDプレーヤーを入れ替えたのは、昨秋の事である。
事務室に移した満身創痍のCDプレーヤーの蓋を開けた。できることなら修理できないかと考えてのことだ。その状態でトレー開閉ボタンを押す。すると、なんということもなくトレーが出て来る。もう一度押すと、トレーが引っ込む。何度やっても、異常は見られない。

「何だ、ゴミでもひっかかってたのか? 壊れてないジャン」

と蓋をネジ止めし、開閉ボタンを押すと、今度は出てこない。まったく不思議な故障である。

それでも、時折は正常に動くから、事務室のオーディオセットに繋いだ。そしてCDをセットすると、今回は正常に動く。よしよし、と音楽を聴く。聴き終えてCDを取り出そうとすると、今度はウンともスンとも動かない。やむなく、棚からCDプレーヤーを取り出し、ネジをはずして蓋を取り、CDを取り出しながらつぶやいた。

「やっぱりあかんわ、これ。かなりの年代物だから、修理に出すほどでもない。新しいヤツを買った方が早いや」

だから、そのままだったら、すでに昨年末には新しいCDプレーヤーを買ったはずである。
ところが、思わぬ事が起きた。
ネットワークプレーヤーが我が家にやって来ちゃったのだ。

無論、やって来たネットワークプレーヤーは居間にセットした。そして、何度もご報告するように、実に満足して音楽を聴いている。音楽を聴く時間がそれまでよりかなり増えた。
であれば、居間にあったCDプレーヤーを事務室に移せば良かろう。あなたは、きっとそうお考えになるはずだ。
が、である。ネットワークプレーヤーで音楽を聴くには、パソコンを介してNASに音楽を読み込まねばならない。新しくCDを買っても、すぐには聴けないのである。でも、音質には目をつぶっても、すぐに聴きたいCDってあるではないか。
つまり、居間にCDプレーヤーはどうしても必要なのである。

我が妻女殿は、クリスキットとCDプレーヤーの組み合わせなら、自分で音楽を再生することがおできになる。しかしながら、新たにお目見えしたネットワークプレーヤーには触ろうともされない。新しいメカは、妻女殿の知的能力の範囲内にはないのである。
という別の事情は、ここでは触れないことにする。

加えて、事務室に音楽再生環境がどうしても必要な理由もある。ギター練習のためなのだ。
最近、ギターの指導書を買うと、必ずと言っていいほどCDがついている。それを聞きながら練習をせよということだろう。それは、そちらの方が効率がいいはずだ。本だけで練習をするのは、何となく損をしているような気になる。それに、時にはEric Claptonとギターの腕を競いたいではないか?
つまり、事務室にはどうしてもオーディオセットが必要なのだ。

聴けば、音質はネットワークプレーヤーが遥かに上である。直径16cmの小さなスピーカーで聴いても、音質の良さに変わりはないはずだ。であれば、この際、ネットワークプレーヤーをもう一台買うか?

待て。いま持つネットワークプレーヤーは、中古で3万円で買った。しかし、そうそう手頃な中古があるはずもない。となると新品を買わねばなるまいが、それは4万円前後する。
まあ、その程度なら出せない範囲ではない。しかし、そうなると我が家のネットワークプレーヤーは、2台ともパイオニアになる。それはいかがなものか?
何しろ、iPadにインストールした操作アプリのできが余りにもひどい。ネットで検索すれば、ユーザーの不満の声が満ちあふれているのに、パイオニアは見向きもしない。
それに、やたらとメリハリをきかせるパイオニアの音づくりには、少しばかり違和感もある。もちろん、CDプレーヤーの音質に比べれば数段上なのだが、しかし、ネットワークプレーヤーの中でこれが最高と言えるか?
CDプレーヤーではSonyが最高だった。それも、安価な製品の方がよかった。つまり、CDプレーヤーでも音の差があったのである。ネットワークプレーヤーにだって音質の差はあるはずだ。
であれば、2台目は違ったメーカーのネットワークプレーヤーにすべきである。関心があるのはSony製である。でもこれ、実売価格で16万円もする。買えるか?

てなことで、1か月以上もグズグズと、あっちに行ったりこっちに行ったりの思案を巡らせていたのだ。

で、先週、やっと決断した。

「現時点で16万円は出せない」

とにかく、Sonyのネットワークプレーヤーは一度も聴いたことがない。先日、東京のSさんがやって来たとき、Sonyのウォークマン型ネットワークプレーヤーを持参してくれた。7万円ほどする高額品である。で、もちろんクリスキットに繋いで聴いてみた。
うん、これがいまいち感心しない音だったのだよなあ。いってみれば、CDとの差がほとんど感じ取れない。この程度なら、CDで十分、という音でしかなかったのだ。

Sonyはウォークマン型のCDプレーヤーも出していた。よく壊れる製品で、私も何台か買った記憶がある。ある時、クリスキットに繋いで音を出してみた。ひどくザラザラした音だった。イヤホンで聴けばそれなりに聞こえるのに、アンプで増幅すると、アラばかり目立つのである。

つまり、据え置き型とウォークマン型では音質に歴然とした差があったのがCD時代であった。それはネットワークオーディオの時代になっても同じなのではないか? ウォークマン型のネットワークプレーヤーに感心しなくても、据え置き型なら唸って聞き惚れるのではないか?

とも考えてみたが、とにかく聴いたことがないのだ。16万円は、やっぱり出せない。

というわけで、先週発注したのである。
買ったのは、やっぱりSonyのSCD-XE800。故桝谷さんが、唯一無二と推奨されたSonyのCDプレーヤーには、盲目的なブランド信仰を持つ私なのだ。そして、買ったのは現行製品で最も安いもの。これも故桝谷さんの教えを律儀に守る故である。

しかし、桝谷さん。ネットワークプレーヤーを聴いたら何といったかなあ……。


昨日、宝くじが当たっていたことが判明した。昨年末の年末ジャンボである。

そう、当選番号の発表はもう2か月以上前のことである。当たっているかどうか見て見なきゃ、と思いつつ、でも、当たってないよな、という諦めが先に立ち、調べもせずに鞄に突っ込んでいた。

昨日の朝刊で、グリーンジャンボなる宝くじが売り出されており、昨日がその最終日であることを知った。宝くじとは、買っても、まず当たらないものである。しかし、買わねば絶対に当たらないものでもある。「まず」をとるか、「絶対に」に屈するか。

「ま、ほとんど期待しないふりをしながら買っておくか」

と当たる率が異常に高いといわれる桐生の小川タバコに足を運んだ。せっかく行くのなら、年末ジャンボ、調べてもらうにこしたことはない。何しろ彼らは専門家で、くじが当たっているかどうかを自動的に調べる機械をお持ちなのである。

「グリーンジャンボ、連番で10枚ね。ついでに、これ年末のヤツだけど、調べてくれる?」

こうして窓口に差し出した10枚は直ちに機械にかけられ、

「あれ、当たってますよ」

えっ、当たってる? ひょっとして、これで俺も億万長者? だったら家を建て替えて、最近、ミッションの調子がイマイチの車も新しくして、ネットワークプレーヤーも……。

「3000円」

…………。

「0がいっぱい足りないんだけど」。

「はい、これ3000円と300円ですね」

そうだった、宝くじは、必ず10枚に1枚は300円が当たる。

「それにこれがグリーンジャンボ10枚です。あれ、これはいい番号ですよ。当たりますように」

うん、俺もそう願う。とにかく、専門家の指摘なのだ。これを信じずして、何を信じる?

嬉しさも中くらいなりおらが春