2014
03.26

2014年3月26日 持つべきもの

らかす日誌

米国の友人からメールが来た。この日誌を読んで、アメリカの自宅にネットワークオーディオの導入を考えている。いろいろ教えてくれ。
すぐさま返信を書いた。

「ネットワークオーディオ、確かにいいものですが、日誌ににも書いたが如くまだ発展途上にある製品です。我が家では、コントロールアプリが何とも使いにくく、加えて、音が途切れる症状に困っています。NASに蓄積した音楽データをプレーヤーでアナログに戻すのですから、これはプレーヤーの情報処理能力の問題であろう、と思うのですが、メーカーであるパイオニアは『そのような症状は記録がありません』と逃げの一手。NASはBUFFALOの製品ですが、この会社、問い合わせ窓口の人数が少ないらしく、いつ電話しても30分以上待たされて電話のバッテリーがあがりそうなるので、いまだに問い合わせをしていません。ネットワークオーディオと付き合うには根気が必要なことを認識した上で取り組んでください」

ネットワークオーディオの先輩からのアドバイスのつもりだった。ところが、である。この友人、私より遥かにネットワークに詳しいことを忘れていた。私はネットワークに関しては全く分からないのである。

その彼から返事が来た。
それによると、問題は無線LANの子機にあるらしい。子機の情報転送能力が低いため、NASからプレーヤーに送り出さねばならない情報量が必要量を下回り、それによって音楽が途切れるのではないか、と彼は見立ててた。
では、どうすればいいのか。

子機に転送速度の速いスイッチングハブを繋ぐのだそうだ。そして、プレーヤーとNASをこのスイッチングハブに接続する。そうすれば、プレーヤーとNASの間では高速で情報がやりとりされるから、音の途切れがなくなるはずだ、というのである。
なるほど。ネットワークが全く分からない私にも理解できる説明だ。ということで、直ちにスイッチングハブなるものをamazonに注文した。2800円。これで症状がなくなれば安い投資である。

持つべきものは友

ではあるが、彼、ネットワークオーディオの導入に関して、私に指導を仰ぐ必要があったのか?
教えるはずが教えてもらう。
うん、教育とはこのような相互作用のことをいうんだよな!

いずれにしろ、うまく行けば、残るはパイオニアの操作アプリの使いにくさと、クラッシュしやすさである。おい、パイオニア、何とかしろ!


久しぶりに、みどり市にある我が社の販売代理店を尋ねた。
店に入ると、女の子が電話に受け答えしている。

「社長はいる?」

と聞きたいのだが、彼女は顧客対応に忙殺されており、声のかけようがない。4、5分待った。それでも電話は終わらない。
仕方なく、他の部署の連中に聞いた。

「社長いる?」

さあ、という返事である。

「じゃあ、奥さんは?」

社長宅は事務所の隣なのだ。私が尋ねると、いつも奥さんがコーヒーを入れ、美味しい果物を出してくれていた。

反応がない。

「隣にいないの?」

社長夫婦が住む家を指さした。

ポカン、賭した表情が返ってきた。
こいつら、春の陽気で頭が緩くなったか? 今日は日差しがないから、それほど暖かくないぞ!

そのまま帰ろうかと思ったが、ここまで来て素通りはないだろう。社長宅のドアホンを鳴らした。

「こんちは」

カメラ付きのドアホンだった。

「えっ」

と言う声が聞こえ、どうやら私を認識した様子である。間もなくドアが開いた。

「なーんだ、いるんじゃない。しばらくですねえ」

そう呼びかけると、思いがけない返事が返ってきた。

「ああ、久しぶり。俺さあ、引退したんだわ」

えっ、引退?

上がり込んで話を聞いた。
1月末で引退したのだという。事業を子供に継がせたわけではなく、代わりの経営者は、私の奉職する会社が紹介した見知らぬ男となった。その男に従業員を継承し、事務所は貸しているのだという。

この社長、いや元社長は私と同い年である。

「どうしたの。まだ老け込む年でもないだろうに」

なんでも、ここ数年体調が優れず、糖尿病、恐らくそれから来る眼病などに苦しめられ、仕事を続ける自信を失ったのだそうだ。

「だけど、仕事やめたら暇でしょうがないよ。何するの?」

彼は答えた。自宅で販売代理店をやるということは、1年365日、1日24時間が仕事ということである。だから、人生の楽しみの大半を失ってきた。これから、失ったものを取り返す!
とりあえず、今週末は孫を連れてディズニーシーに行くのだそうだ。

そうか、ご苦労様でした。
それにしても、俺もそんな歳か……。

先週の19日、前橋でやった送別会を思い出した。
ここ2年ほど、私の提案で、群馬を去る転勤者に松井ニットのマフラーをプレゼントしてる。もちろん、費用は残るみんなで分担するのだが、誰にどの色柄のマフラーを送るかは、すべて私に任されている。出ていく人間の顔、体つき、人間性を思い浮かべながら、

「さて、どれにするか」

と思案しつつ、私が独断と偏見に基づいて選ぶ。
19日も、

「勢いだけで生きているK君には、やっぱり強烈なブルーが似合います。だが、ブルーだけでは色気がない。そこで、ブルーに赤を配色したこいつを選びました。K君、仕事に邁進するのもいいが、色気を忘れてはいけません」

「ボーイッシュ、というより、お前男だろ? というのが似つかわしいY嬢のマフラーには迷いました。もっと女っぽくなれというメッセージをこめて、ピンクを主体にしたマフラーも考えましたが、いや、単なる女になってはいけない、高貴な女になるべきだと考え直し、これにしました。はい、パープルを交えてしっとりと落ち着いたこいつです」

などと適当なスピーチを繰り返しながら、4人にマフラーを手渡した。

「大道君」 

とスピーチを終えた私に声をかけてきたのは、私と同い年の I君であった。

「俺さ、70まで今のところで仕事を続けるからさ、辞めるときの送別会で大道君に選んでもらったマフラーをもらいたいわ」 

えっ、俺も70まで働くの? あと5年も働くの? しかも、5年後の送別会で私がマフラーを選ぶということは、その送別会で送る側にいる私はいくつまで働けってか? 

「それぐらいもつだろ」 

と皆に思っていただいているのはありがたいのだが……。