2014
05.12

2014年5月12日 杜撰(ずさん)

らかす日誌

あろう事か、我が愛車がまたまたドック入りした。冷却水が音を立てて流れ去ったためである。

「えっ、つい先日、修理したんじゃないの?」

と怪訝な思いをされた方は、「らかす」の熱心な読者だ。そう、我が愛車はわずか2ヶ月足らず前、3月18日に冷却水漏れでドック入りし、3月21日に戻ってきたばかりである。

その修理の際、私は

「経年劣化だよね。だったら、そのあたりのプラスチック製のパイプ、まだ生きてるヤツを含めて全部取り替えてくれる? あと少なくとも5年は乗る車だから、割れた分だけ交換しても、おっつけ他のパイプも割れるでしょう。この際、全部新しくしておいた方が安心だもん」

と修理工場に告げた。修理を終わった修理工場は、

「いわれたとおり、全部取り替えたんでこんなになりました。確かにね、1カ所割れちゃえば、他も同じように経年劣化しているんだから、おっつけ割れますよね。全部取り替えというのはよかったと思いますよ」

と、7万9000円弱の請求書を私に手渡した。即座に支払ったことはいうまでもない。
では、なぜ、またまた冷却水が漏れたのか?

御存知の通り、私は昨日、横浜から戻ったばかりである。
金曜日は銀座のオーディオショップをひやかし、ソニービルで

「ああ、Sonyってこんなにだめになっちゃったの」

と嘆息しながら、魅力的な商品皆無のビル内を散策し(立ち止まって触りたくなる商品が全くない。オバさんしかいない売春街と同じである)、
訪れた目的だったハードディスクオーディオプレーヤー(Sony独特の、まあ、ネットワークオーディオプレーヤーまがい)のコーナーでは、いかにも安っぽいアンプ、スピーカーと組み合わされた商品を見て、

「売る気がない。できは推して知るべし」

とがっかりしながら、同行のSさんと川崎に向かって中華料理を楽しんだ。ゲスト参加の、Sさんの同僚S嬢(というとややこしいが、事実だから仕方がない)も楽しい人で、充実した時間を過ごした。

翌朝から私は瑛汰と璃子の奴隷で、買い物ごっこに付き合い、でんぐり返りに付き合い、瑛汰の戦いに付き合い、財布を持って買い物に付き合い、ヘトヘトに疲れ果てたことはいうまでもない。

昨日昼過ぎ、横浜の家を出ようとすると、長い間

「ボス、帰らないで!」

と泣きじゃくっていた瑛汰は、

「じゃあね」

とサッカーボールを蹴った。
その代わり、なのか、これまで何の感情も見せずに私を見送っていた璃子が

「ボス、返っちゃいやだ!」

と泣きじゃくった。2人とも成長している。
桐生に戻った昨夕、璃子から電話があった。

「あのね、璃子ね、ボスがいないと、泣きたくなっちゃうの。だから泣いちゃうの」

璃子は天性の男垂らしの素質を持つ。

話が、ついついそれた。問題は我が愛車である。

桐生の自宅を車で出たのは昼過ぎのことだ。我が故郷、大牟田市にある私の土地100坪の税金をコンビニで支払い、ついでにビッグコミックを買った。問題になっているスピリッツ、ではない。スピリッツの購読はつい最近やめた。だからいうのではないが、「美味しんぼ」、ちと酷い。エセ科学者の世迷いごとに引きずられる作者は、批判されても仕方あるまい。ひょっとしたら、これで作家活動の命脈を絶たれるのではないか。
そうなれば、

「体制派による言論弾圧だ!」

と騒ぐのかも知れないが、それをもたらしたのは己の無知、無恥であると思い知るべきであろう。

あ、またまた話がそれた。

で、コンビニを出て、最初の目的地に行った。

「大道さん、時間があったら御茶でも飲んでって下さいよ」

と引き止められ、だったら車を駐車場に入れようと動かしたとき、異変が起きた。車内のディスプレーが冷却水不足のウォーニングを出したのだ。

「そんな馬鹿な。修理して2ヶ月も立たないんだぜ」

と怪訝に思いながら、駐車場で車外に出ると、なんということか。車を動かした後に、おびただしい水のラインができているではないか。先ほどまで止めておいたところには、プールというと大げさだが、かなりの水が漏れ落ちてできた水の痕がある。

「おいおい、なんで冷却水が漏れるんだよ」

とは思うが、この図を見れば洩れたことは疑いない。このまま車を動かせば、エンジンが焼き付くのは火を見るより明らかだ。

「ということで困ってるんだけど」

2ヶ月足らず前に修理を頼んだ工場に電話をした。30分ほど待つと、車を運ぶトラックで駆けつけてくれた。

「この前修理してもらったときに、どこか締め付けが緩かったりしたのかね?」

「いや、持って帰って見てみないと何とも」

「だけど、あの時、まだ傷んでいないものも含めて、すべてパイプ、継ぎ手を取り替えてもらったんだよね。だからそれしかないと思うんだけど。実は昨日横浜からこの車で走ってきたばかりで、その途中でこうなっていたら、と思ってゾッとしてるんだわ」

2時間ほどして、工場に電話をしてみた。何処が悪かったの?

「はあ、先日はラジエターの方についているパイプと継ぎ手を取り替えたんですが、今回割れたのは、エンジンにくっついてる短いパイプの継ぎ手でして」

「だって、継ぎ手のプラスチック部品が割れるのは経年劣化だから、同じように経年劣化するのはすべて取り替えてくれ、って前回頼みましたよね」

「いや、これは前回取り替えなかった部品で……」

いずれにしろ、その部品を取り替えない限り、我が愛車は走らない。一日も早く健康体になって出て来るのを待つばかりである。

にしても、だ。
前回、すべての同種部品を取り替えてくれ、と頼んだのは、次々に割れるに違いない同種部品を、そのたびに取り替えていたのでは工賃がかさんでしまうことを懸念したからである。その時は大丈夫でも1、2年内に割れることが確実視される部品である以上、一時に取り替えた方が、結果的に安くつく。

ところが今回は、工場側の手落ちで取り替えられなかった部品が割れた。工場では再びそのあたりを分解し、備品を取り替えて組み立て直す。

さて今回、請求書に工賃は含まれるだろうか? それとも、部品代だけの請求書が来るのか?

客としての私は、部品代だけの請求書に加えて、迷惑料をいただきたいところである。
とはいえ、役員さんが知り合いである工場でもある。であるから、こちらから

「そちらの手落ちでこうなったのだから、そうするべきだよね」

とは、なかなかいいにくい。どうしたものだろう?


全く関係ないが、午後7時のNHKニュースで、ワールドカップブラジル大会の日本チームメンバーの決定をしつこく報道した。何のことはない。ワールドカップの前宣伝である。
放映権料は400億円とか。大枚はたいて放映権を手に入れたNHKだから、宣伝したくなるのも理解できないではない。だけど、NHKは視聴者の受信料で運営する組織である。視聴率が上がろうと下がろうと、経営には全く関係がない。
なのに、法外といわれる放映権料を支出し、視聴率アップを目指してニュースの時間帯にしつこく宣伝するNHK。いったい、どんな頭脳構造をした連中が経営してるんだ?

ついでにいえば、トップニュースは、痴呆になって7年も行方不明だった女性が館林の施設で見つかった、というニュースだった。まあ、明るい話とはいえ、トップで報じるほどのニュース価値はないことは大方の皆さんにご賛同いただけると思う。

「なんでこんな話を?」

と怪訝に思っていると、

「見つかったのは、昨日のNHKの番組がきっかけでした」

おいおい、手柄話かよ。

近頃のNHK、知性が急速に衰えたのみならず、持つべき矜持もなくし始めたと見える。

会長ばかりが問題視される大組織NHKだが、あのとんでもない会長がいようといまいと、組織の根っこから腐り始めているのではないか?