10.29
2014年10月29日 8時間
先日、どこかの週刊誌で「老い」について読んだ。
その中で
「へえ」
と思ったことがある。ある年代を過ぎると、肝臓が縮み始めるというのだ。
肝臓の役割のひとつに、解毒、がある。人体に有害なものを分解して無害なものに変える機能である。ひたすらに流し込んだ酒類のアルコールは肝臓で無毒化される。体の疾患を正すために服用した薬も、働いた後は肝臓で無害なものに分解されて体外に出る。
その、肝心要の肝臓が、老いるに従って縮む。かつては一升酒でもたちどころに無毒化していたのに、縮んだ分だけ機能が衰え、無毒化に時間がかかる。
ここまでは前回に引き続き続いて
「大きいことはいいことだ!」
という話である。ただし、これは北海道賛歌ではないので、念のため。
で、体の大きさを誇る私であるが、それでも肝臓は年齢相応に縮んでいるらしい。
昨夜は飲み会であった。大学の先生、企業の経営者、お役人、私のような町場の人間が集い、酒を酌み交わしながら談論を風発する。年に4回ほど開かれる楽しい集いである。
昨日は午後6時過ぎに始まった。集まったのは24人。
「予算編成で急な仕事が入って」
遅れた若者もいたが、全員が
「次はまだかいな」
と心待ちにしている飲み会だ。当然盛り上がった。
お開きは、午後9時半。そこで三々五々別れたが、前橋から我が後輩も2人参加していて、何やら飲み足りぬ表情だったので、
「俺ンとこで飲んでくか?」
と誘った。ウイスキーの水割りを流し込みながら、だが、我が家と来ればクリスキット+ネットワークオーディオである。後輩の1人が
「これが聞きたい!」
という
Sgt Peppers Lonely Hearts Club Band
を、我が妻殿が
「大きすぎてご近所迷惑よ」
というほどの音量でかけ、
「ここはペアガラスになっている。音は外にほとんど漏れない。心配だったら外に出てみろ」
と言い訳をしながら、でも、楽しんだ。
次はもうひとりの後輩で、
「やっぱりLaylaでしょ。今日はアコースティックがいいかな?」
そう、この後輩は割と頻繁に我が家に来て、Eric Claptonに聞き惚れていく。
「うーん、やっぱりエレキがいい!」
というので、ライブ録音の
One More Car One More Rider
から
Layla
を選ぶ。当然、これも大音量であったことはいうまでもない。ライブ会場の感動を再現しようと思えば、大音量にならざるを得ないのである。
2人が前橋に旅だったのは午後11時過ぎだった。ちなみに、その間約1時間。いつもは午後9時半には自分の部屋に引っ込まれる妻殿が健在で、最後まで付き合われた。
私はボーッと酒を飲んでいたに過ぎないが、その立ち位置で残りの3人を観察していると、会話の95%は我が妻殿がお話になっていた。さしずめ、雑談の名手か。
で、客が帰れば、あとは歯を磨いて布団に入る、眠りに誘われるまで本を読む、というのが我が日常である。であるから、どう考えても、日付変更線前に眠りについたはずである。
今朝目覚めたら、8時前だった。優に8時間の睡眠である。一時、
「寝付きが悪く、どれほど遅くねても、朝5時になると目が覚める。俺は不眠症か?」
と懸念していた私はすでにない。いまは
「そうか、8時間が80時間にも800時間にも、いや永遠にもなるのが、ひょっとしたら死ぬということではないか? とすれば、最近睡眠時間が長くなっているのは、棺桶に入る練習をしているということか? ということは、死んでも夢を見るのか?」
などと、ひょっとしたら究極の死生観を手にしたのではないかと考える私である。
それほど寝たのに、だ。
二日酔い
である。
「えっ、酒の最後の1滴を飲んでから、すでに9時間はたってるぞ。それに、飲んだ量も、ビールが2本程度に、日本酒が4合? 5合? 最後にウイスキーの水割りを1杯だけではないか」
と前日の記憶をたどるが、体は、頭は、立派な二日酔いであった。朝風呂に入って酒の気を抜く努力はしたが、午前中は立派な二日酔いであった。午前2時まで酒を飲んでも、翌日は午前6時から臨戦態勢に入っていた私はもういない。
で、冒頭に戻る。
そうか、俺の肝臓も相当小さくなってしまったか。
いや、影響が酒だけなら、飲み方を工夫すればよろしい。
が、だ。先にも少し触れたが、肝臓が小さくなった影響は酒だけには留まらない。薬を分解する能力も衰えるのである。従って、医者や薬の服用指示書を守って薬を飲んでいても、本来は分解されて体外に排出されているはずの薬が体内に残っているところに次の薬が入ってきて、結果として体内にある薬が多すぎてしまい、薬害を引き起こすこともあるのだそうだ。
ふむ、老いとはそのようなものであるか。
いま連続服用しているのは腰の薬である。これがやがて薬害を引き起こす?
長生きもいいことばかりではないのである。
先日亡くなった母方の伯父はあと数日で102歳だった。いまだに健在である我が母は92歳。父方の祖父母は85歳で死に、父は67歳で逝った。
さて、私はあと何年生きるのだろう?