2015
10.09

2015年10月9日 NHKのおかげ

らかす日誌

しかし、まあ。世の中には様々なスポーツがあるものである。NHK BS1は各種スポーツの宝庫だ。

今日の午後6時台は、世界自転車選手権・ロードというのをやっていた。世界中の自転車乗りお姉ちゃんたちがスピードを競う大会だ。ゴール目前まで10数人が一団となり、残り500メートルで猛烈にダッシュ、鼻の差でテープを切る栄光を目指す。

昨日はトライアスロンであった。記憶をたどれば、サッカーあり、野球あり、他には自転車でダートを走り回り、急坂を猛スピードで下った勢いで急坂を上って空中に投げ出されている間に様々な姿勢を取る競技、スケートボードで同じように急坂を利用した競技、オートバイで空中に飛び出す競技、自動車で……。
これ、すべてNHK BS1で最近見た。

自転車で空中を跳ぶ競技。急坂を登り切って空中に飛び出すと、サドルから体を浮かせてハンドルを支点に逆立ちをして見せたり、自転車を回してみたり。着地するときはちゃんとサドルに座っている。

「おいおい、いったいどんな練習をすればそんなことができるようになるのかね?!」

練習では何度も失敗したに違いない。だがあの勢いで空中に浮かび、着地に失敗したらどんな姿勢で地面にたたきつけられるのか。自転車の上に落ちたりすれば、あばら骨の2、3本は折れるのではないか? 頭から落下すれば命の保証もできまい。見ていると、どうしても練習中の事故が頭をよぎり、我が身まで痛くなる。

決してメジャーなスポーツではない。それなりに観客はいるが、世界中探したって愛好者はそれほどいそうにない。この選手たち、こんなことやっていて暮らしが成り立つのか? そもそも、何がきっかけでこんなことに夢中になったんだ? 自転車で空中漫歩する快感、観客の拍手が忘れられず、セブン-イレブンでアルバイトしながら、休みの日は何度も地面に投げ出されて高度な技を身につけるのか?

NHKのBSが、世界中のマイナースポーツを放映するようになったのは、NHK内部の権力闘争の結果だと聞いたことがある。人から聞いた話だから真偽のほどは保証しない。だが、なかなか説得力のある話ではある。

まだアナログ放送しかなかった時代、放送業界の雄であるNHKは衛星放送にもチャンネルを確保して放送枠を増やした。この時、エリートは地上波に残った。自分たちは本流であるから、本家本元の地上波を支配するのは当然である。ほら、そこいらでうごめくウジ虫どもよ。お前らは邪魔だ。どっか行っちゃえ!
とエリートからはじき出された「負け犬」たちがBS放送を立ち上げた。

地上波は、各世帯から半強制的に取り上げる視聴料という確固たる収入源がある金持ちだ。ところが、始まったばかりのBS放送は視聴者が少なく、収入は雀の涙ほど。パラボラアンテナを探し当てては視聴料を脅し取って増収を図るが、飯を食えるほどの金額にはなかなかならない。無論、地上波から幾ばくかの支援金はあったのだろうが、元々は負け犬の集団である。エリートたちが放ってよこす餌は、

「たったこれだけ!」

といいたくなるほど微々たるものだったらしい。勢い、番組製作に地上波のようにふんだんに金を注ぎ込むなど夢のまた夢である。
そこで負け犬たちは考えた。
制作費がなくても、番組は流し続けなければならない。金がないから。地上波のように万人向きの番組は無理だ。少数でもいい、根強いファンがいるのは何だ? 金をかけずに流せる番組はどこにある? NHK BSにチャンネルを合わせてくれる安いコンテンツはなんだろう?

結論を急ぐ。
1つは映画であり、もうひとつはスポーツだった。スポーツといっても、サッカー・ワールドカップ、プロ野球など、人気のあるスポーツはべらぼうな金を払わないと放送させてくれない。べらぼうな金を取っていつも金が唸っているから、国際サッカー連盟(FIFA)で不正が起きるのだが、それはまた別問題である。
狙いはマイナースポーツだった。メジャーなスポーツではなくても、必ずファンはいる。ファンの数が少ないためにこれまでテレビが放送しなかったスポーツを全部放送しちゃえ。テレビ局はどこも買いに行ってないのだから、格安で放送できるはずだ。
これまで、誰もやってみなかったテレビ局を作ってやる。それは、負け犬たちの意地だった。

おーっ、なんだかプロジェクトXになってきたぞ!

NHK BSのスポーツ放送は、こうして始まった。
いまではデジタル化とともにBS試聴世帯も増え、収入も増えたはずだ。だからメジャースポーツも放送できるようになった。いまでもマイナースポーツの放送を続けるのは、初心を忘れないためか。

「なるほど。安堂がマイナースポーツの面白さに目覚めたのはNHKのおかげ、なんだな。とすると、負け犬たちのリベンジ根性に感謝すべきなのか、それとも負け犬たちのリベンジ根性を引き出したNHKのエリートたちに感謝すればいいのか。うん、どちらであっても面白い!」

ここまで読んで、そんな風に感じた方、いらっしゃいます? えっ、貴男も、貴女も?

ところが、私の意味するところは違う。

元々私は、スポーツを試聴する習慣がない。スポーツは自分がプレーして楽しむもの。他人が楽しんでいるのをボーッと見ていてどうする?
それに、マイナースポーツにはまるで関心がない。自転車でかっこよく空中を跳んだ? それが、何か意味があるの?
確かに、

「へーっ。こんなスポーツもあるんだ!」

と驚きながら画面を見つめることが多いので、楽しんでいないとはいえないが、負け犬の復讐に共感してチャンネルを合わせるのではない。

この時間、一風呂浴びて食卓に座るのが私の常である。大家族なら賑やかだが、我が家は核家族。それも子供たちがそれぞれ核家族を作って出ていった残りカスの核家族だから、私と食卓を囲むのは、昨日も今日も明日も、見馴れた、というか、見古した、というか、つまり老妻だけである。食卓を囲んでの話題など、あろうはずがない。勢い、テレビが欠かせない。

ところが、だ。この時間、ろくな番組がない。
民放は相変わらず、自分が世紀のいい女であると甚だしい誤解をしているとしか思えな姉ちゃんたちの天下である。仕事をしているのか、学芸会ではしゃいでいるのか分からないワイワイがやがやは耳にも目にもうるさい。
確かに、見目形はいい女の条件の1つではある。だが、見目形がよければいい女になれるか? 彼女たちとテレビ局の誤解はそのあたりにある。

だからテレビをつければNHK地上波というのが我が家の定番なのだが、午後6時台後半の地方ニュースが見るに堪えないほどひどい。
ずいぶん長い間、我慢してチャンネルを合わせていた。だが、腹立ちがだんだん昂進した。
いったいどんな連中が取材して番組を作っているのか。来る日も来る日も、「県内の話題」とか称して、観光案内に明け暮れるのである。ここに行ったらこんな花が満開だ、いまこれが食べられる、この街を歩くと楽しい、川下りをしませんか……。
群馬のNHKは視聴者の受信料を使いながら、県内観光地のPR番組を作るのに血道を上げているのである。幸いなのは、ために観光客が増えたという話をまったく聞かないことだ。
うん、あの番組のできばえだったらそうしかなるまい。

加えて、NHKのPRが多すぎる。最近は、初代群馬県知事、楫取素彦一色だ。ひょっとしたら、ご本人は偉い方であったのかも知れない。だが、大河ドラマに登場すれば足を引っ張られると自覚すべきであった。もっとも、彼が生きていたころはテレビなんてなかったのだから仕方ないが。
恥知らずのNHKは、駄作のなかの駄作である「花燃ゆ」で楫取素彦の評判を地に落としているとの自覚もなく、これでもかこれでもかとPRする。県や市町村が、乗り遅れるのは損、とばかりにNHKに乗る……。
毎週、駄作の中の駄作を見せられている私の身にもなって欲しいと願うのは、私の贅沢か?

加えて、NHKはアナウンサーも含めて、しゃべりが下手になったなあ……。

ま、そんなわけで、この地方ニュース枠を見ないで時間を過ごすためにあちこちチャンネルを回す日々を積み重ね、挙げ句行き着いたのがNHK BS1だったのだ。

ふむ、ここまで書いてきて、困った。落ちがない。この日誌、どうまとめよう?

ま、まとまらないものを無理にまとめることもないか。
というわけで、今日はこのあたりで。