2015
11.01

2015年11月1日 花燃ゆ

らかす日誌

である。これ、書いたシナリオライター、そのシナリオを採用したNHKの職員の感性はどうなっているのかね?

「おいおい、群馬を何処までバカにしたら気が済むんだ?!」

と、いまは群馬県桐生市に住みながら、本質的には群馬県民ではない私が怒っている。根っからの群馬県民は怒らないのか?

ドラマの舞台が群馬に移って、確か3、4回の放送があったはずだ。それを見た感想を一言で言うと、

「群馬には、賭博が好きとヤクザ、強欲な商人がいて、あとは絵に描いたような阿呆ばかり」

である。
大河ドラマをご覧になっている皆さん、そんな印象を持ちません?
今日だって、群馬県令に就任あそばされた楫取素彦閣下は群馬の教育に力を注ごうとされる。ところが、絹でガッパガッパと儲けている地元の豪商は、

「そんなもの、必要ない。百姓の小せがれが下手に学問をして農家を継がなくなったら、誰が畑を耕す?」

と、学校建設に反対する。反対しながら、大事なのは

「まず目先の利益」

といってはばからない。

まあ、これから楫取素彦閣下が大活躍されて、どうしようもなく未開の群馬に教育が根付き、絹産業が発展するのだろう。
だけど、だ。乗り込んだ楫取素彦閣下だって、京、大坂、あるいは江戸で最先端の文化・文明に触れてこられた方ではない。本州の片隅にある山口の、単なる田舎者である。首相を出したからって、威張るんじゃない、山口! 群馬だって4人出してるぞ。
その田舎物に教えを請うて、率いられて近代社会の仲間入りをする群馬?

私が県知事なら、直ちにNHKに抗議する。

「手めえ、群馬をバカにするのか!」

が、だ。群馬県庁は挙げて、NHK様々である。よくぞ初代群馬県令が登場するドラマを取り上げてくださったと言わんばかりに、各種の「花燃ゆ」イベントを展開中だ。私なんぞは、

「正気かよ?!」

と思う。だが、多分、知事も県職員も、正気で

「イメージ全国最低の群馬県のイメージアップ」

に取り込んでおられるのだ。ああ。
ということは、いまだに群馬、アホの集団か? 何とかせねば!


で、だ。
突然のお知らせだが、私、3日の桐生のお祭り「糸ヤ通りいらっしゃいませ」でパエリアを作る。この祭では、多分初めての試みだ。

話は詰まらぬことから始まった。

この祭の世話方は、例のO氏である。いまやすっかり仲良くなった2人は、よく雑談に花を咲かせる。確か1ヶ月ほど前の雑談だった。

「こんどさ、糸や通りの祭りでフラメンコやろうと思うんだけど、どう思う?」

先生に気があるのか、通っている教え子の1人に関心を惹かれるのか、柄にもなくフラメンコ教室に通うO氏がいった。
と問いかけられても、私はフラメンコなどにはまったく関心がない。関心がないから、やりたい人はやれば、という立場である。

「だれでも、ちょっと踊ってみようかな、と思って参加できるフラメンコで、桐生の織物を使って衣装を作って、そうすれば桐生の織物のイメージアップにもなるし」

それも、どうでもいい。ただ、一つだけ気になった。

「フラメンコだけ? 素人が踊るの? それはどうでもいいけど、だったら、パエリアぐらいなくちゃ雰囲気が出ないんじゃないの?」

まあ、自分で言うのもあれだが、親切心から出た正論である。

「おっ、それいいね!」

O氏ならずとも、正論には乗ってくるのが当たり前である。その程度のまっとうさは、すべての方に備えていただきたい。
当たり前の乗り方をしながら、O氏は一言付け加えた。

「じゃあ、御願いね」

ん? 御願いね? それって、俺に作れってこと?

「当たり前じゃない。そもそも、大道君はパエリアを作れるって、いつも言ってたじゃない」

いや、作れることは作れるけど、俺、祭りの裏方になる気はないし。作り方教えてあげるから、誰か作る人を探してよ。

「いや、せっかく作るんなら、本家本元が作らなくちゃ」

私としては珍しく、反論ができなかった。ああ、俺が作るんかい……。いらぬことを言わねばよかった……。

やむなく、引き受けた。
私が、彼の畏友カルロスとパエリアをつくり、お金を取って販売したことは、グルメらかすの第30回31回32回33回に詳しい。つまり、腕に多少の覚えがある。

やむなく引き受けてしばらくたって、

「待てよ」

と考えた。あのカルロスとの饗宴はもう20数年前のことである。あれからあと、おれはパエリアを作ったか? 作った。最後に作ったのいつ? ……、覚えがない。恐らく、10数年近く前のことである。

「俺、作り方、覚えてる?」


というわけで昨夜、O氏宅で試作、試食の会を開いた。
私がパエリアを作る。集まった人々は黙って食べる。それで合格証がいただければ3日にパエリア屋を私が経営する。合格しなかったら? ……、ここまで来たのだから、それでもやる。その際は、どんなパエリアができようと、口先で客を誤魔化す。

試作を始めたのは午後5時頃だった。

パエリア鍋にオリーブオイルを入れ、火は弱め。つぶしてスライスしたニンニクを炒めて香りをつける。
香りがついたら玉ねぎ、ピーマン、鳥肉、アサリ、エビを投げ込み、強火で炒める。適当なところでエビを取り出し、トマト、そしてイカ。ムール貝は手に入らなかったので、今回は使わぬ。

適当に火が回ったら湯を張り、サフラン。1g1100円のものを買い求めており、少しずつ入れて、半分ほど残そうかと考えたが、途中で面倒臭くなり、

「えーい、ままよ」

と全部放り込む。流石に香りが立つ。そして、塩。
頃合いを見て生米を注ぎ入れる。実は、この時の米の量が難しい。入れすぎると、当然のことながら生煮えになる。足りなければ、リゾット状態になりかねない。

「確か、この程度だったよな」

遠い記憶をたどりながら、米全体がわずかに水面下に沈むよう心がける。先ほど取り出したエビを乗せ、シシトウも米の上に並べて、火はまず強火。全体が沸騰してきたら弱火。

徐々に水面が下がる。

「もうこんなに下がったか」

念のために、上の方の米をひとすくい、食べてみる。

「えっ、これ、生米ジャン! いくらアルデンテがいいといったって……」

ここで慌てないのが私である。試食するのは、どうせ田舎物ばかりなのだ。志高い都会者のごまかしに気がつくはずはない。
と、湯を足す。

5分後、再び水面が下がってきたので試食。まだ生米。再び湯を足しながら、

「あ、そうだ。蓋をしてなかった!」

やっぱり、間違いは起きる。蓋なしで上の方の米を煮込むには水と時間がかかろう。あわててアルミホイルで全体に蓋をし、火は弱火。じっくり煮込もうという構えだ。
やがていい香りがし始め、再び三度、匙でひとすくいして試食。

「できた!」

さあ、皆さん、お召し上がりを!!

最初に

「これ、美味い!」

と声を上げてくれたのは、かつて和食の店を経営し、味に関しては一家言ある、つまりプロフェッショナルの80歳の大先輩である。

「いや、お作りになるところもつぶさに見せていただきましたが、和食しか知らない私からすると常識外ればかりで、それなのに、これは美味い! 素晴らしいです」

かような褒め方をされて舞い上がらないほど、私は人間ができてはいない。

「そうでしょ! 美味いでしょ!! 美味いんですよ、これ!!!」

「大道さん、見直したわ。本当に美味しい!」

とおっしゃったのは、初老か中老か、不確かな女性。何となく私のファンにおなりになったのではないかと恐怖心が芽生えた。

「ほんとね。大道さん、できるんだ」

懸命に己の年齢と戦う、私と同年代の女性は、そうおっしゃった。御願いだから、貴女まで私のファンになったりしないでいただきたい。私が女性として魅力を感じるのはアラサーまでである。

でO氏はというと、おかわりをしながら黙々と食べていた。
どうやら、私は試食会で合格したらしい。これで、3日のデビューは確定した。


当日は、フラメンコ会場のそばで、午後2時頃にサーブし始める。
今回は試食会ということで、料金はいただかない。つまり、無料である。直径45㎝のパエリア鍋で1回だけ作り、皆様、すでに昼食はお済みの時間だということで、少量ずつ食べていただく。
この鍋だと、恐らく30人分ぐらいできるのだろう。それを少量ずつ食べていただくので、行き渡るのは100人程度か。ああ、あまり人が来なければ、ドサッ、ドサッと配るけど。

ということで、大道手製のパエリアを食べてみたい方は、3日のお祭りにおいでください。お待ちしています! といって、何もお土産は用意しませんが。

理論だけでなく実践もできる人、大道からのお誘いでした。