2016
01.14

2016年1月14日 唖然

らかす日誌

皆様。皆様のご家庭に届けられている新聞は何でありましょうか?
無論、最近では

「新聞なんて、だっせー。そんなもん、読まないよ」

とおっしゃる方が増えていることは存じております。が、まあ、そんな方は、この「らかす」のような七面倒くさいWebページだってお読みになるはずはない。つまり、「らかす」をお読みいただいている方々は、何新聞であるかは不明ながらも、どこかの新聞を購読されているであろう。これが、本日の前提であります。

あれ、何なんだろうね。今日の朝日新聞の1面と社会面。スマップが解散する?

いや、私だって、

「スマップ? それ、何? お笑い芸人?」

などというほど世知に疎いわけではない。日本の国土で生きてきた関係上、好きか嫌いか、評価するかしないか、バカにするかアホにするかの違いはあっても、スマップなるグループが存在すること、程度の知識はある。

それが解散する。

勝手にすれば

たかが芸能グループの動向である。The Beatlesのように、一つの時代を体現し、時代を動かして20世紀の中心の一つになった連中ではない。ただただ、世の阿呆どもに持て囃されただけのグループである。
とすれば、その程度の受け止めがせいぜいのところではないか。

それなのに、だ。
朝日新聞は1面と社会面を使ってこの解散劇を報じた。

「おいおい、不祥事のあとはヨタヨタ歩きの朝日さんよ。あんた、とうとう芸能新聞に模様替えするのかよ。まあ、この間世間様をお騒がせし、部数も大いに減ったというから、芸能新聞になることで読者増を目指す? それはあんたの経営方針だからどうでもいいが、あの、憎らしいまで猛々しかった『朝日新聞』は何処に行っちゃったの?」

胸の内は情けなさでいっぱいであった。
そりゃあ、朝日新聞の悪口はいっぱい書いた。だが、悪口も「朝日」だから書きたくなったのである。毎日や読売が同じ事を書いても、

「アホ」

といっておれば済む。良きにつけ悪しきにつけ、日本を体現する朝日だから、

「こりゃ、もっとしっかりせんかい!」

と書きたくなったのである。
その朝日が、1面でスマップ解散?

力が抜けるとは、このようなことをいう。

だが、続いて他紙を開き、まったく唖然とした。

乗ってるジャン、他の新聞にも!
少なくとも、我が家に配達される朝日、毎日、読売、日経、東京、上毛には、多かれ少なかれ、このニュース? いや、話題? スキャンダル? うむ、はっきり言えば、どうでもいい話が掲載されていた。おお、経済紙である日経もか!

いやはや、どうしちゃったんだろうねえ、日本の新聞。こんな、ミーハーしか関心を持たない話を掲載するとは。キムタクがどうしようが、稲垣がどうしようが、そんなの、新聞がわざわざ伝える話か? スポーツ・芸能誌、週刊誌に任せればいいことではないのか?

少なくともこれまで、新聞とは、世に溢れる出来事に各社なりのフィルターをかけ、読者に届けねばならないと判断した出来事だけを凝縮して印刷しているものだと思っていた。それが各紙の主張であり、個性であると考えていた。
それが、横並びでスマップ……。スマップ解散が、競って読者にお届けしなければならない話題……。

ふむ、本当に新聞とは無用なメディアではないかと考え始めた私である。
ねえ、こんなものを読むために、毎月4000円払うか?

あなたはどう思われます?

 

というのは腹立ち紛れに書いたどうでもいい話で、主眼はこちらである。
私の「紫斑」はどうなったか。

今朝訪れたのは、初老の夫婦が開いている内科医である。で、今日木曜日は、おばちゃまが診察される日であった。

「大道さん」

と呼ばれて診察室に入った。

「ああ、今日は朝御飯抜いてきた?」

この内科医は、我が中性脂肪値を下げる薬を処方している内科医でもある。前回訪れたとき、朝食を抜くのを忘れていて、

「それじゃあ、薬の効果を正確に測れないじゃないの」

と私を叱ったのは、この女医さんであった。

「いや、今日は中性脂肪の話ではないので、朝食な抜いてないんだわ」

とまずは断らなければならない。その上で申し上げた。

「その、朝っぱらから美しくないもの、醜いものをお目にかけねばならないのが申し訳ないのだが……」

いいながら私は、ズボンを脱いだ。女性の前でズボンを脱ぐ? まあ、面と向かっているのがアラサーの震いつきたくなる美女であれば、戸惑い、興奮、野望、よだれ、様々なものが交錯しながらの行動であろうが、相手が初老の女医さんであれば、淡々と脱ぐだけである。

「実は、ほら、ここにこんなに大きな紫斑ができちゃって。大きすぎて気持ちが悪くなったものだから」

「あら、ホントにすごいわね」

「もう仕舞っていい?」

「いいわよ」

という会話のあと、様々なご下問があった。
そのご下問に、記憶に沿ってお答えしたところ、診断が下った。

スキーの後遺症だと思うわ」

彼女の話をまとめるとこうである。

私は苗場でのスキーで転倒した。その際、背中、あるいは尻を打ったはずである。

「ある程度の年代に達すると、皮膚が弱くなるのよねえ」

というわけで、打った場所に皮下出血が起きた。ところが、自分で見ることができない場所で、しかも、他人に見せることもほとんどない場所なのでこれまで気がつかなかった。
誰にも気付かれなかった皮下出血=紫斑は、重力に従って下に降りてくる。

「あなた、座って仕事をすることが多い?」

まあ、そうである。映画を見るのも、算数を解くのも、座っていなければできないことだ。

「だから、上から下がってきて、しかも座ったときに下になる、大腿部の裏側に移っちゃったのよ」

なるほどね。そういういきさつであったか。

「あなたが転倒したのが2日でしょ? うん、時間的にもちょうどこのあたりに降りてくる頃だわ」

ということは、放っておけば消えるか。

「そうだけど、念のために血液を調べるわ。それに、中性脂肪の薬も、この紫斑の原因がはっきりするまではやめてちょうだい」

やめてちょうだいって、あなたが処方した薬なんだけどな。

という次第で、血液を20ccほど抜き取られて帰宅した。3390円。

「そんなに取られるの?」

と見るか、

「その程度で原因がわかるの?」

と受け止めるか。それは各人の自由である。

いずれにしても、血液検査の結果が出るまでに1週間ほどかかるらしい。


夕刻、事務室で作業をしていたら、妻女殿の馬鹿笑いが聞こえてきた。娘のひとりと話しているらしい。

「それがさ、お父さんの左脚にものすごく大きな紫斑ができてさ。どうやら、スキーで転んだのが原因らしいの。歳をとるってやーね。スキーで転んだぐらいであんな紫斑ができるんだもんね。お父さんも焦ったらしくて、朝からお医者さんにすっ飛んでいったわよ」

ふむ、亭主の不幸が、妻の笑いの種になるか。
この勢いで行けば、亭主が死ねば、我が妻殿は笑い転げて死んでしまうのではないか。

暗澹たる気分に陥った私であった。