2016
03.20

2016年3月20日 磁石

らかす日誌

腰が痛い。
いや、元々腰痛持ちだから腰が痛いのは常日頃である。しかし、1週間ほど前から状態がやや悪化した感がある。
それまでは、朝起きて腰に張りを覚えても、身体を動かし、朝食を済ませてロキソニンを呑めば、まあ、1時間も立っていたり、腰に負担のかかるような姿勢を取らないかぎり、通常人とほぼ同じように身体を動かすことができた。

ところが、このところは様子が違う。朝ロキソニンを呑んでも、夜、さらに1錠呑み足しても、腰の具合が悪いのだ。朝起きた時のような腰の張りはずっと続くし、椅子に1時間も座っていると、腰を伸ばすのがつらくなる。痛い。
おかげで、数学の学習もギターの練習も思うに任せない。

なーに、ことが数学やギターなら、サボるいい口実ができたと自分を納得させることもできる。が、車を1時間も運転すると、降りても腰がなかなか伸びないとなると、日常生活に響きかねない。

「おいおい、俺の腰、とうとう限界に達したか?」

まだ66歳でしかない。これから死ぬまで何年あるかは知らぬが、腰の痛みに暮らしの幅を狭くされては生きる甲斐がない。何とかならぬものか。

と思案しながら、別の用件で薬局に立ち寄ったときに、ふと「ピッピエレキバン」が目に入った。

まあ、新聞広告でも見た気がするから、その存在は知っていた。でも、磁石を身体に取り付けると血流がよくなって凝りがほぐれるって? 科学のような、科学ではない民間信仰のような、どうもその境目にあるような商品に、これまで関心を持つことはなかった。
だが、である。ことここに至れば、いろいろなものにだまされてもいいのではないか? だまされたつもりが、思いの他の効果あるなんてこともありうるのではないか?

こうして、その商品を初めて手に取ったのが5日ほど前であった。

箱には、筋肉のこりを取るとある。こり、ねえ。俺の腰の痛み、筋肉がこってるのが原因か? ちょいと違うんじゃないの?
半信半疑、というか、1信九疑の思いで手に取った商品である。まず試したのは、もう3、4年は付き合っている右肩の痛みだ。指で押して痛がゆい反応があるところに1枚ずつ貼る。肩なら、例え効果がなくても諦められるのではないか。

「あれ? 何かいいような……」

と感じたのは2日後である。痛む箇所が減ったというか。
であれば、腰にも試してみない手はない。残ったヤツを腰にも貼ったのはいうまでもない。

が、である。これ、なかなか高いのだ。24粒入りで約1800円。右肩には5カ所ほど貼るし、首筋にも左肩にも、それに腰にもとなると、1800円は1回貼れば終わっちゃう。
で、である。これ、磁石を絆創膏で貼り付けるのだ。となると、風呂に入る際はやっぱり取り外さねばならない、と考えるのが普通で、私も剥がしてすべて捨てた。
だけど、さ。そうすると、毎日風呂に入る私は、毎日1800円使って「ピップエレキバン」を使い続ける訳? それって、1ヶ月では5万4000円になるぞ。そんな金、もうないわ、俺には。

「なんだよね。あれ、高いよね。高すぎる」

昨日訪れた薬局で、店主にぼやいた。

「そうですか。でも、あれって結構科学に基づいていて、効いたっていう人、多いんですよ」

「だけどさ、俺みたいに、腰は痛いし、右肩は相変わらずだし、首筋もはるし、となると、毎日1800円だぜ。そんな金、払えるわけないジャン」

「あ、ひょっとして、剥がしたヤツ、捨ててます?」

「捨てるしかないでしょうが」

「あのね、確かに粘着テープは一度剥がしたら使えませんが、磁石って、あれ、永久磁石なんですよ。私のお客さん、剥がしたら磁石だけ取り外して、他のテープを使って貼ってますよ。だから、買うときは高いけど、ずっと使えると考えると、けっこう安いんですけどね」

ん? 永久磁石? いわれてみれば、それはそうだ。あれは電磁石ではない。1日使ったら磁力がなくなる、なんてことになるはずがない。
だから再利用する? そうだよな。再利用。資源の無駄遣いは許すまじ!

今日、再利用する磁石を身体に貼り付けるため、伸縮性の粘着テープを買ってきた。入浴する前に身体から剥がした磁石を入れておくケースも確保した。

よし、いま身体に貼っている磁石は14個。他に、新しい「ピップエレキバン」が28個ある。あわせて永久磁石の総数42個。これだけあれば、痛むところにところ構わず貼り付けたとしてもお釣りが来るはずである。

いま腰には8個の磁石。プラシーボ効果だろうか、今朝より腰は楽になったような気がする。とりあえずは磁石様々である。

にしても、だ。
なぜ腰がこれほどまでに痛む? 磁石の再利用を教えてくれた薬局の店主に聞いてみた。

「季節の変わり目、時に最近のように雨が降ったり止んだりする、つまり気圧が上がったり下がったりすると、腰が痛む人が多いんです。きっとそのせいですよ」

であれば、季節がすっかり春になり、晴天の日が続くようになれば我が腰も落ち着くはずである。
彼の話が真実であることを心から願う私であった。

で、永久磁石は、次の季節の変わり目まで保管しておくことはいうまでもない。