2016
10.19

2016年10月19日 クレーム

らかす日誌

今朝方、前橋から日通の若い兄ちゃんが来た。8月末に引っ越した時の、日通の担当員である。来なくてもいいと何度もいったのだが、どうしてもと押し切ってきた。

といっても、何の話か分かるまい。ご説明する。

引っ越したのは8月27日。新居で、すべての荷物を、とりあえず生活空間が確保できるまでに片付けたら、次にすべきはパソコンの設定である。とにかく、これを済ませないことには暮らしが元に戻らない。

古びたiMscと新しいMacBook Airを買ったばかりのデスクの上に配置する。さて、これに取り組んだのが27日だったか、28日だったか定かではないが、どちらであっても兄ちゃんの来訪とは問題とは関係がない。

MacBook Airの最大の泣き所は、内蔵の記憶用メモリーが小さいことだ。128ギガしかない。よって、おおむねのファイルは外付けのHDDに保管することになる。HDDは不安定なデータストレージである。保管したファイルがなくなっては困るから、そのバックアップも取っておかねばならない。
かような次第で、MacBook Airには2台のHDDを接続する。これは前の家にいた時からの私のスタイルである。

2台のHDDはどちらも3テラの容量を持つ。HDDも安くなったもので、これだけの大容量がわずか1万円程度で手に入る。だから2台買って使っているのだ。これで、私のデータファイルの安全性はほぼ100%である、と自負していた。で、新居でもMacBook Airに2台のHDDを接続したのだった。

ところが、だ。私のMacBook Airはこのうち1台しか認識しなかった。おかしい。つい1,2日前までは2台とも認識していたのである。何が起きたのか。

まず、一度USB接続を解除して再度差し込んでみた。何も変わらない。
ハブを介して接続しているのが悪いのか。今度はMacBook Airに直接接続した。だが、認識しない。
最後に、iMacに繋いだ。それでもダメだ。

「あれ、壊れちゃった?」

引っ越し前までは正常に動いていた。引っ越しを挟んで故障した。となれば、原因は引っ越しにある、と私は考えた。
さて、困った。とりあえずは3テラのHDDが1台動いている。だからデータの保管場所に困ることはない。が、このままではデータのバックアップができない。

「もう一台買うか」

と鬱々と考えていて、ふと思い当たった。

「日通は保険に入っているはずだ。引っ越しが原因なら保険でまかなえるはずである」

で、日通に電話をした。これがすべての始まりとなった。

壊れたHDDはおおむねバックアップ用だった。だが、そうではないファイルも入れておいた記憶があった。だが、どんなファイルを入れていたかは、中身が見えなくなったのだから確かめようがない。
そこで日通には

「保険で新しいのを買ってもらても1万円ぐらいだが、それよりも中のデータが復旧できればありがたい」

と告げた。引き取りに来た担当者は

「分かりました」

といって帰った。確か8月の末か9月の始めのことである。
保険システムがが動き出したのだ。あとは任せておけば済む。軽く考えた私はその後、私のHDDが修理に出ていることも忘れがちだった。放っておけば、そのうち直って戻ってくるさ。

「そういえば、HDDはどうなったのかな」

ふと思い出したのは今月に入ってからである。引き取りに来てもう1ヶ月。それなのに、いまだに何の連絡もない。データが救い出せるのかどうか、を判断するのにこんなに時間がかかるはずがない。専門業者に持ち込めば即日、長くても2、3日あれば分かるはずである。
そこで、こちらから電話をした。調べて折り返す、とこの担当者は語った。

「あのう、調べたんですが、外傷はどこにもないし、ということはぶつけたわけでもなよようですので、これを修理といわれましても……」

おいおい、1ヶ月も客を待たせた挙げ句の報告がそれかよ。ムッとした。

「あのね、HDDがパソコンから使えなくなってるのよ。我が家はMacだけしかない。2台のMacに繋いだらどちらでも使えなかった。だから壊れたと判断したんだ。あんたのところでほかのパソコンにつないだらちゃんと動いたのか?」

「いえ、そういうわけはないんですが……」

「HDDが壊れているかどうかは外見だけは判断できないぐらいのことは分かるだろ? パソコンに繋いで使えなければこ壊れてるんだよ。壊れてないというんなら、正常に動くところを見せてくれ」

これが最初の会話である。その後、これに類した不可思議な日を置いて会話が繰り返された。

「壊れていてデータは取り出せないそうです」

あのさ、壊れてないはずのHDDが突然壊れたことになったのはおくとして、じゃあどこが壊れてたんだ? データが取り出せないというんならディスクに傷でもついたのか? それとも、ピックアップか? 制御基板? 断線? どこが壊れたの?

数日後。

「すみません。データは復旧できるそうなのですが、30万円ぐらいかかるそうで、保険会社がそんな金は払えないといってるんですけど……」

ほう、データは復旧できる。では、どこが壊れたんだ? ピックアップ? 制御基板? その価格の根拠は何なんだ? 君では話が分からないので、修理に出した先の担当者から私に電話をさせてくれ。

数日後。

「あちらの会社からお電話を差し上げるのはできないといっています。お客様の個人データを使うことになるので、といっていました」

おい、私に電話をしろといったのは私だ。私が私の個人データを使うことを認めてるんだから、どうして私の電話番号を使うことができないんだ? あなたのいってることがまったく理解できないんだけど。
わかった。じゃあ、こちらから電話をすればいいんだな。電話番号と担当者の名前を教えてくれ。

即日、私から電話をした。話は実に分かりやすかった。

まず、私のHDDはどこも壊れていない。ディスクも正常ならピックアップも問題ない。パソコンから認識できないのは、パソコンに認識してもらうためのソフトの部分が壊れているためである。従って、データの復旧はできる。ただ、データ総量が1.6テラ前後と膨大なため、復旧作業の従量課金、つまり復旧するデータの量に応じて課金する部分が膨らみ、料金は14万6000円ほどになる。どんなデータが復旧できるかの一覧は、日通の人に渡してある。

おいおい、話が違うじゃないか。30万円? それ、どこから出た数字だ? 日通で保険会社から30万円受け取り、中抜きしようってか? それに、復旧できるデータ一覧なんか存在すら知らないぞ。そもそも1ヶ月間、何をしてたんだ?

という怒りの電話で、日通の担当者がやってきたという次第だ。

彼の話によると、HDDの修理、データの復旧については、子会社に丸投げしていたらしい。彼は、その子会社の担当者から話を聞いて私に伝えていたわけだ。加えて、デジタルデータについての知識がほとんどなく、子会社の担当者から聞いた話を理解できないまま私に電話をしていたらしい。

「申し訳ありません。子会社から話を聞くより、こちらでお話をうかがった方がよくわかりまして」

おいおい、情けないなあ。聞いて分からぬ話を人に伝えるってのはそもそも無理で、話を聞く時は自分で理解できるところまで聞かなくては、ね。

「それで、これがお話しされていた、救出できるデータの一覧です。子会社の担当者がファックスで送られてきたところまでは記憶しているというのですが、その後は忘れていたと」

その子会社の担当者、左遷しなさい

「いやあ、その、はい」

これが復旧できるデータの一覧か。であれば、もうひとつのHDDにも保存しているflacデータ、息子に渡すためのflacデータ、これらはもう必要ないから復旧しなくてもいい。となると、復旧データはかなり減るから、費用もそれなりに安くなるはずだよ。
そもそも、保険会社っていうのは、金は沢山取るくせに、保険金の支払いは渋る。担当者が自分の成績をよくしようと思って、口八丁手八丁でそうする。そんなのに誤魔化されてどうするの?
契約書をよく読みなさい。契約書が、HDDのデータ復旧に触れているかどうか。触れていなければ奴らが保険金の支払いを拒否する根拠はないわけで、触れていたらどんな触れ方をしているかによって交渉の仕方もあるはずだ。
契約書、読んでみた?

「いや、その……」

まあ、いいや。ということで、私が必要だといったデータは復旧してください。HDDは修理でも、新品でも構わない。そのHDDに、復旧したデータを入れてもってきて。

「はい、分かりました。そのようにします」

そもそもさ、今回のことで、一番いけなかったのは、私に何の連絡もしなかったことだよね。私が思い出さなかったらどうなっていた? こんなこと、1ヶ月も放っておくものか?
次は、私が連絡を取ったあと、自分が理解していないことを私に説得しようとしたことだね。あの程度の話で何となく納得する人がほとんどなのかね? それとも、私は特異なクレーマーか?

「いや、そんなことはありません。ただ、こんな事例にぶつかったことがなかったものですから」

どんな事例にぶつかっても、原理原則さえ守っていれば対処できるものです。口先だけで丸めこもうとするとこうなってしまう。

「勉強になりました」

日通の担当者はそういって帰って行った。だから、私のHDDはそのうち戻ってくるだろう。

改めて問う。
私はウルトラ・クレーマーか?
常識を平然と口にし、納得できるまで引き下がらない、いまでは変わり者と呼ばれる人種か?

あなたはどう判断されます?