2017年10月18日 ヒトラー

らかす日誌

所用があって桐生市役所に行ってきた。驚いた。衆議院選挙の期日前投票に人の列ができていた。

「凄いね、この人の列」

多分、市の職員であろう。人の列を整理していたお兄ちゃんに声をかけた。

「ええ、前回の1.5倍ぐらいの勢いです」

ふむ、この群馬2区でこんなに盛り上がる?

「こんなつまらない、投票する先のない選挙に、よくこれだけ来るね」

「でも、投票率は投票日になってみないと分からないですから。期日前に有権者がたくさん来ても、当日は投票所ががらがらなんてこともありますから」

と答えたこのお兄ちゃん、ひょっとしたら私と同じように

つまらない選挙

と思っているがゆえの返答だったのか。

 

月曜日は高崎から知人が来て、酒を飲んだ。
昨火曜日は、なぜだか人前で話をさせられて、その足で飲みに出た。
今日は朝から、仕事で人にあった。戻って原稿を書いた。
明日も明後日も仕事が入っている。
何かとせわしない1週間である。

週末はゆっくりしよう、と思っていたら、昨夜ショートメールが来た。

「21日(土)に群桐祭に来ませんか。○○研究室やモンゴル留学生の出店を賑やかにしてください!!」

返事を書いた。

「あなたに言われれば、行くしかありません。何時頃に何処に現れればいいですか?」

かくして、週末も忙しそうである。

 

ヒトラーとは何か」(セバスチャン・ハフナー著、草思社文庫)

を読んでいる。文句なしに面白い。

ヒトラーとは何か。何故に政権を取ることができ、何故に戦争とユダヤ人虐殺に突き進み、壮大な敗戦を迎えたのか。
この本には、これまで読んだ歴史書や、これまでに見た映画とは違うヒトラーがいる。

例えば、

「ヒトラーの最大の敵は保守勢力だった」

えっ、ヒトラーとは、ナチスとは、右のまた右、極右と呼ばれる存在ではなかったのか?

「1930年から34年の国内政争において、ヒトラーが真剣にむきあわなければならなかった相手、時として真っ向から勝負しなければならなかった唯一のライバルは、実は右翼=保守勢力だったのである。それ以外の自由主義左派、カトリック中央党、社会民主党、そして共産党も、ヒトラーからすればまったくおそるに足りない存在だった」

 「国防軍の保守派将校たちは、1938年と1939年に反ヒトラークーデターを計画していた。ゲルデラー、ポーピッツといった保守政治家たちは、戦争期間中ずっと国防軍、政界、財界の反ヒトラーグループと連絡し合って陰謀を練り上げていた」

そして

「左翼的ポピュリストとしてのヒトラー」

えっ、それって、日本でいえば立憲民主党みたいなもの? それとも、かつての民主党

「もちろん彼は民主主義者などではなかったが、権力の基盤をエリートにではなく、大衆に置くポピュリストであった。見方によっては、絶対権力に上り詰めた民衆煽動者といえた。彼が用いた最大の武器は煽動であり、つくりあげた支配機構は序列化された階級制度ではなかった。混沌としてまとまりのない大衆組織を、頂点に立つ彼一人がたばねて統括したのである。どこを見ても右翼というより、左翼的性格が濃厚であった」

 「ヒトラーをファシストなどと呼ぶのは、まちがいもはなはだしい。ファシオズムというのは上流階級による支配であり、大衆の熱狂を作為的に生み出して、自分はその上にあぐらをかくのである/ヒトラーも大衆を熱狂させはしたが、けっして大衆を離脱して、上流階級にのし上がろうとはしなかった。彼は階級政治家ではなかったのだ。彼が唱えた国民社会主義(ナチズム)は、ファシズムとはまったくちがうものなのである。すでに前章で見たとおり、ヒトラーが唱えた『人間の国有化』は、ソ連や東ドイツのような社会主義国にぴったりあてはまる。ファシズムの国々では、この『人間国有化』というのはほとんど進まないか、あるいはまったく欠落しているかのどちたかである」

ふむ、ということは小泉元首相がヒトラーに近いのか。
そういえば、北朝鮮の軍隊行進は、限りなくナチスドイツの軍隊行進に似てるな。

などと考えながら読むと、ぐんぐん引き込まれる。

驚いたのは、ヒトラーが政権を取ったとき、ドイツには600万人の失業者がいたのに、政権を取って3年後、失業者はゼロになった、という。ヒトラーが大衆の支持を集めた一つの要因である。

もし、そのような景気回復が政治主導で行われたのなら、ヒトラーは政治の天才というほかはない。森友学園や家計学園問題があっても安倍自民党が選挙に勝ちそうなのは、この間の景気回復が大きく作用しているはずである。だが、日本はまだ失業率ゼロというわけにはいない。

しかも、である。ヒトラーは第1次世界大戦に負け、戦勝国から厳しい制裁を科されて経済がどん底にあったドイツで、経済の奇蹟を成し遂げた。ふむ。

考えさせられる。

筆者はすでに亡くなったジャーナリスト。この本の出版は1978年である。だからソ連も東ドイツも登場する。

オーストリアのしがない無職の男でしかなかったヒトラーが一時は大ヨーロッパを実現し、そこでやめておけば英雄になれたのに、無謀な対ソ連戦、対アメリカ戦に突き進み、最後は自殺で幕を閉じる。筆者は、戦争の負けをいち早く悟ったヒトラーは、ドイツ民族の殲滅に向かって突き進んだ、いわば民族としての集団自殺を試みた、と分析する。

ご一読をお勧めする。