2018
02.02

2018年2月2日 雪、受験

らかす日誌

昨夜から、再びの雪。たいした降り方ではなかったが、朝目覚めて障子を開くと、庭木にも車にも、厚さ5㎝ほどの白い覆いがかかっていた。この程度なら、雪景色として楽しむことができる。夜なら雪見酒としゃれ込みたいところだが、私は朝湯の趣味も朝酒を楽しむ習慣もない。

「ああ、積もってるわ」

それだけの雪だった。昼過ぎには、道路の雪はほとんど溶けていた。

次の日曜日も、またまた横浜に出かける。瑛太の算数指導である。
5年生も終わりとなると、塾のテスト問題もかなり高度になる。その復習をさせようというのだが、目の前で突然、

「これ、教えて」

と問題を差し出されても、即座に教えることができるかどうか、だんだん不安になってきた。
そのため、今週月曜日に横浜から戻る時、瑛太の冬期講習のテスト問題をコピーし、持参した。日曜日から月曜日にかけての瑛太の復習を手伝うための事前準備をするためである。

分野は、「数の性質」「速さ」「平面図形」「割合と比」「立体図形」、そして「場合の数」である。今週、仕事に追われながらも時間を盗み、コツコツと解いた。幸い、全問解けた。これで準備は万端整った。

しかし、難しい
戸惑ったのは、こんな問題だ。

点Aと点Bを結んだ線上に、ABを2等分する点、3等分する点、4等分する点を順にそれぞれ書き込んでいきます。ABを除くと実際には6個の点が書き込まれましたが、重なる点があるので、見かけ上は5個の点になります。

(1)5等分、6等分する点も順に書き込んでいくと、ABを除いて、見かけ上は何個の点になりますか。
(2)20等分する点まで順に書き込んでいった時、ABの真ん中の点には実際には何個の点が重なっていますか。
(3)100等分する点まで書き込んでいった時、ABを5等分する4点(AとBは除きます)に書き込まれた点は、実際には全部で何個ありますか。
(4)100等分する点まで書き込んでいった時、見かけ上は1個で、実際には8個の点が重なっている点は、全部で何個ありますか。

問題は以上である。

(1)は、まあ、実際に書き込んでみれば解ける。11個だ。(2)も、線分を等しく分ける点を考えれば、丁度真ん中に来る点があるのは、偶数等分する時だと分かる。つまり、2等分、4等分、6等分……、とやっていってみれば10個と分かる。

「ふん?」

と考え込むのは(3)からである。100等分にもなると、とてもじゃないが書き込むなんてできない。とすれば、論理で解き明かすしかない。5等分する4つの点に重なるのは? 
これは(2)がヒントになっているのだろう。2等分点には、偶数等分すると必ずここに重なる点がある。では5等分点は? 5の倍数で等分すると、必ずこの4つの点に重なる等分点がある。
そこまでは比較的スムーズに解けた。はたと考え込んだのは(4)である。(2)、(3)がヒントになっているだろうとは分かる。特に、(3)と同じように考えれば解けるはずだと察しがつく。ああ、解けそうだと何度も思う。答が目の前に来ている気はするのだが、それがなかなか捕まえられない。

「おい、中学受験生って、1時間やそこらの時間でこんな問題に正解するのか?」

何だか、中学受験生が天才少年・少女の集まりに思えてくるから不思議である。あ、今日もどこかの私立中学で試験をしているのかな? 天才少年・少女たちは雪の中、無事に試験会場にたどり着くことができたかな?

モヤモヤする気持ちのまま風呂に入り、晩酌をして夕食を済ませ、映画を2本見て布団に入った。風呂は読書の時間だし、晩酌、食事、映画は他のことを考える時間ではない。だから、再びこの問題に取り組んだのは、布団に入ってからだった。

解けそうで解けない。恐らく倍数に関係するのだろうというところまでは考えが進んだが、さて、倍数をどう使うのか。ちなみに、100までに8個の倍数(自分自身も含む)を持つのは12である。12、24,36,48,60,72,84,96だ。では12等分、24等分、36等分……の等分点は、どのような条件で重なるのか?

12等分点と24等分点は12の点で重なる。とすると、36等分点、48等分点も12等分点と12の点で重なる。しかし、待てよ。

12=2×2×3

だから、2等分点、3等分点、4等分点、6等分点とも重なる点があるはずだ。8つ重なる点。どんな論理で……。

と考えを進めていたら、ふとひらめいたのである。
ABの真ん中は、Aからは1/2の点である。この点に重なるのは、Aから2/4、3/6、4/8……と、約分すれば1/2になる点ではないか。とすれば、Aからの距離を分数で現したとき、約分して同じ分数になる点は重なるのだ!

ひらめいたら、あとはスムーズだった。100までに倍数が8つある(自分も含めて)のだから、分母は12である。1/12の点には8つが重なる。では2/12点は? これはだめ。約分すると1/6になるから、もっと多くの点が重なる。ということは、分母が12の既約分数ということだから、1/12、5/12、7/12、11/12の4つの点しかない。
1/12点に重なるのは、2/24、3/36,4/48,5/60、6/72,7/84、8/96,である。
5/12に重なるのは、10/24、15/36,20/48,25/60、30/72、35/84,40/96。

これ、ひらめくまでに少なくとも3時間はかかった。分かってみれば

「なるほど!」

なのだが、現代の天才少年・少女諸君は、1時間前後の試験時間でこんな問題の正解にたどり着くのだろうか? たどり着く子がいたとしたら、末恐ろしいというしかない。

首都圏では私立中学受験がブームのなのだそうだ。6年生の6人に一人(だったと記憶する)がいま、中学受験に挑んでいるのだという。
小学6年生でこんな問題に取り組む。私は小学生の頃、まったく自宅学習をした記憶がなく、ただただ遊びほうけいていたから、こんな試験を受けたら落っこちていたに決まっている。時代が違った、首都圏ではないところで小学6年生時代を過ごしたことを喜ぶ。

68歳で解く中学受験問題は惚け防止である。それなりに楽しい。
だが、こんな問題が解ける、あるいは解けるようになるための訓練を日々重ねるいまの子どもは、ハッピーなのか、アンハッピーなのか。

瑛太の算数を楽しみながら、何となく考え込む私であった。