2018
06.11

2018年6月11日 指名手配?

らかす日誌

危うく指名手配されるところだった。

今朝、首都高速道路で事故を起こした。追い越し車線から走行車線に移ろうとした時のことである。

私は長年運転するものの習い性として、車線変更をする際はまずウインカーを出し、サイドミラーで後続車を確認してハンドルを切る。これは、頭でそうしなければと考えての行動ではなく、長年の運転の間に、身体の動きとして身についてしまったものである。

今日は横浜から桐生に戻る日であった。首都高速から東北道に乗ろうとして車線変更をしかけた私は、この一連の動作を無意識のうちにしたはずである。そしてハンドルを切り始めた時、後ろで急ブレーキの音を聞いた。何事ならんとバックミラーに目をやると、1台の車が私の車に急接近しており、すぐにドシンという衝撃が伝わってきた。
お釜を掘られたのである。

この事故の責任分担比率はこれから保険会社が交渉するのだろうから、ここでは書かない。ここで書くのは、私が危うく指名手配されかねなかった一件である。

事故が起きた。であれば、相手の運転手と話をしなければならない。私は車のスピードを落とした。だが、ここは高速道路上である。だが、車がビュンビュン音をたてながら走っていく場所で車を止めるのは無謀というものだ。高速道路には必ず待避帯がある。そこまで走って車を待避帯に車を入れるのが安全確保のためには必要である。
私はとっさにそう考えた。多分、相手もそう考えるだろうと思った。だから自分の車の速度を落とし、相手がついて来るのを待とうとした。

ところがである。相手は一向に動き出さないのだ。速度を落としたとはいえ、私の車は動いている。やがて、相手の車が視野から消えた。

さあ、困った。相手の車種も運転手の名前もナンバーも何も分からない。その車とはぐれてしまった。どうする? 

一番近い待避帯でしばらく待つか。最初はそう考えた。ところが、どういう訳か待避帯がなかなか見つからない。ひょっとしたら私が慌てていたのかも知れないが、今となっては原因は不明である。
行けども行けども、車を入れるべき待避帯がない。さて、どうする?

これが、今朝の私に突きつけられた課題であった。
どうやら、この課題に私は、独特の回答を与えたようである。

「どうせ相手の車、運転者とすぐには会えないのなら、警察への連絡は桐生に着いてからでもいいではないか?」

こうしては私は自宅に着いたあと、高速道路高速警察隊に電話で連絡を入れたのであった。

まず、電話に出たお姉ちゃんがいった。

「事故が起きたら速やかに警察に連絡することは道路交通法に定められています。確かに、高速道路上ですから車を止めるのは無理でしょう。でも、次のインターで降りて一般道に入り、そこで車を止めて連絡することは出来たでしょう?」

なるほど、いわれてみればその通りである。論理的に考えれば、「すみやかに」というのはどの程度の時間なのか、に疑義はある。20分後なら「すみやか」で、90分後では速やかではないのか?
しかし、いまはそのような理屈が通じる状況ではない。ただただ御説ごもっとも、と平身低頭しなければならない状況である。そして不思議なことに、私のハートは、自然に平身低頭していたのである。

続いてお姉ちゃんは

「今日は雨で事故が多く、係員が出払っています。こちらから連絡を入れますので、電話番号と氏名、生年月日、車のナンバーをいいなさい」

いや、そのような強い言葉をお姉ちゃんが使ったわけではないが、少なくとも私にはそのように聞こえてしまった。ひたすらに平身低頭するしかない心理状況に追い込まれていた為だと思われる。

午後3時過ぎ、事故処理から戻ってきた交通警察隊員から電話が来た。

「あの事故ですよね。相手の方は現場から110番されていまして、はい、私はそこから戻ってきたのです」

そうか、相手は道路交通法上の義務を、「すみやかに」果たしていたか。

「旦那さんは午前中に連絡を入れていらっしゃるからまあいいですけど、相手さんから見たら、警察に連絡を知れたのは自分だけ。だとすれば当て逃げされた、解釈されたって不思議ではないですよね」

そうか、私は当て逃げ犯になるところだったのか。

「お話しを聞くと、確かに高速道路上で車を止めるのは危険ですから、その時の旦那さんの判断も分からないことはないですが……。相手の方には私の方から連絡を入れて、旦那さんの事情、少し遅れたが届け出をされたという話は伝えておきました」

私は、すんでの所で指名手配されずに済んだのであった。

というわけで16日土曜日、東京・宝町の高速道路交通警察隊への出頭を命じられた。いやこれも

「一度来てもらわないといけませんが、いつがご都合がよろしいですか? 私の方は土曜日が具合がいいんですけど、どうですか?」

といわれただけである。命じられたと感じ取るのは、平身低頭している私だからである。
事情聴取は30分ほどで終わるそうである。車は修理に入っているし、当日は電車で往復する予定にしている。

ほんの数日前、実は横浜の次女が同じような事故を起こした。右車線に出ようとして、後続車を確認したはずが確認不十分で、後ろから来た車が次女の車にぶつかり、車体の右側を派手にこすったのである。
私は左への車線変更、次女は右側への車線変更。一般道と高速道の違いはあり、車線変更の方向もまるで逆だが、事故の原因は同じである。確認の不十分だ。

親子とはそこまで似るものか。

事故のショックで何となく気分が優れず、妻女殿が昼食にお出しになった鍋焼きうどんを5口ほどしか食べられなかった私である。
69になっても、俺って案外ナイーブ? 打たれ弱い? 逆境にふんばれない?

というわけで、町おこしの続きを書く気分にはとてもなれない今日の私である。事情をご理解いただき、町おこしの続きは哀れみを持ってお待ちいただけるよう、伏してお願いするものである。