2018
09.04

2018年9月4日 ライター

らかす日誌

私はライターを持っている。100円ライターではない。もっとたくさんのお金を、といっても数千円でしかないが、とにかく、使い捨てではないライターを持っている。100円ライター全盛の現代、珍しい存在かも知れない。

日常的にパイプたばこを楽しみ始めて、100円ライターでは使いづらいことが分かったので1年近く前に購入した。紙巻きたばこに比べて、パイプたばこは火がつきにくい。100円ライターでは、葉っぱに火がつく前にライターの金属部分が熱くなり、とても握っていられなくなる。何度か火傷しかかり、パイプ用のライターが欲しくなった。

だが、たかがライターである。たばこに火がつけばよい。そう考えて2000円程度のものから始めた。しかし、安物が安物であるには理由がある。すぐに壊れたり、余分なところに炎が回ったりで使いにくい。パイプ用のライターを探し始めて、いまのライターは確か3個目になる。6000円ほどの、BCという国産ブランドの製品である。

右の掌に握り、人差し指をレバーにかけて押し下げると火口が現れる。親指で回転部分をくるりと回すとさっと火がつく。火がつけばレバーを戻すまでは火が燃え続けるのでボディー部分を掴む。だから熱くない。ここには、多分ビニールだろうが、ブルーの、押し型を施したものが巻いてある。見た目も悪くない。

というわけで1年近く愛用しているのだが、しばらく前から火がつきにくくなった。何度親指でくるりを繰り返してもつきにくい。当初はゆっくり回す工夫をすれば着いていたが、とうとう何度回しても着かなくなった。

「これ、何とかなるかなあ」

たまりかねて購入した市内の販売店に持ち込んだ。

「そうですね。ああ、ホントだ。火がつかないわ。分かりました。メーカーに出しときます。まだ1年たってないから、多分サービスで修理してくれますよ」

「そりゃあそうだよね。1年もたたないうちに壊れるようなライターは誰も買わないからね」

という会話を交わしたのは、8月10日頃のことだった。

「お盆が入るので、ちょっと時間がかかるかも知れませんが」

といわれ、

「その間、これを使っていて下さい」

と数個の100円ライターをもらった。今朝まで、その使い捨てライターで火を着けていた。

その愛用の、使い捨てではないライターがやっと今日、戻ってきた。修理詳細付きである。

・発火やすり
・やすりねじ
・火口ノズル
・火口部品
・レバーピン、スプリング
・石押しパイプ
・石押しねじ
・石押しスプリング

修理されたのは以上である。何だか、外装を除けば総取り替えに近い。修理代金は

2000円

とあった。あとで消すのなら、最初から書かなければいいのにと思う。
ま、それはそれとして、修理でライターは確かによみがえった。今までに5,6回使ったが、一度も着火しないことがない。くるりと回せば、気持ちがいいほど火がつく。ひょっとしたら新品の時以上かも知れない。
考えてみたら、消耗部品がほとんど取り替えられたのだから、新品同様である。無料で新品同様になるのなら、故障も悪くない

それはいいのだが、不思議な気がしたのは「送料」を取られたことである。500円強だが、えっ、製品の不具合を直すサービスで、ユーザーから送料を取るか? である。先日、キヤノン製のプリンターを修理に出したが、送料はすべてキヤノン持ちだったぞ。それがメーカーの常識じゃないか?

「と思うんだけど、このメーカー、送料を取るんだ」

と聞いてみた。

「ええ、こちらから送る分はこちら負担なんですよ。向こうから送ってくるのは向こうの負担なんですけどね」

中途半端な送料負担の仕分けである。

「でも、買って1年未満の故障だったら、普通は送料もメーカーが持つよね」

「そうですねえ。まあ、最近は配送料も上がっているから負担しきれないんじゃないでしょうか」

おいおい、500円強の送料を負担できなくて会社が経営出来るのか? ひょっとしたら、この販売店が

「このような修理にともなう送料はメーカー負担」

という顧客対応の原則を知らず(まあ、ライターを修理に持ち込む人間も少ないだろうから)、販売店負担で送ってしまったので私にツケを回したんじゃないの?

とは疑いつつも、たばこの販売店はライターメーカーに比べればはるかに弱小企業である。

「そうなのかねえ」

にっこり笑って500円強を支払った、心優しい私であった。

ライターと一緒に送られてきた「修理完了商品送付のお知らせ」には

「尚、本票の提示によって今回の修理完了日より無償修理期間が6ヶ月間延長されます」

とあった。下手な日本語を読みながら

「来年2月までにまた故障してくれたらいいな」

と不埒なことを考える私であった。