2019
07.06

これからどう生きていきたいかと問われても……

らかす日誌

四日市の長女から電話を受けたのは昨日、午後2時半頃のことである。
私は前日4日は埼玉県川口から東京に転戦する仕事で、その日は東京に泊まり、昨日は宇都宮で仕事を済ませて午後1時半頃帰宅。ボーッとしているところだった。

電話で長女は言った。

「ねえ、お父さん。お父さんはこれからどう生きていきたいの?」

突然の質問である。はあ、お前、何の話だ?
聞けば、横浜に住む次女も同じことを考えて心配しているのだという。
ということは、あれか。私の老後(すでに始まっているかも知れないが)と、子供としてどう付き合おうかという話か。

そこまでは推測が付いたが、困ったことに、私はそのようなことを一切考えたことがない。ボーッと考えるのは、人が私を必要としてくれる限りは仕事をしていたい、という程度の事である。求められても、自分でその期待に応えられなくなったと思うようになったら仕事を離れる。おそらく、長女の質問は

「その後、どうするの?」

ということなのだろう。

うん、どうしよう。とりあえず、横浜に家はある。だから、そこで暮らすのが一番金がかからない。いや、いまは次女一家が住んでいるので、それが実現するとしても、あの一家が自分たちの住まいを見つけて引っ越してからである。そうなれば桐生を引き払い、桐生で仕事がある日は桐生に来る、連続で仕事があればホテルに泊まる、仕事がたくさんあれば小さな部屋を借りて桐生での住まいとするのもいいだろう。
まあ、その程度しか考えていない。

しかし、考えてみれば、我が妻女殿はもう35年前後も持病を抱えておられる。体力の衰えぶりは私以上である。女はしぶとい、というか、男より長持ちするように身体が作られているからどうなるか分からないが、私が一人取りのこされる確率は半分以上だろう。
つまり、私は高齢にして独り暮らしを迫られるリスクを抱えている。

もう少し前なら

「若く、見目麗しい女性を見いだして共同生活に入るわ」

と長女に答えたかも知れない。しかし、古希を過ぎた今となっては実現性の薄い話である。私にその意欲が残っていたとしても、それに答える奇特な方は、滅多なことでは現れまい。さて、そうなったらどうする?

身体が動くうちは独り暮らしの気ままさを楽しむのもいい。
といっても、私は旅行に出たいとはあまり思わない。知らぬ町を訪ねてその風情を楽しむような趣味は皆無である。体力がなくなっているから、アウトドアを楽しむことも出来ぬ。で、趣味といえば、最近は読書と映画鑑賞と音楽鑑賞。ということは、どれだけ自由な時間が合っても、家に引っ込んでいることが多い老人となる。

「だから、誰も知らないうちに死んで、10日ぐらいして見つかるかも知れないな」

まあ、それでも私はかまわないのだが、子供たちにとってはそうもいくまい。だから

「ねえ、お父さん。お父さんはこれからどう生きていきたいの?」

という質問が出てくるのだろう。しかし、自分でもその程度の事しか考えていないのだから、子供たちを納得させる答が出てくるはずもない。

私が大好きな母方のおじはすでに90歳か。奥さんを亡くした独り暮らしを続けているが、娘2人が近くに嫁いだため、毎日のように顔を出して面倒を見ている。あれはいいなあ、とは思うが、我が家は長女が四日市だし、次女はまだどこに終の棲家を見つけるか分からない。ということは、あんな生活スタイルを取ることは不可能である。

一般論としては、私は三世帯同居を好む。三世帯同居には嫁・姑の対立などの問題がつきまとうことは十分承知である。

「私はあなたの息子と結婚したのであって、あなたの家と結婚したのではない」

という女性の主張ももっともだと思う。若い二人が家を離れて若さを楽しみたいという気持ちも理解しているつもりである。
それでも、戦後日本で核家族化が急速に進んだことが様々な問題を引き起こしていると考える。

結婚と同時に家を出ることで、世代間の知恵の伝承が途切れた。親と同居していれば様々な暮らしの知恵を受け継ぐことが出来る。中でも、出産、育児は世代間の知恵の伝承が途切れたため、いま若い母親は子育てで精神的に追い込まれてしまっている。真面目な母親は思った通りにならないと悩み、ずぼらな母親は子供を捨てる。親が同居していれば

「そんなに神経質になる必要はない。テキトーにやってれば子供は育つのよ」

と、自分が子供を育てたノウハウを時に応じて伝授できるし、育児に疲れた母親の代行として子供の世話をし、若い母親の負担を減らすことも出来る。子供を捨てようとする母親と同居していれば、子供を守ることも出来る。

もちろん、私が知らないマイナス面もたくさんあるのだろう。しかし、最近の子供と親を巡る悲惨な話に接するたびに

「親と同居してれば防げたのではないか」

と考えてしまう私なのである。

ん? だから体力がなくなった私は子供の家族と同居する?
いやあ、無理だろう。横浜にあるのはそんなに広い家ではない。それに、これまで離れて暮らしてきて、突然同居するようになればいまは表に出ていない問題もたくさん生まれるはずだ。

では、身体の自由がきかなくなれば施設に入所するのか?
これも御免である。
年寄りばかりが集まり、四方山話をするか、介護士の指導に合わせて遊戯をしたり童謡を歌ったりする暮らしなんてまっぴら御免である。年寄りになっても、年寄りには囲まれたくない。

「俺はお前たちとは違う! Young at Heatを知らないか!! 寄るな!!!」

と叫び出しそうな私である。
となると、やっぱり元気なうちは独り暮らしをするしかないか。掃除、洗濯ぐらいは出来るし、料理だって料理ブックを見ればできるだろう。
そして、元気にコロッと死ぬ

さて皆様、私とほぼ同世代の方々は、これからどう生きていこうと思っておられますか?