2019
12.15

まさかこれは、惚けの走りではないよな、と懸念する私であった。

らかす日誌

昨日、不思議なメールが来た。

「今回ジェットスターにご搭乗いただきましたが、サービスや乗り心地などはいかがでしたでしょうか?
当レビューは、今後ご利用予定のお客様の参考となります。(投稿後に写真をアップロードすることも可能です。)
skyticketのサービス向上にご協力をお願い致します」

そう、一見普通のアフターケアのメールである。普通でないのは、私は「今回」はジェットスターに搭乗していないことである。

「なんだ、このメール? 何でこんなメールを受け取らねばならん? スパムにも見えないが」

文面を読みながら、私の思考はさらに先に進んだ。

「ジェットスターに乗るのは来月だって。このメール、早すぎるぜ」

ここまで来たとき、ハッとした。
私は年明けの1月、亡き母の法事で九州に行く。そのため、少しでも金を節約しようと確約航空券を予約した。行きが1月12日、戻りが1月13日である。

「ひょっとして、俺、間違って予約した?」

搭乗日を間違う? 俺に限ってそんなバカなことはしないだろう。しかし、受け取ったメールは搭乗予約日の間違いを示唆しているのではないか? 恐る恐る、先に来ていたメールを開いた。

●航空券情報
2019年12月12日 東京(成田)発 ― 福岡着
ジェットスター GK509(12時05分 ― 14時20分)【便・日程変更不可】
 券種:Starter(普通席)

あちゃー。やっちゃった!
だが、その先を読むと、戻りの便予約は1月13日である。ということは、私は正月を挟んだ1ヶ月、九州で過ごすために飛行機を予約したことになる。そんなことはあり得ないのだが……。

そもそも、である。航空券の予約は、行きの便から始めるものだ。私もそうした。1月12日。その便が取れたから、戻りの便を翌日に取った。翌日が1ヶ月後の翌日になるなんてあり得るか?
だが、2つのメールを読む限り、あり得たのである。

私は惚けたのか?

「何してんの、お父さん!」

メールを見ながら、思わず、我が身のふがいなさを口に出していたのかも知れない。妻女殿がそう発声された。
片道の航空運賃が無駄になったのである。普通なら、妻女殿の声は怒気を孕むはずである。ところが、この日の声には怒気はなかった。人を馬鹿にしたような、どこか嬉しそうな、楽しそうな響きがあった。

「70過ぎるとこんなになっちゃうかねえ」

片道航空運賃が無駄になったことが、どうしてそんなに嬉しいのか……。我が家に財布は1つしかないはずなのに。

やむなく、本日改めて、1月12日の福岡空港行き航空券を予約した。1万5440円。ふーっ、老いるとは金のかかるものである。

いや、これは事故である。誰だって、どんなに若くたって勘違い、間違いはしでかすものだ。それが最新の脳科学が明らかにすることである。間違わないのはコンピューター。人間の脳は間違うから、曖昧だから、コンピューターより遙かに優れた臓器なのである!

と叫びつつ、ああ、やっぱり1万5440円、もったいなかったなあ、と嘆く私であった。