2020
06.07

しかし、長期政権とは腐るものであるなあ。

らかす日誌

安倍政権が、新型コロナウイルス対策として進めようとしている施策で、次々とおかしな金の使い道が表沙汰になりつつある。

最初は、中小企業に最大200万円を差し上げる「持続化給付金」だった。政府から769億円で業務委託を受けたのは「サービスデザイン推進協議会」という、聞いたことがない団体である。私が聞いたことがない団体なんて山ほどあるはずだから、それが問題なのではない。問題は、政府から委託を受けた事業をそっくりそのまま、749億円で電通に再委託したことである。
つまり、この聞いたことがない団体は、この委託事業に関する限り、

トンネル団体

であった。トンネルとして名前を貸すだけで20億円も金が稼げる。まあ、利益率抜群というか、収益性抜群というか、濡れ手で粟、というか。誰もが羨ましくなる団体である。
どんな団体なんだろう、いったい何をやっているのか? 誰しもそう思う。思えばすぐにググるのがネット社会なのだが、これ、HPが出てこない。ウィキペディアに解説があるだけだ。この解説を読むだけでも、なんだかうさんくささが漂う。おい、20億円は誰のポケットに入ったんだ?
私より随分前に関心を持ったテレビ局(TBS)が取材を試みたようである。登記を頼りに所在地を訪れると人影はなく、代表理事に電話取材すると

「私はお飾り」

という返事が返ってきたそうだ。ここまで来ればうさんくささをはるかに超えた犯罪の臭いがプンプンするではないか。安倍首相の思いやりが国会で否定された検察は、このれを事件として捜査を始めるのだろうか?

まあ、世の中には悪い連中がいて、濡れ手で粟の儲け話の捻出に余念がないことは

浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の種は尽きまじ

という石川五右衛門の述懐を待つまでもない。この団体を作ったのは電通、人材派遣のパソナ、といった面々らしいから、これらの会社にブラックの烙印を押せば済む。

それだけかと思っていたら、何のことはない。コロナ後の観光需要喚起策として政府が進めようとしているキャンペーンでも、キャンペーン事業そのものではなく、キャンペーンを進める事務のための費用として3095億円が計上されているとの報道に今日接した。事業費全体が1兆6794億円だから、事務費だけで全体の2割を占める。

そもそも、世界中で人が動けなくなり、国境を超えた移動がいつ旧に復するか分からぬいま、こんなキャンペーンが必要なのかどうか。100歩譲って必要だとしても、いま必要なのかどうか。この施策そのものに、これもうさんくささを感じるが、それにも増してギョッとしたのは、事務費が2割という数字の異様さである。

民間企業には「直間比率」という指標がある。事務、という仕事は利益を生み出さない。利益を生み出す部門を支えるのが事務だから必要な仕事ではあるのだが、利益を生まない仕事にかける費用はできるだけ減らしたい、というのが経営のイロハである。直間比率を改善せよ。それほど経営者が気にする事務、という間接経費に2割もの経費を回して健全な経営ができる企業がいったいどれだけあるのだろう?

おかしい。政府の金の使い方がおかしい。そもそも、3000億円もの金を掛けて進める事務って、いったいどんな事務なんだ? 豪華なビルの広々とした一角を事務室として借り、最先端のOA機器を備え付け、とびきりのエリートを、そう、年収3000万円程度で雇用する。それでも3000億円なんて使えるのか?
どこかの誰かが、「事務費」という名目で政府から金を引き出し、その多くをポケットに入れてぬくぬくとした暮らしをするんだろうなあ、と羨ましくなる。

あれ、だけなら、

「そりゃあ、政府にも悪いやつの一人や二人はいるさ」

と諦めれば済む。
しかし、

あれもこれも

となると、安倍政権の体質を疑わざるをない。

権力は腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する

とは、英国の歴史学者、ジョン・アクトンの言葉らしい。原文は

Power tends to corrupt and absolute power corrupts absolutely.

我が国では安倍1強体制といわれる安倍政権が続いている。政府の誰もが安倍首相に逆らえないといわれ始めて久しい。
このような政権では、首相に対してあえて正論をぶつける硬骨漢は、様々な理由をつけて遠ざけられる。首相側近として権力を奮うのはおべっか使いばかりとなる。そしておべっか使いとは、己の利に賢い人たちの別命でもある。自分の権力欲、金銭欲、名誉欲、その他諸々の欲を満たすため、彼等はおべっかを使う。ヒラメ族になる。邪魔な連中を排除する。恥を顧みず、プライドをかなぐり捨てなければできることではない。なーに、しばらく我慢をして体制が整ってしまえばあとはやりたい放題だ。一時の辛抱だよ、ってか?
今回の委託費問題で、そんな奴らが生の姿をさらしてしまったのではないか。もっとも、私たちはまだ、そんな奴らの顔も名前も知らないのだが。

アメリカのトランプ政権は、トランプと意見を異にする閣僚、幹部が次々と首を切られ、あるいは自ら政権を離れた。絶対権力のわかりやすいモデルである。日本ではそのような目立った人の動きがなく、だから安倍政権とトランプ政権は似たようなものではあるかもしれないが、多分違うのだろうと私は思ってきた。いや、日本の政権がトランプと同じではないと思いたかった「愛国心」のなせる技だったかも知れない。

だが、今回の委託事業を見ていると、いったいどこが違うのか? と思っちゃうよね。単に、アメリカ人は物事をはっきりさせるのが好きで、日本人は腹芸で済ませようとする傾向が強いだけのことかも。

永田町にも霞ヶ関にも「me first」の魑魅魍魎が権力の座を占めて跋扈する。久しく大きな事件を扱っていない検察庁、警察がその気になれば、大物を次々にお縄にできるのではないか? よだれが出そうなほど美味しい状況だと思うのだが、さて、検察も警察も、やっぱり安倍政権に忠誠を誓い続けるのだろうか?

これからの展開が見物である。