2020
12.04

ワクチンが出来たと浮かれ騒いでおるが……

らかす日誌

新型コロナウイルスのワクチンが出来たらしい。世を挙げて歓迎ムードで、バイデン次期大統領、オバマ前大統領とも率先して摂取するそうだ。役職に伴う特権とも見えるが、我が儘者がたくさんいるらしいアメリカでは、

「俺はワクチンなんかいらねえや!」

という声も数多いと言うから、まず範を示すのが狙いだろう。

しかし、今月号の「選択」によると、有効率が90%とも95%ともいわれるこのワクチン、手放しでは喜べないらしい。歓迎できない副作用があるというのである。

開発されたのはmRNAワクチンと呼ばれる。コロナウイルスの遺伝子の一部を使い、人間の体内でコロナへの抗体を作る。実は、人類史上でmRNAが実用化されるのは今回が初めてなのだそうだ。

このmRNAワクチン、副作用が強いとのレポートがある。アメリカの科学誌「サイエンス」によると、接種者の2%で39℃以上の高熱が出た。43歳の治験者は、摂取した場所が「ガチョウの卵」大に膨れあがり、38.9℃の高熱が出た。また、9.7%に倦怠感が、8.9%に筋肉痛が、5.2%に関節炎が、4.5%に頭痛が現れた。

いや、その程度なら、感染した場合のリスクに比べれば我慢の範囲内かも知れない。ところが、そうばかりは言っていられない副作用もある。
そもそも、新型コロナウイルスに感染すると免疫系が異常になるケースが見られるというのである。ワクチンを摂取するすることは疑似感染だから、本物に感染したときと同じ抗体が体内に出来る。だからワクチンでも免疫系を異常に活性化し、自己抗体、つまり自分の体を異物と勘違いして攻撃してしまう抗体を作ってしまう恐れがあるのだという。

自己抗体が膵臓のランゲルハンス島を攻撃すればインシュリンが分泌されなくなって糖尿病になる。女優・大原麗子、遡ればアメリカのフランクリン・ルーズベルトが発症したギラン・バレー症候群も免疫異常の一つである。わが妻女殿が闘病中のSLE(全身性エリテマトーデス)も自己免疫疾患の難病だ。自分を外敵から守るはずの抗体が、自分関節や腎臓、心臓、脳などを敵と誤認して攻撃する。今のところ原因は不明で根本治療はない。免疫抑制剤で免疫反応を抑えるのが唯一の対症療法である。
ワクチンを摂取する人が多くなれば多くなるほど、自己免疫疾患を発症する人が増える恐れがある。それが、「選択」が発する警告なのだ。

ワクチンのによる免疫異常が現れるには摂取から数ヶ月の時間がかかるという。ということは、アメリカが今月から摂取を始めるとして、来年春先には結果が見えてくるはずである。
この面からは幸い、日本でこのワクチンを接種できるまでにはその程度の時間がかかるといわれている。副作用が出るのかどうかを見極めて摂取するかどうかを決められるわけだ。
皆様も頭にとめておられて方が良いと思ってここに書き記しておく。

しかしながら、である。前門の虎後門の狼、とはこのようなことを言うのだろう。行くも地獄戻るも地獄。まあ、ほんと。大変な選択を迫られる時代になったものである。

それにしても、だ。新型コロナウイルスと闘う武器としてワクチンが待ち望まれていたことは疑いない。私だって待っていた1人である。
待ちながら、腑に落ちないことがあった。開発に成功した、と宣言したのは今回のアメリカ勢、イギリス勢、ドイツ勢に加え、記憶によればロシア勢、中国勢である。どこにも日本の姿がない!

おいおい、日本の新薬開発技術ってその程度なの? ノーベル生理学・医学賞を受賞した日本人は5人もいるのだぞ。それなのに、このコロナ騒ぎの中で、製薬メーカーも研究者も、誰もワクチンを開発しなかったのか? 開発しようとしたけど力不足で出来なかったのか?

資源に貧しい日本は技術立国こそあるべき姿、と言われ続けてきた。それなのに、全世界が待ち望んでいたコロナワクチン開発でのこの惨敗をどう見たらいいのか?

何となく寂しい私であった。