2021
03.03

作りやすくて性能のよい 12AX7×4、12AU7×2 ステレオ・プリアンプの製作 3

音らかす

【配線について】
シャーシができ上がったら、いよいよ配線です。シャーシ作りと違って、これからの仕事は読者にはかなり楽しい仕事ですが、一つ一つていねいにやることがここでも一番大切です。

まずはじめは第9図の実体配線図(ラグ板配線図)にあるラグ板の作業から始めるのが順序でしょう。本機の基板の大きさは83mm×228mmですが、作ってみてこのサイズが適当だと思いました。まず形紙にこの大きさの線を引き、実際に部品をあてがってみてピンを立てる位置に印をつけます。そしてその寸法に切ったベーク板に形紙を重ねて、左右チャネル用を2枚作ります(第11図参照)。プリント基板を自作できる人なら実用図に合わせて基板を作るとなおよいでしょう。筆者のようにプリント基板を作ったことのない人は2m/mφの10mmボルトを150本位と、それに合ったナットを150個入手して、穴を空けた基板に写真Cのように植えていきます。あらかじめ部品の大きさに合わせてピンを植えるのだから、こじんまりとした部品基盤ができます。そのピンに実体図のように部品を並べるのだが、リード線は先に張っておいた方が、部品を後でつけ易い。ついでながらリード線は各色入手して、プレートは赤、グリッドは黄、カソードは青といったふうに色分けしておいたほうが後で電圧チェック等に便利です。リード線はより線より単芯のほうがよいのは勿論です。市販のラグ端子板と違って、ピンがかなり太いからリード線や部品をとりつける前にピンにハンダ・メッキをしておいたほうが仕事がやりやすい。基板には抵抗が17個、コンデンサが13個だけだから、両チャネルの基板を作るのに2時間もあれば十分です。ハンダは十分つけておかないと、何年も愛用しているうちにトラブルを起こすから注意が必要です。このときに基板とD板とE板をつなぐリード線はつけないほうがあとから仕事がしやすい。

ボリューム配線図

 

基板の配線が終わったら、1.2〜1.5mm位の太い裸線を基板の裏側にアース母線としてピンの頭にハンダづけをします。線が細いとハムが出るおそれがあるので太いほうがよい。これで基板は終わり、次にD板に真空管ソケット、入・出力ピン・ジャック板、フィルタ・コンデンサをビス止して、実体図のように抵抗、コンデンサ、リード線をつけていく。前にもいったように、広々としたところにハンダづけをするのだから、ていねいに、ヒータ線は少し大まわりする位にソケットから離して張りめぐらします。400μFもフィルタ・コンデンサを使ってあるからハムの心配はあまりないが、近づけないほうがよいでしょう。とくに2番と7番のピンはグリッドだから近づけるとハムが出るおそれがあります。ていねいにやれば、後で音を出したときに解るがハムはゼロに近い程出ないS/Nのすばらしいものができること、保証つきです。部品一覧表にあるように、プレート抵抗および負荷抵抗は全部リケノームRM-2(2W形)を使わないと、抵抗ノイズが出ます。

部品つけと配線が終わったら、回路図と実体図をよく見て、プレートとグリッドおよびカソードから基板につながっている線を色分けして、すこし長めに切って、あらかじめハンダづけしておきます。本体にD板をビスでとりつけてからだと配線がむずかしいからです。ただし、V4とV5のグリッドはリード線をつけないでおきます。入・出力ピン・ジャック板は何もつけない。D板には3本のアース線で張ってあるが、これは裸線ではなく、リード線がよいが、太めのものがやはりS/Nの点でよいでしょう。単線がなければ、より線でもよいが、30心以上のものを使って欲しい。電源部のほうへ行っているB+とアース線は少し長い目に、プラスは赤、マイナスは白、ヒータのプラスは黄、といった具合に色分けしてつないでおいたほうがあとで楽です。

写真Dのように左右チャネルのリード線をスイッチのところで完全に二つに分けておきます。理由はお解りのようにチャネル・セパレーションをお(す?)こしでもよくするためです。せっかくシャーシを2階建てにして分けても、スイッチのところでクロストークを起こしては何にもなりません。

スイッチ類は、菊形ロック・ワッシャを使って、付属のナットでよくしめつけるだけでシャフト等がシャーシにアースするが、通信機用ボリュームは普通のと違って、裏蓋および2連ボリュームの中仕切りはシャフトから電気的に浮いているので、第10図のようにリード線の切れっぱしをハンダづけして、菊形ワッシャにもハンダでつないで取り付けると、ボリューム・ケース全体がシャーシにアースします。今までにいろいろな方法を試みたが、このやり方が一番簡単で確実です。ただしシャーシの塗装はその部分だけはがしておかなければアースから浮いていることがあるのはもちろんです。

入力ピン・ジャックから入ってくるフォノ、チューナおよびテープのシールド線はファンクション・スイッチにつながるが、チューナ、テープは大したことはないが、フォノの線は1点アースの理屈に基づき、ファンクション・スイッチのところで、ピン・ジャック側とV1のグリッド側のシールドとをつないで、入力ピンのアース端子も含めてこのシールド線のアースを実体図にあるようにシャーシには落とさないで、グリッド側のところで1点アースポイントに落とします。これは非常に大切なことで、その他のところでアースすると、必ずハムが出るからくれぐれもご用心のこと。本項の実体図は、読者の方には見慣れないものかもしれないが、こういう点の説明にはこのほうが解り易いと思いますが。(入力ピンのところではフォノのアース端子につながるシールドがアースから浮いているのにご注意)。

第10図

チューナ、テープ等はゲインが少ないので、実体図のように理論と少し違っているが、このとおり配線するのが一番やり易いと思います。(本機の場合にもハムは出なかった)

実体図にシールドの印と、そのアースのとり方、つまりアースの位置を示してあるから参考にして下さい。シールド印のつかない線は、普通のリード線で配線しなければ、ハイが落ちます。このことは前にも説明したとおりです。

バランスVR-6からV5のグリッドへ行くシールド線のアースは、必ずV5のカソードのピンへ落とし、ボリューム側に落としたり、アース線にアースしてはいけません。実験してみたら、私の使ったシールド線のせいもあったのかハイが大きく落ちる結果ができました。これは前に説明したようにバランス用ボリュームが全開のときにはよいのだが、常に半分になるので、2次側のインピーダンスが変わるために、シールド線が持つ何ピコかが働いて、ハイが落ちることになるからです。ハムが出なければ、リード線のほうが無難でしょう。

以上のE板の配線も本体から離しての作業だから、割り合いたやすい仕事だと思います。配線しながら、糸でぶらぶらしている線を写真Eのように結んでまとめていくと仕事が綺麗で、しかも後でトラブルが起こらないからぜひ実行して戴きたいと思います。

ボリューム類は通信機の高級品を使わないとやはり安心できません。何度もいうように最高級品です。部品もよいものでないと後でトラブルのもとになります。私はコスモスのRV24、RV30形を使用しました。

E板が終わったら、電源部に移ります。先づフィルタ・コンデンサを、B+用のを3本上側に、ヒータ用を2本下側に、それぞれ、C板にとりつけます。まだD板がついてないので後側があいているから配線は簡単で、第11図の実体図どおりに配線をしていきます。別に注意することはないと思われるが、ホーロー抵抗も完全にシールドされていないので、部品どおしがくっつかないように! ホーロー抵抗にはリード線がついていないので、RM抵抗のリード線の切れっぱしを乗せておいてつなげば、仕事がやりやすいのでついでにつけ加えておきます。

回路図および実体図のアース母線の張り方によく注意して、電源トランスおよびフィルタ・コンデンサのマイナス側は、トランスの回りに絶対にアースしないようにこれを間違うと必ずハムが出るから注意が肝要です。

プリアンプに電源を同居させた設計になっているので、このあたりに十分気を配って、トランスから出るフラックスも、実体図のようにしたほうが、高S/Nを期待できます。