2021
03.13

音を求めるオーディオ・リスナーのためのステレオ・プリアンプの製作 製作編 2=完

音らかす

【プリント基板の製作】
シャシが出来上ったら、いよいよ配線に掛りますが、前回のものより仕事をきれいにし、しかも確実に作るために、プリント基板を採用しました。第11図に従って、プリント基板を作ります。シャシの構造上、左右チャンネル用のプリント基板は、背中合わせになりますから、裏表正反対を2枚作ります。

プリント基板

一番大切なアース用の線は、かなり太くしてありますが、一般の基板用の銅箔が薄いので、私のは70ミクロンを別注しましたが、まだ薄く、ハムが出ても不愉快だと思ったものですから、その部分だけ、百貨店のH.O.ゲージの電気汽関車売り場で0.3m/m厚の燐青銅の板を入手して、プリント基板のアース線より少しだけ細く切り、ハンダでその部分にくっつけました。太い線のところだけです。つまり、アース母線の部分だけ、電流を流れ易くする事によって、アース母線になるべく電位差をなくすわけです。燐青銅が入手出来なければ、0.8m/mの単線を、枝のところには1本づつ、母線には2本づつ、ハンダでとりつければよいでしょう(写真)。

本誌の読者の方々には、プリント基板への部品の取りつけについて、説明は不要だと思いますので、省きますが、トランジスタなどは1つもありませんので、少々の熱でもおかされる部品はありません。ハンダはたっぷりつけて下さい。何年かたって、トラブルが出るのは全く嫌なものです。

順序が逆になりましたが、プリント基板のまわりについているラグ端子は、部品を付ける前に取り付けて置かないと、部品を取り付けてから金づちで“トンカチ”と叩くのはあまり感心しません。C22のコンデンサは、前回のところで説明しましたように、一番後で、メインアンプにつないでから、その数値を決める事になると思いますので、基板の表からつけられるように、ハト目をつけて置いて下さい。

従って、この段階ではコンデンサはつけないでおきます。ラグ端子にはリード線はつきませんので、基板に部品を付け終ったら、しばらくさわる事はありませんので、抽出しに入れておいて下さい。

次が、E板です。これはD板よりはるかに簡単なので、先にやってしまいます。

【E板の配線】
配線に先立って、真空管ソケット、フィルタ・コンデンサ、入出力ピンを取り付けて置くのは、言うまでもありません。この配線の要領は実体図を参考にして下さい。実体図は複雑になるのを防ぐためにCh.1側のみを示してあります。電源部まわりの部品は邪魔になりますので、後にまわします。何事にも順序というものがあります。ただ、やみくもに部品を付けて行ったのでは、仕事がやりにくいばかりでなく、きれいなものは出来ません。

実体配線図

それからこれは大切な事ですが、本機の配線には全部単線を使います。0.65m/mφ位のもので良いと思います。不思議な事に、パーツ屋にはあまり見つかりません。何でもかんでも撚線(原文は、「撚」ではなく、糸偏に「差」と書いた漢字が使われています。パソコンでは出て来ませんでした)でなければ、と考えるのは、馬鹿の一つ覚え。試みに、メーカー製のアンプの内部を調べてみればわかりますが、撚線(これも先と同じ)みたいに使いにくいものは見当たりません。5〜8色位欲しいのですが、入手があまり容易ではありません。電話工事屋さんに行けば、手に入ると思います。8〜24色の単線を太いビニールチューブに入れた線をわけてもらえると思います。ビニールのチューブを剥いて中の単線を使います。電話工事用ですので、銅分の多い上等のビニール線が中に入っており、割合細くても、導通が良いので、太目の線を使ったものと変わりありません。色もあざやかできれいな線です。

ヒータは、シリーズで、完全に近いほど、直流になっていますが、S/Nを少しでも良くするために、ヒータ配線は、なるべく2番、7番のピンにくっつけないように。これはグリッドですから。C3とC17は、あまりリード線を長くすると、ブラブラして、故障のもとです。しっかりつけます。ビニールチューブをかぶせると、ショートする心配がありません。ついでに、V2—V3へのプレートからグリッドへの配線も一緒に張ります。

B電源用のアース線は、32芯以上の撚線(同上)を使って下さい。これが細いと、S/Nをかせぐのに苦労します(写真参照)。アースポイントへつなぐ線と、電源部へもって行く線は少し長い目に切って、遊ばせておきます。各フィルタコンデンサのアースピンに、ハンダを十分使ってしっかりと付けます。負荷抵抗は、全部RM-2つまり2W級ですから、リード線が太く、抵抗も大きいめですので、ハンダ付がやりにくいと思いますが、なるべく丁寧に、ラジオペンチで曲げながら、あらかじめ所定の位置にあてがってから、リード線を切らないと、きたない配線の見本のアンプのようになりますから注意して下さい(驚いた事に、こんなにきたない配線をしても、測定したところ、素晴らしい特性が出ましたし、音も申し分ありませんので、ぶきっちょな人も、あまり心配しなくても良いのかもしれません)。ちょっと来なる事は、きたない方が、高域の特性が、わずかですが、良かった事です。何故か理由はわかりませんが、どちらも生まれて初めてハンダを手にした人です。1W級(RM-1)の方が部品が小さいし、リード線も細いので、少しぐらい抵抗ノイズが出てもかまわないと(これもそんなに大きく出るわけではありませんが)、お考えの方はお好きなように……。

プレート、グリッド及びカソードからそれぞれプリント基板にもって行く線を適当な長さに切って、ハンダ付けしておきます。これらの線は、撚線(同)でもかまいませんヒータ用のアース線も同じく、32芯以上の太い線を、真空管のセンターピンの上を渡していきます。これも、ハンダをたっぷり……。両端は少し長い目に切っておきます。これでE板はオシマイ。本体から離して配線していくのですから、実に簡単です。配線の間にハンダゴテの先を突っ込んで、リード線をこがしてしながらの作業と違って、広々とした場所のハンダ作業は誰にでも出来ます。出来上がったら、誤配線がないか確かめて、これもひきだしへ……。(以下次号)

回路図