2021
04.01

6CA7PPパワーアンプの製作 改良編 2

音らかす

出力管プレート電流設定用メーターについて

一部の方々から3、4月号の記事について、ダイナコの特許の事に関する御質問がありましたので、具体的に説明します。ダイナキットは、プレート電流を設定するのに、本機のR20と同じところに13.5Ωの1%抵抗を使って、その電圧をテスタで計るようになっています。13.5Ωにしておけば、テスタが1.56Vを差した時に115mA流れるわけで、1.56Vは新品のバッテリーがこの電圧を持っている事から、どんな安物のテスタでも校正が出来るという事が、特許になっています。従って、本機のメータは全然その特許にはふれません。

シャシ

回路がまとまったところで、製作に入るわけですが、 自作品でいつも問題になるのはシャシです。前回はリードのGT—3に穴あけ加工をしたのですが、前にも書きましたように、アルミの3mmタップ穴があちこちバカ穴になり、裏ぶたを開けるたびにひやひやしながらネジ止めしたのですが、数個所ボルトが止まらなくなってしま(いま)した。その上、スポット熔接のところが、外れてしまい、アラルダイトで接着するなど不愉快な思いをしました。今度の場合は、こんな不愉快な思いをしなくてもすむように、と思って、いろいろな方々に相談しているうちに、大阪の旭鋼器(株)の清水さんが快く引き受けて下ったので、お願いしましたところ、びっくりする程立派なシャシが出来上って来ました。お陰で表紙写真に見られるように、メーカー製アンプ程度に仕上りました。参考までに、そのシャシの図面を第6図に示しておきます。

第6図

半固定抵抗がプリント基板型から、RV型にかわりますので、シャシヘの取り付け金具が必要になってきます。非常に幸いな事に、シャシでお世話になった旭鋼器(株)の清水さんが御協力くださいまして、第7図のような金具を作ってくれるそうです。私は現在手作りの金具を付けていますが、本誌が本屋に出る頃には出来上がってくると思います。従来から、半固定抵抗をシャシに付ける場合には、シャシに直接穴をあけて、軸をシャシの上側に出すか、あるいはサブシャシ又はパネルなどに取り付けていたわけですが、この金具だと真空管ソケット取り付けのボルトを利用して、ぜんぜんスペースを取らないで,簡単に取り付けられる上に、シャフトが垂直になりますので、半固定抵抗を操作するのに、非常に便利です。

 

使用部品について

毎度の事ながら、アンプ屋と呼ばれる類いの方々で、アンプを作る事と、それを測定する事が楽しみで次から次へとアンプをお作りになる方々は別として,オーディオを少しでも良い音で聴き、いつまでもそのアンプを愛用する目的で、お作りになる場合には、特に部品の選択には神経を使って戴きたいものです。これは、メーカー製のアンプより安価で、しかも性能のすぐれているものを作り上げる上で、非常に大切だと思います。

OTLアンプでないパワーアンプでは、その性能の善し悪しは、出力管と、アウトプット・トランスによって決まると言っても過言ではありません。カートリッジが音の入口とすれば、アウトプット・トランスはその出口に当たります。カートリッジの選択には、あれこれ検討するわけですから、アウトプットトランスを選ぶのには、かなり研究をしてからでないと、良くないと思います。カートリッジと違って、簡単に取り換える事が出来ないものだけになおさらのことだと思います。

私はラックスの株も持っていませんし、本機に使用したトランスを無償でいただいたのでもありませんので、OY36-5の良さを、貴重な紙面を借りて、とやかく述べるのは止しますが、武末数馬氏、上杉佳郎氏などの、権威ある記事をお読みになった方々には、何故、私がこのトランスを選んだかが、おわかりになると思います。

チユークコイルは相変わらず5BCを選びました。デザイン的にも同じメーカーのものを並べるのが妥当だと思いますし、使ってみて非常に具合の良い部品です。パワートランスは、同社のA級端子付きシリーズの内から8A60を選びました。両波整流タイプです。倍電圧に比べてフィルタ・コンデンサ等の部品が少くてすみ、配線が楽な上に、ブリッジ整流についで、レギュレーションが良いからです。フィルタ・コンデンサは必ず新品を使って下さい。非常に大切な部品ですので。

ブロックダイヤグラム

抵抗は全部リケノームの精密級(第4帯赤色)で、RM-1/2、RM-1及びRM-2を使いました。普通級(金、又は銀色)でも音質には全然関係ありませんが、ドライパ段のグリッド・バイアスはもちろん、各部の電圧が合わせ易いので便利です。特に、測定器なしでお作りになる方にはお勧めします。両チャンネル合わせて44個しか使いませんので、材料代の差はわずかです。

C2及びC8はマイカコンデンサ。C4とC5はチタンコンデンサの3pFをシリーズに使います。C6とC7のカップリング・コンデンサはオイルチユープラーが良いと思います。MPコンデンサは直流もれが多く、V3、V4のプレート電圧のどちらがもれても、出力管をとばしてしまいますので、注意を要します。

B電源用のダイオードはPIV(逆対電圧)が1500V以上、400m A以上のものなら何でもかまいません。C電源(グリッドバイアス)用のダイオードはPIV 150V以上で、電流は1mAも流れないのですが、市販品は、大体0.5Aが最低のようです。形の小さいものの方が取り付けが楽です。出力管の電流監視メータは特議品ですが、神戸の星電パーツが在庫しているそうです。

参考までに第1表に,その使用部品の一覧表をのせて置きます。

部品表

三結、ウルトラリニア切り換え、及びスピーカ・ターミナル、インピーダンス切り換え用のスイッチには、ラックスの2431A及び2432Aを使いました。第8図のように、不用のラグピンを取り外して置いた方が邪魔にならず、誤配線を防ぎます。3人ばかりお作りになるのをお手伝いしましたが、ここの所の誤配線があったようです。テストスピーカをつないで、アンプに灯を入れた大きな発振者が出ましたので、念のために申し添えておきます。

このスイッチは両方とも6接点ありますので、それぞれ2接点、3接点にして使用しなければなりません。方法は第8図の矢印の角穴を少しひろげて、3mmφ×6mmのボルトとナットを取り付けて任意のところで止まるようにします。ラグピンの側に穴を開けられるパンチ打ってありすますが、この穴を利用すると、2段のスイッチではウェーファー同志(同士?)がショートしてうまくありません。

組み立て及び配線

実体図(第9図)を参考に, ソケットなどの軽くて、かさばらないものを全部ボルト止めして行きます。つまり、アウトプット・トランス、チョークコイル及びパワートランス以外は全部取り付けてしまうわけです。

実体配線図

そこで配線にかかります。配線に使用するビニール線の良いのがなかなか見付かりません。シャシ内の配線はほとんどの場合単線を使うべきで、安物の撚り(原文は、「糸」偏に「差」。パソコンでは出て来ません)線だとうまく行きません。前にも書きましたように、メーカー製のアンプやテレビなどは全部単線を使っております。あちこち探しまわっているうちに、アメリカ向け輸出用の、U.L.規格のWGA-22の線をメーカーに頼んで入手する事が出来ました。芯線の太さは0.65mm。ビニール被覆も非常に良い材料が使ってあります。色も10色。表紙のように綺麗に配線出来ます。

他にも必要な方々がありましたので、まとめて、入手しました。御希望の方には取りついで差し上げたいと思います。郵送の便宜上、各色2メートルづつをひと東にしたものが¥250(〒65)になります。御希望の方々にはお分けします。同規格の撚り(同前)線も同じく10色で、¥300(〒65)になります。

あまり数が多くなると、星電パーツにバトンタッチをするかもも知れませんが、同じ趣味を持つ仲間の方々のお役に立てば幸いです。

参考までに、第2表にその規格を載せておきます。

まず、C電源を全部済ませてしまいます。C14とC15の極性を間違えて取り付けた方がいました。スイッチを入れて、わずか2分位で、コンデンサがさわれない位熱くなりました。幸い、私が側にいたものですから、蒸早くスッチを切ったので事なきを得ましたが、 もう少しで爆発するところでした。気を付けましょう。次にヒータ線を、実体図のように撚り(同前)合わせて配線して行きます。パワーアンプですのでハムの出る心配はまずありませんが、各真空管のグリッドにはあまり近づけない方が良いのは,申すまでもありません。

次が初段管、という風に各プロックに分けて配線して行くと誤配線がありません。カップリング・コンデンサC6、 C7は配線してしまいます。実体図の通り、OY36-5を使って組み上げれば、正帰還によるギャーッと言う発振はしません。位相補正用コンデンサC2、C4、C5及びC8は、回路図の数値のものを配線してしまって良いと思います。測定器を使って、オシロスコープを眺めながらつけて行くのも面白い事ですが、どぅせこの通りの数値に落ちつくはずですから。測定器のそろってない方も、自信を持っていただけると思います。もし、この通りに配線して、位相補正が不足になるような事がありましたら、筆者が責任を持ちます。

出力管とアウトプツトトランスの間が少々立て込みますが、ヒースキットで良く使ってあるハーネス(Harness)法とでも呼べる方法を使うと、非常にうまく行きます。

つまり、ただ闇雲に配線して行かないで、第10図のように、ときどきシャシに当てがいながら、色の違ったビニール線の東を作って置いて、そのハーネスをシャシの上に置いて、実体図のようにハンダづけして行くわけです。こうすれば誰がやっても、かなり綺麗に仕上ります。色数が多い程誤配線が防げる上に、後でチエックが容易です。束ねるためのハルサメと呼ばれるビニールの細いヒモは、秋葉原の愛三電機で見付けました。残念ながら200メートル巻きですので、死ぬまでなくなない位が最少単位です。せめて10メートル位だと良いのですが。もし希望される方が多ければ、星電パーツに取りつがせても良いと思っています。

10図

切り換えスイツチは, シヤシに取付ける以前に配線しなければ、やりにくいと思います。これもハーネス法がよろしい。あるいは私が不器用なのかも知れません。

ア~スポイントは、パワートランスの側に一ヶ所。三結、UL切り換えスイッチの裏で一ヶ所だけですので、他のところには絶対にアースしないように。ハムが出るかも知れません。そのかわり、入力ピンをシャシに取り付ける時には、ファイバーパッキングを使って、シヤシから電気的に浮かさなければ、ここで2点アースになりますからハムの原因になります。あるいは、この点をアースポィントにすれば良いと思います。そのかわり, この場合はスピーカ・ターミナル(空軍端子)のマイナス側から、アースポイントまでのアース線は、30芯以上の撚り(同前)線を使って下さい。つまらない事でハムを出したのでは、せっかくの努力が水の泡。そこでトランス類を取り付けて、結線すれば出来上りです。