2021
04.15

オーディオリスナーのための高性能プリメインアンプ プリアンプ部調整編 1

音らかす

第2回では、シャシの組み立て、プリント基板の製作、そして、使用部品の注意などを、述べました。そして、プリアンプ製作上のポイントなどについても述べておきました。今回は、プリアンプの調整と測定結果、そして、キャビネットの製作です。なお、回路説明については、 3月号(第1回)を参照して下さい。

プリアンプですので、調整は全く不用です。イコライザ・カーブなどは、指定の部品を使ってある限り、 ドンピシャリ合うようになっています。

だから、調整と言うより、むしろうまく行っているか、 どうかを点検します。

誤配線があっても、石が飛ぶ事はまずありませんので、思い切ってスイッチを入れて下さい。電源部基板の出口のところとアース間に、62V出る筈です。家庭電源の変動は5~10%以内の筈ですので、62Vが10%以上違ってたら、誤配線か、貴方のテスタがオンボロです。次に、イコライザ段の電源入力部を測ります。両チャンネル共44V出たら、メデタシ、メデタシ、 うまく行っている証拠です。もうパワーアンプに継いで使用しても、良い結果が出て来ると思います。

星電パーツで揃えさせた各トランジスタは、プロック毎に4個、 2個、 4個ともhfeが揃っていますが、それぞれグループ毎にhfeの大小があるのは当然です。従って001及び010へ流れる電流は、部品セットによっていくらかづつ違っていると思います。少々の違いは問題ありませんが、 もし大きく違っていたら、 R-305(3.9kΩ)を取り換える必要があります(43~46Vの場合はOK)。 もし41Vと出たら、電源部の出日のところの62Vから41Vの差、つまり21Vだけ3.9kΩにより電圧降下が起った事になります。E=I・Rの公式に当てはめると、 I=E/Rになり、その時の電流は5.4mAですので、ここを44Vに戻すためには、上の計算式により、3.9kΩを小さくしてやれば、電圧降下が少くなり、44Vに戻す事が出来ます。

各トランジスタの電圧は、インピーダンス1lMΩのソリッドステートボルトメータ(ヒースキツトIM-25)で測ったものですので、内部抵抗の低いテスタでは違って出ると思います。特にQ1aとQ3aのベースは、内部抵抗の低いテスタで測ると、測定している間にテスタの針が上がって行きますので、測る事が出来ません。特性の揃ってない石を使うと、大分違って出ます。だから、回路図の電圧値と少々ずれていてもあまり気にする事はありません。先程の62V、44 Vさえ正確に出ていれば、本機の持つ優れた特性は約束されています。

もし、先の62 V、44 Vが非常に高く(といっても72V以上にはなりませんが)出たら、どこかのハンダ付け不良です。各段の出日の石のエミッタの電圧を見て下さい。どれかが0Vの筈です。

そのプリント基板だけを外して点検します。42Vより低く出たらショートです。すぐに電源を切って、一つ一つ当たる以外に方法はありません。

こんなトラブルを未然に防ぐのに良い方法があります。第18図のように、9Vバッテリー用ソケットにワニ口を付けたものを用意します。アースの方を少し長くしておかないと、ワニ口同志(同士)がショートして、すぐにバッテリーを駄目にしてしまいます。このバッテリーを、ワニ口で、各プリント基板のアースと各チャンネルの電源入力のハト止ラグに継ぎ、Q1b、Q2及びQ3bのコレクタ電圧を測ります。

本機の電源は62Vで、テスト用のバッテリーが9Vですから、もちろん各石の電圧は回路図より低く出ます。Q1b、Q2及びQ3bのコレクタに9V出たら、どれかの部品がテンプラハンダで、コレクタ電流が流れていない証拠です。特に基板のハトメは箔へのハンダ付けを忘れ勝ちです。機械でハト止をしめつけても、電流が流れない事が良くありますので、注意を要します。

9Vより低くなっていればコレクタ電流が流れている証拠ですので、エミッタにも電圧が出ている筈です。これで80%程の誤配線と部品の不良によるトラブルは、未然に防げたわけです。うまくない時は、プリント基板のハト止、ハト止ラグなどを、箔ヘハンダ付けするのを忘れていないか、 どうかもう一度確かめて見ます。トーンコントロールのボリューム用ハト止も、必ず少量のハンダで基板の銅箔に止めておいて下さい。私もここで一度失敗しました。

これでテストは全部終了です。もう音を出して下さい。トーンコントロールの入口のアッテネータは、ON・OFFの時に音量が変らないところでセットします。終段のNFB用半固定抵抗(VR-9)は、メインボリュームを中点に置いた時に丁度良い大きさになるところにセットします。ラジオの調整などに使う絶縁ドライバを使うとショートする心配がありません。

このテストは、まずレコードを使って行い、それに合わせてチューナ、テープデッキ等は、それぞれの入口アッテネータをシャシの裏からドライバでセットします。セットしたら、その上にテープ等を張り付けて置くと、不用意にまわす事がありません。電流を入れて約1秒程して、2、3秒ハムが出て、すぐ止ります。これは、石に電流:が流れ始めてバランスが取れるまでだけですので、本機のように電圧が高いものでは仕方のない事です。

2図

測定結果

試作品を含めて、私のが2台、希望者のお手伝いをして出来上がったのが3台、それぞれ測定して見たところ大体同じように良い線を行ってました。

第2表がそのイコライザカーブ実測値です。こんなに合っているとグラフにしたのでは、その誤差は表わせません。その上、使用したミリバル(トリオVT-106)の誤差が0.5dB位ありますので、満点と言えると思います。

      第2表

高調波歪は、全段をヒースキットIM-58で測って出力0.5~l Vの時1000Hzで0.08%と出ました。ジュネレータIG-18からアンプを通さずに直接測った時と殆ど同じですので、プリアンプ自体の歪率は非常に少ないと思います。数十万円の歪率計を使えばもっと少なく出る筈です。ただしこれは、トーンコントロールをバイパスした時の話で、入れるといっぺんに針が振れます。その歪率は5.2%。トーンコントロールはやはり有害なものだと思います。

混変調(IM)歪も、ヒースキットIM-48を使用して、フラットアンプを計りましたら(イコライザのIM歪はIM歪用のレコードが手元になく測れませんので)、トーンコントロールバイパス時0.06%、入れると6.4%。

プリアンプのSN比は一寸簡単に測れません。ヒアリングによるテストは前に述べました。ハムもヒスもゼロと言って良いと思います。

これ等測定器によるテストは、あくまでもアンプの電気的特性を見るだけで、そのアンプから出て来る音については、何も語ってくれません。結局はヒアリングによる事になります。

前にも述べましたように、切り換えスイッチによるテストでは、いろいろな方の耳にかなり良い線が出たようです。

自分で評価したのでは、管球式に比べていくらかキメが細かいせいか、各楽器がそれぞれ浮び上がって来るようです。これも好みがあって、あまリクリアーな音より、多少ぽけた方が音楽性があると言う意見もあります。その辺がオーデイオの摩詞不思議なところ

ですが、カートリッジ、スピーカもいろいろなものでテストした結果、市販品に比べて、本機に要した費用の数倍のアンプよりは良いと思ったのは、私の自惚れか、友人等の御世辞もあるかも知れません。

上京した折にこのアンプを編集部に一週間程、預けて来ましたので、興味のある方は直接お尋ね下さい。