2021
05.25

ステレオ装置の合理的なまとめ方 その4 グレードアップのための測定器の巻 1

音らかす

テープデッキ(続き)

ワンモータ方式のテープデッキの場合は、比較的この問題が少ないようであるが、3モータ機では、不注意に取り扱うとテープを “わかめ” にしたり、ひどい時には切ってしまう事がある。テープを早送り、または巻き戻しの状態で、リールがものすごい早さで回っている時に、ストップをかけるか、電源をOFFにすると、バチツと音がし見事にテープが伸びたり、引きちぎれるものである。試みに、ティアックの4010Sで実験して見たら、 3回のうち2回はBASFのテープDP-26が約5mm位伸びてしまい、1回は切れてしまった。同じテープを使ってA2300Sで実験してみたら、全然異常なし。

3モータ・テープデッキでは、いったん逆転ボタンを押して、ストップをかけるのが常識のようになっているが切れたり、伸びたりしない方が良いにきまっている。上記のテストで、3回共伸びたり切れたりするという事は、逆転でブレーキをかける習慣にしていても、少しづつは伸びて行ってるわけで、古くなったテープが、リールにきっちり巻かれる状態で、断面が乱れているのは、わかめになっている証拠だ。

テストは、比較的簡単で、薄手(7号リールで、片道1時間もの)またはそれと同等品のテープの中央附近に3ケ所ばかり、正確に1mおきに、スプライシングテープを第7図のように貼りつけたものを、リールに巻き取って白く見えるスプライサーのところで、ストップかける。ガチャと音がして止まる。

第7図

そこでテープを取り出して、もう一度測る。これで5mm以上伸びていたら赤信号。切れたらペケ。すごいスピードで回っているリールの上の印のところで、 ドンピシャリ止めるのは割合むづかしいが、二、三度試してみると、必ず一度は、スプライサーの間で止まるものだ。各メーカー共、このあたりの品質向上が目立って来たようであるが、中には、テストをするたびに切れるデッキもあるようだ。

こういうテストは、一現の客だと不可能である。従って、出来る事なら、行きつけの店を作っておく事だ。どこそこの店がいくら安い、と言う事で、普段行った事のない店へ出かけてみたり、秋葉原の店を何軒も、何軒も値段を調べてまわって、一番安い店で買った、 と自慢する人がある。こんな連中に限って音楽雑誌を片っぱしから読む。曰く、何とか作戦、誰それによるヒアリングテスト、ブラインドホールドテスト。

何時も驚くのだが、オーディオマニアと自負しておられる方々は、よっぽど記憶力が良いとみえて、メーカー製コンポーネントの型番を、びっくりする位沢山覚えていらっしゃる。これ等の雑誌を一切読まない事にしている私なんぞ、何処そこの何番のプリメインアンプと何やらと、どちらが良いか、と尋ねられても、残念ながら、お答えは出来ない。不勉強で申し分けないがアンプなどの音質を、点数をつけて比べるなんて事は、どうしても興味が持てないからだ。

最近やっと、ティアックのダイレクトドラィブ・テープデッキ(A-5300)が市販されたので、さっそく4010Sを処分して取り換ぇた。4010Sより、10年ばかり後になって開発されたものだけに、テープ走行、早送り、巻き戻し等については、はるかに良くなっているようである。機械音についてはフォノモータの時と違って、テープデッキのダイレクトドライブは、非常に有難い発明で、殆んど気にならない程静かになっているようである。どういうわけかA-5300のみならず、市販品の直軸モータの場合、テープが巻き終ってもリールモータは止まるようであるが、キャプスタンモータが、回りっぱなしである。従来のように、スイッチを切り忘れても、アンプのトランジスタ回路にのみわずかな電流が流れるだけであったが、最近のように、キャプスタンモータが、いつまでも回りっぱなしなのは、電気洗濯機、電子レンジやクッキングテーブルのように、家庭用品であれば、生活科学センター等の協力で通産省がのり出し、販売停止処分が行なわれるようであろうが、テープデッキのように、一部のマニア、つまり、きちがいを喜ばせるようなモータの立ち上がり等の理由で、モータが夜通し回っていようが、一向に気にならないメーカーの設計者の常識を伺いたい。

電力節約の折りから、一日も早く、こんな不合理な設計は改良して欲しいものである。

DX370Dは、電源シャットオフスイッチを入れておくと、テープが巻き終った時に、自動的に電源とも切れてしまうようになっている。行きとどいた配置である。

ひと頃、仲間に誘われて、アンプの切り換えテストに立ち会った事が度々あるが、鳴き比べなんてものは、友達同志のおつきあいの楽しみのひとつで安物か、自作の(本物は百万円位かかる)切り換えスイッチを使って、その音の違いを聞きわけてみたところで、その音の良し悪しが、立ちどころにわかるわけのものではない。時間をかけて、音楽を楽しみながらじっくりと聴いてみるものである、と私は思う。

ミスユニバースコンテストにしてもあくまでお祭行事の一つで、それ等のコンテストにスポンサーがついている事を考えれば、良い宣伝にはなるだろうが、その結果が、美人の決定的なものというわけでもあるまい。

まして、相手は音である。一瞬の内に出て来ては、消えて行く音の連続が音楽である。カメラのピントテストや美人を見比べるのとわけが違う。テープレコーダに記録して見たとしても、それを再生する時には、やはり、出ては消える音の連続にすぎない。この音はどうだ、と言っても、何の証拠もない話である。

近頃姿を消したようであるが、『流石はマッキンの音』なんて表現が、オーディオ評論家の意見として誌面をにぎわした時代がある。まるで、アンプの中に魔法でも封じこめられてあるみたいな話である。『幻のアンプ』なんて表現にいたっては、物理もへったくれもあったものではない。

ある雑誌で読んだ話であるが、電気も電子工学もご存じないオーディオ評論家が、学術にはしろうとだ、と言われて、『電子工学にはしろうとでも、オーディオではくろうとである』と言ったとか。評論家とは実に不思議な人々である。

あんまり話が横道にそれていたのでは、いつまでたっても、デッキが選べない。

テープデッキの性能のうちで問題になる点の一つが、そのメカニズムの発熱である。もう、かなり以前のであるが、やはり管球式だという事で、タンバーグの64Xに専門に作られた扇風機があった。鳥籠をひっくり返しにしたようなもので、デッキの裏側へ風を送る装置である。それでも、一時間もテープを回せば、かなり熱くなる。何とも原始的な物理学である。音楽を聴くのも楽ではない。

これだけ高度成長をした時代である。国産品にこれ程ひどいデッキはないと思うが、モータ、ソレノイドスイッチ等、デッキの中には発熱の大きいものが、ギッシリと詰め込んである。この発熱は、3モータデッキの方が大きい場合が多い。ひどいのになると、テープをいためる程温度が上がるのがあった。

温度が上がる事は、温度そのものよりも、ファンの音もそれだけ大きくなるので、出来る事なら、温度はあまり上がらないようなものが、今度次々と開発される事を望みたい。

近頃は、一般消費者もうるさくなって来て、生活必需品、食料品、医薬品などは、直接生活に影響があるために厚生省、通産省、大蔵省などの役所は勿論、生活科学センターなどが、各所に設けられるようになって、それぞれの専門家が専門の設備を使って、テストをした結果、欠陥品はそれ相応の処分を行うしくみになっている。昔は暮しの手帖位でしか、商品の良し悪しはあまり発表されなかった事を考えると大いに結構な話しであるが、趣味と道楽ときちがいを相手のオーディオ機器である。JIS基格は勿論ない。

結局は、自分で選ぶより方法がない事になる。その上、先程述べたように消えて行った音は、文字通り、つかみどころがない。カメラのように、はっきり結果がプリントなりスライドとして残るものだと、千葉大学なんかのテストリポートにも物理的裏付けがあるものだが、オーディオ機器にも、それを利用するための性能の中には、物理的に分析出来る点も、かなりあるわけだから、もう良い加減に何処かの大学の工学部なんかで、カメラと同じように物理テストを行って、コマーシャルメッセィジとは無関係なテストレポートを出してもらいたいものだ。他の家庭用電気機器に比べて、かなり割高なだけに、余計そう望みたい。高価なものを持っているからというのが自慢になる一部のマニアのために、私共妥当な出費で少しでも良い音で音楽を楽しみたいと思っている者が巻き添えを食うのも、あまり愉快な事ではない。

オーディオリスナーのための測定器

これから先のテストは、電気的なものであるので、測定器が必要になる。

測定器といっても、私共アマチュアが使用する測定器で、カタログデータを出すためのものではない。オーディオを楽しみながら、その回路を理解し、電気に強くなるための、言ってみれば教材である。勉強が嫌いな人には、これから先の記事は、馬の耳に念仏になるかも知れぬ。測定器には、 ピンからキリまであって、精度の良いものはゼロを一つ間違えたのかと思われる程高価なものもあるが、カタログデータを作るのではなく、回路を理解し、電気に強くなる事によって、合理的に自分の装置をグレードアップするための測定器は、そんなに高価なものではない。一個数万円のカートリッジに比べれば、はるかにコストパフォーマンスは高いものである。例えはまずいが、英会話の勉強のためのカセットテープレコーダを使って、英語に強くなればそのために支払ったポケットマネーも生きてこようというものだ。