2021
07.16

最高級管球式プリアンプの製作 Chriskit MARK Ⅵ Castom 製作編その2

音らかす

プリント基板の取りつけ

このようにして、各基板に部品をつけ終ったら、ボルト、ナット及びスペーサー、菊型ロックワッシャーを使て、シャーシに取りつける。写真4が参考になると思う。

信号基板は、第19図のように、ボル卜を26m/m(中央の2本のみ、シールド板のため28m/m)に切り取って、板につけると、後で何らかの理由で取り外す時に、片チャンネルづつ取れるので便利である。何でもない事のようであるが、トラブルが出て、部品を取り外すのにひと苦労するのを持ち込まれて、何度もウンザリさせられたので、あえて御注意申し上げたい。

第19図

前項で述べた、ボリュームを最小にしぼった時でも、スピーカから音がもれる事の対策について説明する。

C-22の原回路にあったので、イコライザ段の出カコンデンサに、 こんな大きなものは不必要だと思ったのだが0.47μFのオイルコンデンサを使ってある。お気付きのように、かなり図体がでかい。

回路編で述べたように、この大きなコンデンサが、信号出力用アンテナの働きをして、ボリュームを最小にしても、V4グリッドが、バランス用ボリュームの二次側で、250kΩのインピーダンスを持ったまま宙に浮いているので、0.47μFから飛び出した信号がV4のグリッドに飛びつく。幸いこのあたりにコンデンサは使っていないので、位相のずれがなく、通常音楽を聴いている時には、飛びつきがあっても何の支障もないのであるが、ボリュームを最小にしぼってもなおスピーカから音が漏れる。しかも、この音は飛びつきによるためのものであるから、すこぶるきたない音がする。そこで、この音の飛びつきを防ぐために、第20図に示したように、シールド板を立てて、そこからアースをとり、この飛びつきをアースヘ流してしまおうというアイデアである。

第20図

市販品のアンプは一般に、チャンネルセパレーションが悪く、クロストークが多いと述べた。どちらもこの飛びつきが主な原因となって起こる現象である。しかも、その漏れて来る音が、上の事柄で明解なように、すこぶるきたない。だから回路に余計なものをとりつけてある市販品のアンプの音がにごっている、と私は常に述べているわけである。

シールド板をとりつけるのが面倒な場合は、V4につながる線をシールド線にすれば良いのだが、シールド線の容量がグリッドの入カインピーダンスに作用して、高域が落ちるのであまりすすめられない。

何度も申し上げるように、最高級の音を出そうというのである。一夜づけの仕事で良いものが作れるわけはない。

電源基板は、割合い簡単に外す事が出事るので、まず、上側に、ヒータ用基板(1973-9368)を、15m/mのスペーサーと40 m/mのボルトを使って、シャーシに菊型ワッシャーとナットでしっかり止め、下側につき出たボルトにスペーサーを入れてから、電源基板(1973-9369)をナットで止めると、作業が楽である。グロメット(Grommet=ゴムブッシングと呼ばれるゴム輪の事)をはめたそれぞれの穴に、トランスヘ行く線と、真空管基板へ行く線を通しておく。電源トランスは重いので、一番最後につけるが、真空管基板をとりつけたら、先に述べたように、B+、300V、 ヒータ及び2本のアース線をそれぞれのラグ端子ヘハンダづけする。2本のアース線は、B+300Vの分と、ヒータ用の分とを間違えないように。ハムを出す原因を作る事になる

真空管基板の取り付けも、20 m/mのボルトを、 菊形ロックワッシャーとナッ卜を使って、あらかじめ、C板に後面に足を出して植えておき、15 m/mのスペーサーを使って基板を浮かし、その上からもう6個のナットで止めると、非常に簡単にとりつけられる。

ソケットの足のつけ根にハンダづけされた各チャンネル28本のリード線は左右チャンネル二つに分けて、それぞれの信号基板の方へ差し込む事を忘れると、二度手間になるので、念のため。

ここまで出来たら、真空管基板から出ている左右14本づつの線を、信号基板のP.G.K.(プレート、グリッド、カソードの意味)にそれぞれつなぎ、信号基板の入力側にあるアースターミナル(1)に、左右チャンネルとも40 m/m位のアース線(30芯位のビニール線)をとりつけ、後でシャーシのアースポイントに菊型ロックワッシャーを使ってボルト(15 m/m)止めが出来るように、アース端子をハンダづけする

P.G.K.と信号基板とをハンダでつなぐときに、ラグ端子にからげてしまうと、後で何かの都合で、信号基板:をとりはずす必要が生じた時にひと苦労する。先程と同じように、 リード線の先を輪にして、ハンダメッキをかけラグ端子にもハンダを、タップリのせておいて、後から融合する。こうしておけば、ハンダごてを当てるだけで、この結線がすぐはずれるので、便利である。

これで作業の70%位終った仕事になるので、一度このあたりで、誤配線がないかどうかを確かめる。

誤配線のチェック

テスタをオームレンジにして、そのマイナスリード棒の先にわにロクリップをとりつけて、今つないだアース線の先にはさむ。

テスタのプラス側のリード棒を真空管ソケットのピン穴に一つ一つ当てて見て、その時の抵抗値を見る。その時の抵抗値が第3表と違っていたら、明らかに誤配線。今のうちにやり直しておかないと、そのまま組み上げて見ても、何にもならない。絶対にそのアンプはうまく行かない事請け合いである。つまりV1のグリッドには47kΩのグリッドリークが、V1ヵソードは1.8kΩ+2.2kΩ=4kΩ、V4のカソードには3.9kΩのカソード抵抗と言った具合いになっていれば、配線及び部品の配置が正しいというわけである。

第3表

真空管ソケットは、リード線側から見て、時計まわりに第3表の左の図のように①と⑥がプレートという風に区別する(「。」がぬけている)真空管を差し込む方から見れば反時計まはりに勘定するのは当り前の話。

この時はまだ真空管基板のアースポイントはシャ―シの一点アースポイン卜へはとりつけを行なってはならない。真空管基板の誤配線がないかどうかを今のうちに確かめなければならないからである。テストの方法は、電源部とのつぎ目(R-30とR-31の間)と真空管ソケットのプレート(①及び⑥ピン)との抵抗値をしらべ、V1のプレートには300kΩ(R-4)+5.lkΩ(R-25)+3k ΩR-26)+1kΩ(R-27)+1kΩ(R-28)+1kΩ(R-29)+560Ω(R-30)=311.66kΩ(6桁表示のディジタル計でもないかぎり、テスタではこんなに細かく出ないが、300kΩプラスアルファーと考えれば良い)と出ないで、無限大になったら、上のどれかがハンダづけ不良である。同じようにしてV2以下V6まで、回路図と照らし合わせて、調べて見る。V3のプレートヘは、R-31(560Ω)を経て、300Vの出口からプリント基板でつながっているので、テスタの読みは560Ωになる事に注意されたい。こうする事によって、回路図と実際の配線との関係がわかるので、回路の理解が出来、一石二鳥。これ等のテストは、何度も述べるように、回路図のコピーを作って、それに色鉛筆でたどりながら行なう事をおすすめする。その習慣がつかないかぎり、アンプの動作原理は全然のみ込めないものである。楽譜を見ないでギターを弾いていれば、いつまで経っても「禁じられた遊び」しか弾けない事になる。大体、ものを作るのにその原理も考えないで、形だけを真似していたのでは、良いものは出来ないものだ。

話は横道にそれるが、今を去る5年前、趣味で、 クラシックギターを作った事がある。ヨーロッパヘ出かけた時に買ってきたホセ・ラミレス・エストゥディォ(Jose Rimirez  Estudio)をもう一台欲しかったが、輸入品だから日本で買うと¥200,000以上する。手工ギターであり、人間が作ったものであるとすれば、私にも出来ない事はない、と考えたからである。文献を調べたり、ギター工場を見学に行ったりしたものだ。材料になる板は、名古屋へ行かなければ、材木屋がないと聞き、一日会社をさぼって買いに出かけた。その時に、もしラミレスの形だけをそっくり真似ただけだとしたら、今手元に残っている自家用と、もう一台(全部で4台作ったので)が芸大のマンドリンクラブの学生に進呈して今だに演奏会で使ってもらえるような楽器は出来なかったに違いないと思っている。要するに、原理をのみ込み、細心の注意を払わなければ、良いものは出来ないものである。写真6がそのうちの一台である。

ここまでの組み立てとテストが終ったところで、真空管基板のアースポイントからのアースライン(30芯線)の先にアース用ターミナルをハンダづけする。これでアースターミナルは三本になったわけで、シャーシの上側には信号基板のチャンネルIのアースライン(30芯)と、真空管基板からのアース端子(30芯)の2本、下側には、信号基板のチャンネルⅡと、それにもう一本の、後面パネルにつなぐプレーヤーのアース結線用のアースライン(単線で良い)の二本のアース端子を串ざしにして、10 m/mのボルトと上下各一枚の菊形ロックワッシャーとナット(「で」が抜けている)がっちりと止める。この一点アースポイントは、ノイズの点のみならず、回路構成の点でも非常に大切なので、しっかりと止める事が肝要である。次に出力用コンデンサ切り換えの部品の配線にかかる

第21図に、その配線の要領を示してある。回路図と見くらべて、そのつなぎ方を考える。0.047μF+0.22μF=0.267μFの方が、パワーアンプの入力インピーダンス47k Ωに合わせた、フラットな出力用で、0.047μFだけの方がローブースト時の、低域をカットするための物である。これを後面パネルにあるスイッチ(S-6)をつなぐとき下げたときに0.267μFになり、上げたときに0。047μFになるように結線しておくと、後で操作するときにわかり易いと思う。

第21図

この部分のアセンブリー(Assembly)が出来上がったら、信号基板からのリード線とつなぎ図に示したようにスイッチヘ行く線は、適当な長さに切り取り、ブロメット(Grommet)をとりつけたシャーシの穴に通して後側に出しておく。

次にフロントパネル部の配線であるが、 ここからの作業は次号へまわす。

実体図1

実体図2

 

なお、1974年6月号の原稿が手元にないため、MARK Ⅵ Customの製作記事はここまででです。
また、この号の見出しの「Castom」には鉛筆で修正が入っており、「a」が「u」に直されています。桝谷さんが事後にスペルの間違いに気が付いたのでしょう。

以上、電波技術 1974年5月号