2021
08.23

オーディオ用ひずみ率計は自作出来るか? 2

音らかす

IMひずみ率計は自作できるか

かりに、Harthkitを参考にして、上記のような考え方で、簡易型を自作する場合には、精密級抵抗はなくても、何とか用をたせるわけですが、FunctionスイッチとTestスイッチは、そのものずばりのロータリー・スイッチでは特注しなければ、手に入りませんので工夫をしなければなりません。

ちょっと、無責任な話ですが、私の場合キットから作りましたので、スイッチについては、あまり詳しく調べていませんが、全回路図ではわかりにくいようでも、プロックダイヤグラムにその切り換え具合が示してありますので、時間をかけて調べれば何とかなりそうな気がします。

メータまわりのクリスタル・ダイオードは、IN60などが使用できますしそのそばのB10kΩの半固定抵抗は、メータのリニアリティを得るための、クリスタル・ダイオードの特性の不揃いを直すために入れてあるのですから簡易型では不用でしょう。

メータはフルスケールで0.1VのACボルトメー夕(200μA)で良いと思います。キットに使われているメータは0.01Vのものが付いていますが、市販品ではかなり高価ですし、簡易型ではバルボルの部分は省くわけですから、 これで間に合うと思います。

アンプの出カインピーダンスをとるための4つ抵抗(Load Selectorの16Ω、 8Ω、 4Ω、638Ω)は、巻線抵抗で24W以上でなければいけません。

フィルタ回路にある2つのチョークコイルは、ちょっと問題だと思います。5Hと10Hですが、小型のものが市販品にあるか、どうか知りませんがこの辺は読者の方々のほうが良くご存じだと思います。参考までに、実体図を第2図に示しておきました。部品の選定やその配置の参考になれば幸いです。

第2図

部品で、もう一つ気になるのは、発振コイルです。全回路図でおわかりのように、 6C4の右側にあり、この球の回路から約6000Hzの信号が取り出せれば良いのですが、これは短波ラジオの製作経験者には、わけなくできるでしょう。

その他、電源トランスは問題なし、となると、部品のほうは何んとか揃いそうです。

キットの場合でもそうですが、製作マニュアルに非常に詳しく書いてあるように、配線の具合によって、となりの配線と干渉を起したりしないように気を付けないと、ひずみ率計にひずみがあったのでは、なんにもなりません。このあたりが、キットを使わないで自作する時に、一番むづかしいところだと思います。誘導ハムが一番くせものです。

12AX 7後半のグリッドにあるB50kΩの半固定抵抗は、IM%指示値補正用ですが、簡易型では、部品の関係で、正確な数値を読むことができませんので、大体の目安になる補正法があります。

補正法について考えるためには、IMひずみ率計の動作原理について、知る必要があります。本項でお読みなって、本体のことはおわかりになったと思いますが、本機は米国のSMPE(Society of Motion Picture Engineers)の規格にもとずいて設計されたもので、この方法は、ちょうどAMラジオの電波と同じように、約6000Hzの高周波を50/60Hzの波形の上に乗せた信号(第9図参照)をIM分析回路に入れると、 高周波分が増幅され、 50/60Hz以外の低周波を全部アースに落してしまいます。

そんな風に分析された高周波分のみをさらに検波し、ローパス・フィルタを通して、そのなかに含まれている残留高周波を完全に取り除きます。

このようにしても、なお除き切れない信号がIMひずみですので、その分量を%で計れば、 IMひずみ率が%で指示されるわけです。

それでは、この方法にもとづいて、調整する実際のやり方を説明してみましょう。

まず、

◎TESTスィッチをHF、TEST

◎Functionスィッチを%IM

◎Rangeスィッチを10%IM

◎Loadスィッチをハイインピーダンスにまわしておきます。

そこで、混合波形の出力を取り出すわけですが、ボリューム2個を使って高周波と低周波の両方を少量づつ出力側に導きます。この出力の大きさは大体で良く、とにかく両波がまざったものが取り出せるようにすればよいわけです。

次に出力ターミナルのホット側と、入力ターミナルのホット側をリード線で短絡させます。それから50/60Hzの出力を6C4のカソード(実体図ではソケットDのP7)に加えるために、LFバインディング・ポスト(回路図のパワートランスからTestスイッチにつながる線上にある)に、リード線を使って、ソケットDのに(「に」は不要)7P(「に」が不足)つなぎます。

ここで、また一つ簡易型を作るのに問題がありますが、以上のような結線により、 6C4のカソードヘ約6.4%モジュレートされた信号が加わるわけですが、メータにキットに使ってあるような目盛りを入れるのが、うまく行かないかも知れません。メータの目盛を自作できる方は、第5図または第11図を参考にして下さい。

第11図

Function スィッチと Range スイッチの両方をSet Levelに合わせて、そのときのメータの読みが10%スケールで6.4%になるように、IM調整用半固定抵抗(B50kΩ)をまわしてセットすれば、 IMひずみ率計の調整はおわります。

この簡易法による調整で得られる精度は、IMひずみ率%指示の10%、つまり、ひず(「み」が抜けている)率の指示が0.2%であれば0.19~0.21%の許容誤差です。

本器の使用は割合簡単で、第7図のように、アンプとつなぎます。アンプの出力側と、ひずみ率計とのアース側が浮いていますが、これはひずみ率の内部で出力側と入力側のアースが共通になっているためで、アンプの出力側アースをひずみ率計の入力側アースにつなぐ必要がないからです。

本来ならば、上記の接続でそのアンプの各周波数における出力電圧、あるいは各負荷時のワット、または残留ノイズレベルなどが読みとれるわけですが、精密級抵抗が入手不可能ですので大体の目安になるIMひずみ率を読み取ることしかできません。

これは、あくまで最初に述べましたように、DCバランス、グリッド・パイアス、プレート電圧などの最適値を求めるのに、簡易型ひずみ率計が、市販パーツで自作できないだろうか、 という考え方を示したものです。自作を試みる方々にIMひずみ率計の原理とその構造などを、理解していただく参考になれば幸いだと思います。

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以上、出所不明