2021
12.15

トヨタ自動車がEVに力を入れるのだそうだ。驚いた!

らかす日誌

トヨタさん、あんたもか!

今朝の報道によると、あのトヨタ自動車が電気自動車に力を入れるのだそうだ。2030年には350万台の電気自動車を作るとらしい。

ちょいと待て。あのベンツが、日本では本田技研が、生産車のすべてを電気自動車にすると宣言し、欧州から始まったエンジンをなくしましょうという動きがが世界的潮流となる中で、トヨタ自動車はこれまで、車の電動化には慎重だった。おかげで

「世界で初めてハイブリッド車のプリウスを世に出し、環境保全にいち早く取り組んだトヨタが何故?」

といぶかられたり、

「トヨタは今や反動勢力だ」

と批判されたり、ここ数年は茨の道を歩いてきた。

いや、それだけなら、

「ああ、トヨタさんも君子豹変す、を学んだのね」

と冷ややかに見ていれば済む。だが、それだけで済ませていいのか?

私はトヨタの車に乗る気はない。あの乗り味は、シートのできは、全くその気にさせてくれない。
だが、トヨタの「反電動車」姿勢を私は評価してきた。

まず、電動車、ここからは面倒くさいのでEVと書くが、そのEVはどう考えても使いものにならない。最近はフル充電で400㎞、500㎞走るという車種も出て来たが、それはエアコンを使わず、ライトを使わず、車載の電池はすべて走ることだけに使うという条件の下での走行距離である。現実にはエアコンは年中入れっぱなしだろうし、夜になれば前照灯を灯し、雨が降ればワイパーも動かす。退屈だからカーステレオもつけっぱなしである。そんな乗り方をすればカタログの半分の距離で車載電池は充電を求めてくるだろう。急速充電で30分。それに、長距離は知るEVは積載電池の数が多いのでべらぼうに高い。
エンジンのある車とEVを持ち、近場に出かける時はEV、遠くに出るのならエンジン車と使い分ければいいだろうが、そもそもエンジン車が1台あればどちらにも使えるのに、なにゆえに2台の車を所有しなければならないのか?

そう思う私はトヨタ自動車の姿勢を大いに評価してた。だから、生産台数の3割以上をEVにするという突然の宣言には、裏切られた気分がする。

それに、である。
ご存知の方もあると思うが、今発売中の文藝春秋1月号にトヨタ自動車の豊田章男社長が登場し、

「完全EV化が正解ではない」

として、トヨタ自動車がEVに慎重な理由を述べているのである。
以下、部分的に引用する。

自動車が位置するのは「使う」セクションなので、ガソリンを使わないEVに置き換えれば、二酸化炭素の排出はなくなる。ところが、EVで使用する蓄電池の生産には多くの電力が必要であり、その電力が火力発電由来の場合、生産時にかなりの二酸化炭素を排出する。日本は火力発電の割合が75%と非常に高いため、自動車の電動化だけでは二酸化炭素の排出削減につながりません。
また、国内の全乗用車をEV化した場合の必要な電力量を試算したところ、電力ピーク時での発電能力でもまかなえず、原子力発電なら十基、火力発電なら二十基の増設が必要になるのです。

自動車を完全EV化することになれば、クリーンな電力の量が少なく、コストも高い日本での生産は難しく、必然的に海外に生産拠点を移すことになる。そうなると国内の自動車産業に従事する五百五十万人の雇用の多くが、一気に失われかねない。ひいては日本の自動車産業の存続危機につながることを危惧しています。

EVにかんするトヨタの考え方はこれまで愚直に発信してきましたが、これがなかなか世の中に上手く伝わらないんですよ。発信の手段も含め、検討を重ねています。

ここでの章男氏の発言は実にまともだと思う。その通りだ! 諸手を挙げて応援に駆けつけたいほどである。

「EUがEVに舵を切っているのに、日本の自動車メーカーは何をしている? トヨタは反動勢力になるのか?」

などと書き散らすメディアの記者どもは、章男氏ほどデータを集め、脱炭素社会をどうしたら構築できるかを考え抜いたことがあるのだろうか?

と書くほど、章男氏の発言に納得した私だから、今朝報じられた

「トヨタ、350万台のEV生産へ」

という記事に裏切られた思いがするのである。

「えっ、文藝春秋1月号は10日発売だぞ。今日はまだ14日。たったこれだけの間に、トヨタで何が起きた? 文藝春秋の記事を切っ掛けに、社内でクーデターでも起きたのか」

何でも資本市場では、

「EVに力を入れます」

と宣言しないと株価が下がるのだそうである。だから、本音では豊田章男氏と同じように考える自動車会社経営者は多いのに、自分に嘘をついてEV推進発言をせざるを得ないのだとか。これは、愛読雑誌「マガジンX」で得た知識である。
だから、章男氏の発言に目を丸くした社内官僚がクーデターを起こしても不思議ではないと思うのだが。

にしても、だ。
二酸化炭素の排出量を減らすには、すべてのものの生産から使用、廃棄までを含めて取り組まねばならないのは常識だと私は思っている。それなのに、自動車に関する限り、誰も「生産」「廃棄」という過程を考えず、目先の「使用」だけで断定してしまう怠惰なマスメディアには

「ノータリン!」

と罵声を浴びせてやりたい。

さて、ここまで書いてきて、ふと思った。

トヨタは変節したのか? それとも思うところあっての表面的変節なのか?

そう考える私は、トヨタに甘すぎるのかも知れない。
いずれにしても、私はEV反対を貫く頑固オヤジである。EVになんか絶対乗らないぞ!
ま、万が一EVが主流になるとしても、私はもういなくなっているわな、という安心感に支えられての頑固さではあるが。