2021
12.15

商品券に拘ったのは、そんなつまらない、意味のない理由だったのかと驚いた私であった。

らかす日誌

18歳以下の子供1人あたり10万円を支給する。令和3年度 子育て世帯への臨時特別給付金というのだそうだ。
実施されてもすでに子供全員が40歳を超えてしまった我が家には全く益のない話なので、これまで全く関心を持たなかった。あえていえば、金で票を買おうという、政府によるバラマキがまた行われるのか、程度の認識を持っていただけである。だから、テレビのニューにも耳を傾けず、新聞の記事も見だし程度しか見なかった。

ただ、1つだけ意味の分からないことがあった。支給する10万円のうち、5万円は現金で、残り5万円は商品券で、という政府の方針である。もらう人からすれば、商品券より現金の方がありがたいに決まっている。それに、商品券を配るとなれば、まず印刷をしなければならない。紙代、インク代、配送料、それに当然人件費も必要なになる。そんな無駄金を使ってまで、何故商品券に拘るのか?

今朝の新聞を読んで(いつもはながめる記事がほとんどなので、あえて「読んで」と書いた)、その理由がのみ込めた。商品券なら全部が消費に回り、景気刺激効果があるが、現金だと貯金する人が現れて景気を刺激しない、というのである。

あれまあ、今の政府の算数能力はその程度のものか、と唖然とした。

考えて見て欲しい。何でも、4人家族の場合、受給できるのは年収960万円以下だというから、この年収960万円が支出と収入がちょうど釣り合っているとしよう。18歳以下の子供の数は2人だとする。そうすれば、受給者は次の3つに別けられる。

①年収が960万円に達していない。つまり、収入より支出の方が多く、家計は毎年赤字である。
②年収が940万円の家庭。毎年20万円の赤字である。
③年収が940万円〜960万円の家庭。

①に属する人達は、いつもお金が足りないのだから、10万円の臨時収入があればすべて支出に回さざるを得ない。支給を現金にしようが商品券にしようが、この構造に変化はないはずである。支給される10万円(子供2人だから20万円か)はすべて消費に回る。

②は20万円支給されてやっと収入と支出が釣り合う。だから、これらの家庭でも、給付金はすべて消費に回る。

給付金が貯蓄に回る恐れがあるのは③のみである。年収が941万円なら20万円受け取って1万円だけ残る。年収960万円なら20万円がすべて残る。貯蓄に回る恐れがあるのは、だから③だけなのだ。だが、貯蓄に回る額は、それほど目くじらを立てねばならない程多いのか?
商品券発行には960億円かかるといわれる。それほど多額の金を使って防がねばならないほどの金額に上るのか? それとも、商品券を作ることに国が960億円支出することも、景気刺激効果があるとでも考えたか?

いや、反論はあるだろう。日本の世帯収入の中央値は年収約440万円である。つまり、その程度の収入で暮らしている世帯がかなりあるということだ。だから、

「年収440万円以上の世帯では、現金支給がそのまま貯蓄に回る恐れが大きいではないか」

という理屈も成り立つからである。

しかし、だ、お立ち会い。だったら、それらの世帯は生活が成り立っているのだから、そもそも給付金を与える必要はないはずだ。それこそ、究極の

バ・ラ・マ・キ

ではないのか?
そう主張するのなら、支給の年収基準をもっと引き下げるべきだったのではないか?

私が中学に入った頃、我が家は生活保護を受けた。だから、生活困窮世帯にとって公的な支援金が得られるありがたさは、誰よりも理解しているつもりである。
しかし、なのだ。公的扶助で暮らしを成り立たせると、人として持ち続けたい自尊心、矜持、何といってもいいが、誇りのようなものが失われるのも事実である。我が家は母が働きに出て、確か1年か2年で生活保護から抜け出した。私が今、このようなことを書けるのも、生活保護世帯から脱却するため身を粉にした母のおかげである。

暮らしが成り立たない世帯は、公が助けるべきである。しかし、助けすぎると自立心を損じてしまう。自立心のない国民が増えた社会はろくなものではなかろう。

与野党こぞって、国民に金をばらまけという。与野党こぞって愚民化政策を推し進めているように感じられてならない。