2022
04.15

ロシアのウクライナ侵攻はアメリカとNATOの責任なんだと。

らかす日誌

2月25日3月5日の日誌でロシアのウクライナ侵攻に触れた。世の大勢に逆らって、私はロシア・プーチンの側から考えてみようとした。古くは元、ナポレオン、新しくはナチスドイツに国土を蹂躙されたロシアのDNAに刻み込まれた恐怖感が、一歩一歩国境に迫ってくるNATOの包囲網に刺激され、爆発したのではないか、との趣旨である。

私たちを取り巻く西側メディアにはなかなか私の賛同者が現れず、まあ、大本営発表に頼る戦争報道とはそのようなものだろうと諦めていたが、私をはるかに凌駕する論が現れた。文藝春秋5月号の「日本核武装のすすめ」である。

著者はエマニュエル・トッド。フランス人で、人口統計学者、歴史学者、人類学者とたくさんの肩書きを持つ。ソビエト連邦の崩壊をいち早く予言したことで名高い。

この論文によると、元アメリカ空軍の軍人で、いまはシカゴ大学で教鞭を執るジョン・ミアシャイマーが

「いま起きている戦争(ウクライナ戦争)の責任は誰にあるのか? 米国とNATOにある」

と断言しているのだそうだ。そしてエマニュエル・トッドも同じ意見だと言明している。ああ、私の同志がいた!

それによると、ロシアは

「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」

と明確な警告を発してきたにもかかわらず、西側がこれを無視したことが戦争の要因だというのである。

ウクライナはNATOには加盟していないが、米英は高性能の兵器を大量に送るだけでなく、軍事顧問団も派遣してウクライナの武装化を進めてきた。このためプーチンは

「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」

と発言していたが、ウクライナの軍事強化は止まらなかった。

そもそも、ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアはNATO加盟国と国境を接することになる。それだけでもロシアの恐怖心を煽るのに十分なのに、加盟する前から米英がウクライナの軍備強化に力を入れる。ロシアとしては動かざるを得なかった、というのがミアシャイマーの見解だ。

エマニュエル・トッドはミアシャイマーの味方を支持して、

「すでに第3次世界大戦は始まった」

と断言している。

「ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突しているからです。ただ、米国は、自国民の死者を出したくないからです」

ま、私のアラっぽい要約より、文藝春秋のページをめくって頂く方がはるかにわかりやすいはずだ。この論文には戦争の原因だけでなく、こんな指摘もある。

「マウリポリの街が、“見せしめ”のように攻撃されているのには理由があります。アゾフ海に面した戦略的要衝というだけでなく、ネオナチの極右勢力『アゾフ大隊』の発祥地だからです。プーチンのいう『非ナチ化』は、このアゾフ大隊を叩き潰すという意味です」

「ロシアの侵攻が始まると、米英の軍事顧問団は、大量の武器だけ置いてポーランドに逃げてしまいました。米国はウクライナ人を“人間の盾”にしてロシアと闘っているのです。今後、この裏切り行為に対して、ウクライナの反米感情が高まるかも知れません」

あれもこれも、私たちが日々接する日本のメディアでは見たり聞いたことがない話しばかりだ。

ウクライナは心配である。しかし、いまだに大本営発表に頼っているとしか思えないメディアはいかがなものか。
正しい判断をするには、詳細な正しい情報が必要だ。側近政治に陥ったプーチンは正しい判断ができず、ウクライナ侵攻に突っ走った、などと物知り顔に解説する前に、詳細で客観的に正しい情報と分析を伝える努力をしているのか?

手にはった情報を吟味することなく、ただちぎっては投げるメディアなど何の役にも立つまいと思うのは私だけではないはずである。