2022
05.17

不順な天候が続きますねえ。農作物、大丈夫かな。

らかす日誌

もう5月も半ばを過ぎた。それなのに、今日の私の服装は下はGパン、上は長袖のシャツにサマーセーターである。シャツだけだと肌寒く、ウールのベストを着ても何かが足りない。とうとうセーターをタンスから引張りだしてしまった。もう6月が目前だというのに、この低気温はいかがしたものか?

ひょっとしたら、1月にトンガ沖で起きた海底火山噴火の影響ではないかという見方がある。巨大な噴火が起きると、噴き上げられた大量の粉塵が地球上空に漂い、太陽光を遮る。その結果地球上の温度が上がらないというのだ。

思い起こせば1993年、日本は記録的な冷夏に襲われ、米の生育が悪くて米不足に陥った。当時、タイ米を輸入して何とか凌いだが、あの冷夏はフィリピンのピナトゥボ火山の噴火が原因だったと言われている。

あの年私は、畏友カルロスを手伝い、フジテレビ主催のイベントでパエリアを作り、売っていた。日本の米が手に入らず、カルロスはやむなくタイ米を使ったが、タイ米とは実に困った米であった。小石が平気で混じっているのである。パエリアに小石が混じっていたのでは客からのクレームは避けられない。

パエリアは普通、生米を洗わずに使う。あの生米の香りも、パエリアの味を生み出す要素なのだ。洗ってしまうと、ひと味足りなくなる。
だから国産米を使うときは、米の袋から直接パエリア鍋に米を注ぎ込むのだが、タイ米で同じことをしたら小石混じりのパエリアになってしまう。ために、タイ米は袋からザルに移し、水洗いしながら小石を探し出して取り除かねばならなかった。

面倒なだけではない。タイ米では味が落ちる。

「日本の米と同じ炊き方をするからだ」

という指摘も当時あったが、パエリアの作り方は日本の米であろうとタイ米であろうと同じである。もともとスペインの食生活にはタイ米のような長粒米は入っておらず、日本米と同じインディカ米を食べる。

「だから、パエリアはインディカ米で作るのが本当で、長粒米であるタイ米では味が落ちる」

というのはカルロスの言葉であった。

つまり、手間がかかる上に味が落ちる。1993年の火山噴火はパエリアとともに鮮烈な記憶として残っている。

さて、今回の海底火山噴火の影響はどうか? 涼しい夏が来てくれるだけなら歓迎だが、米不足まで引き起こしてしまえば、またや1993年の再来となる。

やや、心配である。

心配といえば、ウクライナをめぐる報道も心配だ。
確か、昨夕のTBSのニュースだったと思う。なんでも、あのプーチンが血液の病気にかかっていると報じたのである。血液の病気? 白血病か? だとすれば、ウクライナへの侵攻は己の余命が短いことを知ったプーチンのイチかバチかの賭か? どうせ自分は死ぬのだから、後がどうなってもかまわないってか?
まあ、たったこれだけの情報でも、いろいろなことが思い浮かぶ。ウクライナ戦争の裏側を見たような気になる。

ところが、その情報の出所を知って気が抜けた。イギリスの大衆紙、ザ・サンが報じたというのである。ザ・サンとは最も発行部数の多い英語日刊紙なのだそうだが、著名なのは誤報というか、虚報の方である。読者の関心さえ引ければそれでいいという、当てにならない媒体なのである。

TBSがザ・サンがに報じたと伝えたことから見て、プーチン=血液の病気説は他の媒体では触れられていないのだろう。
情報の正確さに定評があるザ・タイムスやガーディアンが報じたのなら、

「へえ、そうだったの」

と思わないでもないが、ザ・サンでは、プーチン憎しの世論を煽ろうとするフェイク・ニュースと判断するのが常識ではないか? 私でもそう思うということは、TBSの中にも、そう考えた人が板は腕ある。
それでもこんな糞情報を垂れ流した。TBSも、アンチ・プーチン感情を煽る危険な媒体に落ちたということか。

ウクライナに関していま必要なのは、正確な情報である。太平洋戦争中の日本のメディアを思い出すまでもなく、どちらかに偏った報道は百害あって一利なし、というのがメディアの原理原則であるはずだが、その「原理原則」はいま、何処に行ってしまったのか?

民放局の中で、TBSは最も報道に力を入れてきた局である。そのTBSでもこの体たらく。ますますおかしくなる中国、北朝鮮の同行も含めて、怖い時代が目の前に迫っているような気がしてならない。

にしても、だ。プーチンの誤算は続く。
簡単に落とせると思ったウクライナで激しい抵抗を受けて思い通りに進まない中、今度はロシアと長い国境線で接するためロシアを刺激することを避けてきたフィンランド、それにどちらにも偏らない姿勢を続けてきたスウェーデンまでがNATOに加盟することになった。ロシアのウクライナ侵攻を見て、異国の安全を守るには、この道しかないとハンド何したのだという。
NATOによる包囲網が国境線に迫るのがいやでウクライナに攻め込んだのに、NATOと接する国境線がはるかに延びる。プーチンはこうした動きが出ることを読んでいたのだろうか? それとも、これは想定外か?

マリウポリがロシアのてに落ちたらしい。一方でロシア軍が撤退した地域もあるそうだ。一進一退の中で、私たちはどうしても

「ウクライナ、がんばれ!」

と願ってしまう。
だが、ウクライナががんばるということは、侵攻してきたロシア軍の兵士たちを出来るだけ沢山殺せ、ということである。殺せ! というのは口にしていいことなのか。願っていいことなのか。祈っていいことなのか。

何ともやりきれない現実が目の前にある。