2022
10.09

どうなる、ウクライナ戦争

らかす日誌

ロシアとクリミア半島を繋ぐクリミア大橋が爆破指された。ウクライナの仕業らしい。ウクライナに侵攻しているロシア軍の兵站に影響が出るといわれる。このところウクライナ側の反攻が目立つ。

武力による国境線の変更は許しがたい、と考える私たちの多くは、ウクライナの肩を持って戦闘の行方に目をこらす。少しづつ領土を回復しつつある東部、南部の諸州をウクライナは完全に奪還できるのか? 最も関心が集まるところである。

しかし、だ。この戦争、どんな終わり方をするのだろう?
ウクライナ側の攻勢が続き、戦争勃発前の国境線までロシア軍を押し戻せば、プーチンの面目は丸つぶれである。それはプーチンとしては避けたいはずだ。であれば、今のようにロシア軍が後退を続ける局面が続けば、破れかぶれになったプーチンが核兵器を持ち出す恐れがある。ウクライナに勝って欲しい。しかし核兵器の使用は何としても避けたい。

では、ウクライナが負けてロシア領が広がる新しい国境線が引かれば良いのか? いや、それでは武力による侵略を世界が認めることになる。喜び勇んだ中国が台湾に兵を進めるきっかけになりかねない。戦火は日本に飛び火する恐れが十分にある。最悪のシナリオである。そんな事態は願い下げである。

では、プーチンのメンツをつぶさず、ウクライナの主権が守られる停戦があり得るか? ベトナム戦争は侵略する側だったアメリカが撤退し、抵抗を続けた北ベトナムの勝利で終わった。ソ連がアフガニスタンに攻め込んだアフガン戦争はロシアの敗北で幕が引かれた。あの2つの戦争では負けたアメリカもソ連も核は使わなかった。当時のアメリカ、ソ連の指導者たちに比べ、プーチンの凶暴さが際立つ。恐らく、凶暴な姿勢をとらないと権力の座から引きずり下ろされかねないという恐怖感があるのだろう。プーチンの権力基盤は弱いとしか思えない。
さて、ウクライナ戦争は? ロシアが兵を引き、核を使わずに停戦交渉に入るのが最も望ましいのだが……。

さて、これからウクライナ戦争はどうなるのか。「選択」10月号に、全く対立する見通しの原稿が掲載されている。

巻頭インタビューに登場した歴史学者、ニーアル・ファーガソン氏半、アメリカが「核攻撃があれば核で報復する」という立場の表明を躊躇していることに懸念を示している。プーチンの脅しにあっさりと屈し、核抑止力が効かない状態を作ったというのである。そして、このままでは戦争がダラダラと続きかねず、ウクライナ経済が破綻する恐れがある、という。氏はその先への言及を避けているが、経済が破綻したウクライナがロシアへの抗戦を続けることができるのだろうか?

この巻頭インタビューを読んで気分は暗くなった。ところが、4ページから始まる「プーチンはどう破綻するか」という記事は、米シンクタンク「カーネギー国際平和基金」のクリストファーー・チヴィス上級研究員のこんな談話を惹いてプーチン政権の崩壊を予言している。

「プーチン体制がこの戦争の結果、崩壊するのは疑う余地はない。問題は崩壊るかどうかでははなく、いつ崩壊するかだ。その時ロシアは(第二次世界大戦で敗北した)1945年のドイツと似た状況に置かれるだろう」

というのである。
その結果に至る過程として、この記事はいくつかのデータを挙げている。

・30万人を前線に送る動員令への国民的反発。多くのロシア人が動員されるのを嫌って国外に脱出した
・8月初めまでに7万人から8万人のロシア兵が死傷した。投入した兵士の4割以上にあたる
・下士官の死傷が多くて数が足りなくなっている。下士官が不足した様態では前線の兵士を30万人に増やしても運用できない
・10月に始まった徴兵で集まるのはせいぜい8〜9万人
・現地で使えるロシアの偵察衛星の性能が低く、さらに数も少ないため、情報戦でロシアは勢である
・経済制裁でロシアは弱体化している
・生産年齢の若者が戦争にとられ、ロシア国内で労働力不足が発生している

などである。
これを読む限り、ロシアの戦争遂行能力はそれほど高くはない。しかし、だからこそプーチンが核兵器の使用に踏み切る恐れは十分にあるのだ。

私はよく、

「ゴルゴ13がいればねえ」

と口にする。絶対に依頼を裏切らないスーパー暗殺者のゴルゴ13さえいれば、ロシアの問題も中国の問題も北朝鮮問題も直ちに片が付く。昨日相談を受けた、とある桐生の企業の問題も、できればゴルゴ13に依頼して解決を図りたい。いや、暗殺を認め、賛美するわけではないが……。

だが、ゴルゴ13はいない。私たちはジリジリしながらロシア、中国、北朝鮮の動きを見ることしかできない。