2023
03.29

高額の注射をしてきました。

らかす日誌

今日からホルモン剤による治療の第2段階である。7錠処方されたカソデックス錠80mgは今朝で飲みきった。今日からは注射で男性ホルモンを抑えるのである。朝、9時過ぎに病院に行った。

泌尿器科は今日、暇だったらしい。待つこと10分か15分で診察室に招き入れられた。

「どうでしたか?」

というご下問があったので

「特に副作用らしきものはなかったように思います。また、尿の出がよりスムーズになったので、がん細胞が縮小し、前立腺の肥大が取れてきたのではないかと思っています」

とお応えした。
医師は私の回答をカルテに書き込みながら、

「そうですか。それじゃあ今日から注射を始めましょう」

というので、私は着ていたセーターを脱ぎ、シャツの袖をまくり上げた。

「いや、この注射は腕ではなく、下腹部に打ちます。今日は下腹部の右側に打って、次回は左側、というように場所を変えます」

まあ、確かに腕より下腹部の方が前立腺には近い。そのためか?
私はベッドに横になり、ベルトを緩めてズボンをズリ下げた。へそ下3㎝ぐらいのやや右手寄りを医者がつまみ上げた。そのままズブリと針を刺す。

「あ、なんか普通の注射より痛いみたい」

と声を出すと、

「ええ、これはちょっと太目の針を使うんです。だから、時々ですけど、あとになって出血する人がいます。注射したところをあとで見ておいて下さい」

はいはい、分かりました。絆創膏を貼っておけば大丈夫だと思いますが、念の為に点検しておきます(この原稿執筆時点で出血なし)。

「太い針を使うのはね、この針の中に薬が入っていて、体内に入った薬は28日間少しづつ溶けて体に吸収されるようになっているからなんですよ」

ほう、そんなに便利な注射薬があるんだ? いったいどんな仕組みなんだろう?

「だから、次の注射は4週間後、4月26日になります。でも、2週間後に一度来て下さい。あなたには初めての薬なので経過を見ます。そして大丈夫だったら、3ヶ月持つ薬を次は打ちます。何度も来なくていいから、そちらの方がいいでしょ?」

いや、もちろんそちらの方がありがたいです。
私はもさもさとズボンをズリあげ始めた。

「それと、今日は採血してもらいます。1週間の投薬の効果を見たいので」

きっとPSA値を見るのだろう。高崎のS院長によるとPSA値は当てにならないというが、それでも前立腺のがん細胞の動向を見るにはPSA値しかない。なんとなくもどかしい。

「えーっと、もう一つ」

はい、何でしょう?

「今打った薬は食欲を増進させることがあるんです。お腹が減ってたくさん食べて、体重が増える人がいるんです。それで、ですが、今日は体重も量ってもらって」

いえ、大丈夫です。今の体重は81㎏。昨夕、入浴前に測りましたから間違いありません。体重測定は不要です。
それに糖質制限食を続けているので、体重が増えることもないと思いますが。

「そうですか、それじゃああちらで採血して下さい」

というわけで、本日は注射針2本を体内に差し込まれる日であった。

待合室で待っていると、やがて

「大道さん」

と呼ばれた。会計をしろというのである。はい、と応じて窓口に出向き、料金を見て驚いた。せいぜい3、4000円かと思っていたら

1万530円!

私は素直な人間である。この歳年になっても驚きはすぐに顔に出る。時には声まで出る。

「えっ、こんなに高いの!」

ひょっとしたら、この金額を私に突きつけた事務員も、

「高いなあ」

と思っていたのかも知れない。

「あ、いえ、その、今日は2本注射して、その内1本は採血で、採った血は分析機関に出さなくちゃいけませんので……」

まあ、それは分かる。しかし、血液検査ってこんなに高かったか? でも、しょうがないね、払わなきゃ。

帰宅して、普段は見ない医療費明細書をチェックした。本日、私に投与された薬は、ゾラデックス3.6mgデポというらしい。アストラゼネカ製のホルモン剤である。ネットで見ると、薬科は2万6576円。なるほど、薬とはたかいものである。私は3割負担だからこの注射だけで約8000円!

病を得ると段々貧しくなることを実感した次第である。だって、1ヶ月に1回打つとして、重粒子線治療を受けるまでにあと5、6回、治療後1年はこの注射をするらしいから12回。合計17、8回も1万円を払うことになるではないか。そして重粒子線治療の費用……。

何となく憂鬱になった年金暮らしの私であった。