2002
07.19
07.19
2002年7月19日 辞世の句
うらを見せ
おもてを見せて
ちるもみじ
良寛さんという偉いお坊さんの辞世の句。
こんなことを、死ぬ間際にスパッといえるって、滅茶苦茶すごい!
誰だってさ、やっぱりいい格好して生きていきたいじゃない。隠しておきたい、人には見せたくないことって、いっぱいあるではないですか。「おもてを見せて」、いや「おもてだけを見せて」いたいわけね。
それを良寛さんは
「無理だよ」
とおっしゃる。何をしたって、うらも結局は見せることになる。だったら、無理しないほうがいいよ、って。
なんか、心にストンと落ちて、肩の荷がスッと軽くなる気がしません?
最近は、こんなにいい言葉を見たり聞いたりしませんねえ。なんか、やたらと「感動」ばかりしている人はいるけど。
ん? いや、良寛さんの教えを実践している人たちがいますよ。ほら、電車やバスの中で、鏡だけじゃなく、口紅やビューラーを取り出して、やおら顔づくりを始める女性たち。
だって、化粧前の顔、つまり素顔、スッピンって、俺は嫌いじゃないけど、本人たちにとっては人様には見せたくない「うら」なんでしょ? それを人前にさらして、しかも「おもて」の顔に変える作業工程まで露出しちゃう。確かに、良寛さんの実践だけど、精神はなんか違うみたい。
なお、私がこの句に出会ったのは、ビッグコミックオリジナルの「浮浪雲」。思わずそのページを切り取り、ここで使ってしまった。漫画って、教育的でいいなあ。
同じコマの吹き出しには、
人は、
喜びも悲しみも、
陰も陽も、裏も表も
見せながらちってゆくということだよ。
すごいだろう
と、あった。
こんなところで駄文を書いて恥をかいているのも、「うら」をさらしていることではある。私も良寛さんの教え子であるようだ。