05.15
2008年5月15日 これって……
風邪をひいた。一昨日のことである。
今日は平年並みのようだが、昨日までは不順な天候が続いた。
「えっ、これが5月中旬の気候かよ?」
といいたくなる寒い日が続いた。そして事件が起きた。
我が家は寒波の襲来に無防備だった。もう5月なのである。毛布はしまい込んだ。掛け布団も春秋用のやや薄いものが押入の一番上にあった。これが事件の前提である。
12日夜、12時近くにやや薄い掛け布団の下に入った。少し肌寒いかな、と思ったような記憶もある。だが、もともと私は暑がりなのだ。布団を掛けすぎると寝汗を大量にかく。この程度でいいだろう。すぐに私は夢の世界に滑り落ちていった。
翌朝、つまり一昨日の朝は7時近くに目が覚めた。雨だった。犬の散歩に出た。
ん? なにやら鼻から水滴が落ちる。まあ、ティッシュペーパーで拭けばいいのだが、私は傘をさしている。なのに水滴? 雨滴でないとすると?
軽い鼻風邪だった。あれまあ、昨夜は無防備すぎたか。冬用の布団に換えるか、せめてパジャマの下にTシャツを着込んでおけば防げたはずなのになあ。といっても後の祭りではあるが。
とはいえ、たかが鼻風邪である。たいしたことはあるまい。朝食後、自宅に残っていたPL顆粒を飲み、念のために一袋持って会社に出た。昼食後に飲むためである。
昼過ぎには、鼻水もあまり出なくなった。それですべてが済んだと判断した。PL顆粒の服用はやめた。それでも一昨日は、掛け布団を2枚重ねて寝た。念のためである。
様子が変わったのは、昨日の昼過ぎだった。何となく頭が重い。熱っぽい感じがする。喉がいがらっぽい。咳が出る。あれっ? これって本格的な風邪? いまごろ?
様子を見た。が、症状は変わらない。いや、むしろ少しずつ悪くなっている気がする。午後3時半から会議が入っていたが、とうとう3時過ぎに社内の診療所に向かった。会議なんかどうでもいい!
まず、体温計を渡される。36.9℃。やっぱり微熱がある。
「このところ、天候が急変しましたからねえ。ええ、風邪の患者さんが増えてますよ。はい、口を開けて。もっと上を向いてください。ああ、こりゃあ喉も立派に赤くなってますね」
夜は宴会だった。今朝、妻にいきさつを話した。
「ああ、 ちょっと前まではそんなことで風邪なんてひかなかったのに。やっぱりね」
これって……。
朝、シャワーを浴びていて大変なことに気が付いた。私はリンスだと思い込んで、シャンプーを使っていた。
フケ症の私は、メリットシャンプーが手放せない。花王にしてみれば、大のお得意様である。先々週の土曜日、近くのエスパに買い物に出かけた際、お得意様度をもう一段引き上げようと思った。メリットのリンスが並んでいたのである。シャンプーがメリットなら、リンスもメリットの方がいいのでは。何の根拠もないが、突然私はそう思った。そして、リンスを買い物かごに放り込んだ。と信じていた。
その日から、メリットのリンスを使い始めた。なかなか使いやすい。伸びがいいのである。リンスやヘアコンディショナーは、ドロリとして伸びが悪いものが多い。まあ、傷んだ髪に皮膜を作ろうというのだから、ドロリとして髪の毛にまつわりつかねばならない。伸びが悪いのも頷ける。だが、伸びがいい方が使いやすいことは間違いない。
「でもこのリンス、えらく泡立ちがいいな。メリットの特徴かな?」
シャンプー並みに泡が立つ。ふむ、リンスに泡が立つ必要があるのかな? とは思った。が、この商品がリンスであることは、まったくもって疑わなかった。
なのに、今朝、どうしてこれがリンスであることを確かめようとしたのだろう? わからない。突然ひいた風邪との関係も不明である。
シャンプーし終えた私は、目を細めてリンスの容器を見た。眼鏡が手放せない不自由な目でも、細めれば大きな文字は何とか判別できる。もともと細い目をさらに細めた。誰かが見ていたら、この男は何故に風呂場で目をつぶっているのかと疑問にとらわれたに違いない。
で、じっと見た。商品名が何とか判別できるまで、懸命に目を細めた。読めた。
シャンプー。
泡立ちがいいはずである。伸びがいいはずである。
朝食を取りながら、いきさつを妻に話した。
「というわけで、おれ、このところずっと、髪の毛を2度洗いしてたよ」
妻は冷徹に言いはなった。
「ああ、 ちょっと前まではそんな間違いはしなかったのに。やっぱりね」
これって……。
さて、本棚作りを続けよう。
【磨く】
木材のカットが終われば、次は磨きである。電動サンダーですべての面を磨く。
電動サンダーにセットした紙ヤスリは120番。表面をもっと綺麗にするには240番など番手の大きいものがいいのかも知れないが、それだと磨く速度が遅くなる。これも、まあ、この程度でいいか、という妥協の産物である。
にしても、ほこりっぽい作業である。木の表面を細かな粉にして取り去り、すべすべの肌にしようというのだから仕方ないのだが、飛び散った木の粉は遠慮なく、やや大きめの私の鼻の穴に飛び込む。鼻をかむと、木材の色をした鼻水が出る。
耐える。ひたすら耐える。耐えすぎると、電動サンダーを持つ右手が痺れてジンジンし始めるが、一晩眠れば痺れは取れる。とにかく耐える。
【ダボを使う】
今回の本棚作りのハイライトである。
その作業に入る前に、つなぐとはどのような作業かを、まず概念図で示す。
2枚の板をつなぎ合わせる最も簡単な方法は、ボンドなどの接着剤を使うことだ。ボンドでは強度が心配なら、2液混合式のエポキシ樹脂を使うこともできる。だが、接合面に接着剤を隙間なく塗らねばならないからコストがかさむ。 それに、くっつくまで固定する方法も考えねばならない。面倒だ。
波板型の釘を使う手法もある。ホームセンターなどで目にされた方もいらっしゃると思うが、金属でできた波板の一方が鋭く尖っている釘である。これを2枚の板をくっつけておいて打ち込む。簡単だが、打ち込んだ波板が表面に残る。美観上よろしくない。
今回採用したのは、木製ダボを使うやり方だ。上の図はその概念である。点線で示したのがダボである。2枚の板のくっつけようと思う面の、正確に対称となる場所に穴を開ける。ここに木製のダボを打ち込み、2枚の板をくっつけてしまう。外には何も残らないから、仕上がりが綺麗だ。
問題は穴の位置を決めることだ。2枚の板をくっつけるには数本のダボを使うから、穴の位置がずれては、一方の板に打ち込まれたダボは、もう一枚の板に自分が入るべき穴を見つけることができないのである。
では、どうやって正確な位置決めをするのか?
先人の知恵には驚くべきものがある。らかす日誌「2008年5月11日 始めたが……」に購入品一覧を掲載した。この中にダボ用マーカーという品があったことをご記憶だと思う。これを使うのである。
作業は、次のように進めた。
くっつけようという木材2枚を用意する。一方の木材の接合面に、ドリルで正確に垂直の穴を開ける。
このために買ったのが、垂直ドリルである。写真がないので説明が難しいが、真ん中があいた円形の台座に、垂直の棒が2本立っている。棒の周りにはコイル状のバネが着いており、その上部に電動ドリルを固定する金具がついている。ここにドリルを固定して押し下げれば、垂直な穴を穿つことができる。上手い仕掛けである。
とりあえず穴を開けた。
なかなか上手くあいた。その穴に、ダボ用マーカーを差し込む。
この状態で、もう一方の木材の接合面と合わせ、軽く押しつける。そうすれば、マーカーの先端は尖っているから、もう一方の板の穴を開けるべき場所に窪みができる。
なかなか上手い仕掛けである。
もっとも、上手い仕掛けだから作業が上手く進むとは限らない。私は後刻、厳しい現実を思い知らされることになる。
この稿、続く。