2010
01.08

2010年1月8日 血便

らかす日誌

リンが血便をした。昨日のことである。

午前中、庭に出した。屋内で尿をされるのは困るので(といっても、してしまうのだが)、1日10回前後は外に出す。散歩をする体力がなくなったらしいので、リンが外気に触れるのはこの機会しかない。

いつものように、外に出るとすぐに腰を落とし、うなりながら尿を絞り出し始めた。待っていると5分以上かかる。この季節は寒い。私はいつものように玄関を開けっ放しにしたまま屋内に戻った。
やがて排尿を終えたリンが部屋に入ってきた。妻が後始末に出る。屋外から、妻の素っ頓狂な声がした。

「ウンチに血が混じってる!」

出てみると、庭に下利便が残り、確かに赤いものが混じっている。

「先生に見てもらわなきゃ」

妻が便を採ってビニールでくるんだ。私は命令を受けた。

「持って行って」

命令を受けながら、命令を失念して11時過ぎに家を出、3時頃戻った。妻の声が待っていた。

「また血便をしたのよ。新しい方の便を取っておいたから」

妻を車に乗せ、掛かり付けの動物病院に向かった。平日である。病院で検査結果が出るまで待っている時間はない。妻が看護婦に便を渡し、結果は後日聞くということにして戻った。

今日、その検査結果を電話で伝えられた。受けたのは妻である。

「で、どうだったって?」

 「やっぱりウンチに血が混じっていたって」

トンチンカンな会話にはさんざん付き合わされてきたが、これほどトンチンカンな会話はそれほど多くない。大便に血が混じっていたので、驚いて検査を依頼した。その検査結果が、

「大便に血が混じっていました」

それだけだったら、金をかけて検査する意味ないじゃないか! いや、これはいつもの妻の癖で、何が大事なことかの判断を抜きに、頭に浮かんだことからしゃべっているのに違いない。

「わかったのはそれだけか?」

と考えるのが普通だ。私は疑問を口にした。

「ああ、便に寄生虫はいなかったって」

おいおい、末期にさしかかったらしいガンに冒された犬にとって、寄生虫がいるかどうかは問題か!?

結局わかったのはそれだけである。無駄の見本のような検査であった。

幸い、血便はその2回で止まっている。食事も、鶏肉や豚肉なら食べるようになった。病状は一進一退である。

先ほど外から戻ってきた。玄関のドアを開けると、たたきにリンが長々と寝そべっていた。ドアが開く音にも目を覚ます気配はない。
いまの我が家には灯油を熱源とした床暖房が入っている。屋内にいる限り、それだけで寒さ知らずだ。リンも暖かい床はお気に入りらしく、あちこちで惰眠を貪っている。
だが、玄関のたたきはタイル張りで、当然床暖なんて入っていない。暖かくないタイルの上でぴくりともせずに伸びてる……。

「えっ、リン、終わっちゃったのか?」

腰をかがめてのぞき込んだ。数秒したら、リンがむくっと首をもたげた。

「あ、まだ生きてたの」

リンの隣に死の影を見る日々は、さてあとどれぐらい続くのだろう。