12.13
2010年12月13日 この夢って
エレベーターに乗っていた。場所は、昨年3月までいた東京の会社である。どうやら、我が職場に来た新入社員に社内を案内しているらしい。
目的階は10階。入り口で迎えた新入社員を、10階にある職場に案内する気らしい。10階のボタンを押し、エレベーターが動き始めた。すると、突然別のことを思いついた。
「あ、6階も案内しておかなくっちゃ」
6階のボタンを押した。まず6階に案内し、我が社の中枢部門を見せた上で、当面の職場である10階に導く。私はそう考えたらしいのだ。
2、3、4と階数表示の液晶が数字を示す。そろそろ6階だと思ったころ、エレベーターが急に速度を上げた。
「あれっ?」
と思う間もなく6階を通り過ぎ、数字は10階に迫る。それだけでなく、エレベーターはさらに加速した。
「おいおい、どうなるの?」
エレベータは10階を突き抜けた。
「おい、うちの会社って10階建てじゃなかったっけ?」
と考えるのだが、10階を通り過ぎたエレベーターはさらに加速を続ける。だけでなく、方向を変え始めた。このエレベーター、どうやら逆U字型のレールに沿って動いているらしく、その頂点に達すると身体が地面と平行になり、やがて頭が下になった。それでもエレベーターはぐんぐん加速する。
「おい、これじゃあ地面に激突するじゃないか!」
思わず叫び出しそうになる。いや、待て、下にあった頭がだんだん横になっているぞ。ということはこのレール、円形になってるのか?
いや、そうではなかった。エレベーターは突然、レールから放り出された。身体は地面と水平になったままである。すぐに着地したエレベーターは地面の上を滑っていく。そして止まった。
幸いだったのは、ドアが上向きになって止まってことだ。中からドアをこじ開け、何とか身体を外に出す。助かった!
目が覚めた。午前1時半だった。
何でこんな夢を見る? いったい、どんな意味がある夢なんだ?
そもそも、東京の会社は15階建てで、枢要部門は4階、新人を案内すべき場所は最上階の15階であるはずだ。どうして6階であり、10階なんだ? そんなところにたいした部署はなかったぞ? 現実との整合性が全くないではないか。
エレベーターには複数の人間が乗っていたはずだ。それが横様になって地面に着地し滑走したら、誰かが誰かの下敷きになるはずだ。だが、私の上に誰かがいた形跡はない。私の下で誰かが呻いていた記憶もない。いったいどうなってるんだ?
と、夢に当たっても仕方がない。見たものは見たのだ。
いぶかっているうちに、この夜2度目の眠りについた。また夢を見た。続編である。
宴会だった。ということはあれか? 新人を迎えて歓迎会か? してみると、エレベータに乗ったのは歓迎会場に向かうためだったのか?
と、確かに夢の中で考えた。
ところが、だ。新人の姿は見えない。それなのに、変なヤツがいる。
「大道ちゃん、これ美味いな。君が作ったんだって? 今日帰る前に、作り方を教えてもらわんといかんわ」
そう話しかけてきたのは、いま群馬県にいる同僚である。
ん? お前が何でここにいる? 歓迎会は東京でやっていたはずだ。それに、お前は同い年で、入社当時は別の県で一緒に働き、結構仲がよかった記憶はあるが、60になってもちっとも精神的に成長せず、口ではうまいことを言いながら何もしないお前を、俺は軽蔑し、嫌ってるんだ。それを感じてお前は俺を避けているではないか。なのに、何でレシピを俺に聞いてくる? そもそも、この料理、俺が作ったのか? 作ったとしても、どうしてお前に教えなきゃならない?
目が覚めた。6時半だった。
一夜にして、不思議なストーリーの前編と後編を見る。不可思議な夜だった。
でもこの夢、どんな意味があるんだ?
夢判断ができる方に教えを請えればありがたい。
話は変わる。昨日のことだ。
一人暮らしが続く私は昨日、昼食をとるために外出した。定食屋に行った。
テーブルがすべて埋まっていたので、面倒臭いが小上がりにあがり、6人用の座卓の前であぐらをかき、定食が出てくるのを待った。注文は海老フライ定食である。が、何を頼んだかは、本質ではない。
やがて、注文した海老フライ定食が出てきた。運んできたおばさんがいった。
「大人数のお客さんがいらっしゃったら、あちらに移ってください」
「あちらって? テーブルは全部埋まってるけど」
「カウンター席です」
目をやると、確かにカウンターがある。誰も座っていない。そもそも、この店のカウンター席とは、調理場と客席の間にあり、できた料理がカウンター越しにやりとりされる席でもある。好きこのんでそんなところに座る客はいない。
それに、頼んだ海老フライ定食はすでに私の前に置いてある。これから食べ始めるのである。食べ始めてから多人数の客が来店したら席を移れって、口をモグモグさせながらあそこまで歩けってことか?
まあ、たった1人で6人用の座卓を占領するのは、私も本意ではない。でも、である。そもそも、1人だからカウンター席に座れという類の指示は、俺がこの店に入ったときに言うことではないか?
正しい、あるべき論理が次々と私の頭の中で産まれる。が、惜しむらくは、その論理は私の頭の中だけでグルグル回っただけだった。なにしろ、目の前には海老フライ定食があるのである。まずは食べるしかない。文句は言いたい。しかし、口にしてしまっては海老フライ定食が不味くなる。じっと我慢して、海老フライにかじりつくしかない。
だが、明晰なる我が頭脳は、海老フライに集中しながらも、起きるかも知れない事態への備えも忘れない。
本当に多人数の客が来て席を移れといってきたらどうする?
何度考えても結論は同じであった。そこで食事をやめて金をたたきつけて無言で店を出る。
それが一番格好いいのではないか?
幸い、次々に客は出るだけで、新しい客は来なかった。結果、移らなくてもよかったから、金をたたきつけることもなかった。
見せ場を失った感がないわけでもない。
いずれにしても、あの店には2度と行くことはない。
夕刻、瑛汰から電話があった。今日から幼稚園に通い始めたのだそうだ。給食は残しちゃったが、バーバが作った夕食はいっぱい食べると宣言した。
瑛汰の家族は、やっと正常化の過程に入ったらしい。