2013
07.17

2013年7月17日 ニュートン

らかす日誌

7月に入ってからの日誌の数が少ない。瑛汰の誕生日で横浜に行ったことは原因の一つだが、それだけでもない。ネタ枯れである。
だって、天下国家にだってたいした話題はない。参院選? あんなもの、これが仕事だと思い込んで無駄な紙面、無駄な時間を費やしているメディアを笑っていれば済む。
繰り返しになるが、候補者が問題を正確に捉えず、ただただ何の根拠もなしに好き勝手なことをしゃべりまくっているだけの選挙戦にどうして我々が付き合わねばならぬ?

「アベノミクスで円が安くなり、物価が上昇して庶民の暮らしを圧迫しています」

という候補が、

「日本の農業を守りましょう。外国から安い農産物が入って日本の農業は瀕死の状態です」

恥じらいもなく語る。
おいおい、円安になるってことは、輸入価格が高くなるってことで、つまり輸入品が高くなるってことで、それは輸入農産物の価格も高くなるということなんだけど、あんた分かっているのかね? つまり、円安になれば、日本の農産物の価格競争力は増すのよ。
食料以外の輸入品は安くして、輸入食料品だけは高くして日本の農産物の価格競争力を高めようっていったって、そりゃあ、やりようがないんだよ。その程度の知識しかないのに自分を国会議員に選べって? 有権者をバカにしてはいけないぜ。

というのは、群馬県における民主党候補のことである。ま、ほかも同じレベルが多いと思われるので、代表例としてあげておく。

で、このようにネタがないとき、埋めてくれるのは暇さえあれば読んでいる本である。

ニュートンと贋金づくり 天才科学者が追った世紀の大犯罪」(トマス・レヴェンソン著、白揚社)

確か、いくつかの新聞が書評で取り上げ、面白そうだと思って買った。といっても2500円(本体価格)もする本なので、amazonで古本価格が下がるのを待ち続けたのはいうまでもない。
手元に届いたのは2、3ヶ月前だが、それを読んだ。

なるほど、この宇宙をつくりたもうた神の御心が知りたくて重力の法則をはじめとする物理法則を発見し、近代科学の基礎をつくったニュートンは、天才である。それはいい。だが、その天才が何故に犯罪者を追わねばならないのか?

ニュートンが追いつめる犯罪者は贋金づくりのウィリアム・チャロナーである。
当時ニュートンさんは、給料の高さに惹かれて王立造幣局の監事に就任した。当時の英国で問題となっていたのは贋金づくりである。給料の高い閑職だと思っていたニュートンさんは、だが、贋金づくりの巨魁であったチャロナーを死刑台に送ることに、血道を上げるようになる……。

というノンフィクションなのだが、

「あのニュートンがお巡りさんになって贋金づくりを追っかけたのね」

という意外性はあっても、追いかける道筋に、物理学の天才ニュートンの天才らしさは、実はちっとも見あたらない。地道に証言を集め、時には犯罪者に金を渡してチャロナーに対するスパイに仕立て上げて情報を集める。そうやって、ひょっとしたら世紀の犯罪者であったかも知れないチャロナーに、最後は勝利する、つまり縛り首にしてしまうのだが、だから何なの?

ってな本である。

天才科学者は、追捕使としても天才であった、というのならともかく、地道に証拠を集めましたというだけなのだ。ま、ニュートンの知られざるエピソードであることは確かである。
だけど、いくつもの新聞が書評で取り上げるほどの本か?

ついでに書くと、翻訳が固い。原文が固いからかも知れないが、持って回ったような表現が多く、スーッと頭に入るというわけにはなかなか行かない。
超訳はいかがなものかと思うが、もう少し読みやすい日本語にして欲しかった。

というわけで、ブツブツ不満を言いながら昨日この本を読み終えた私は続いて、

Runnning Pictures 伊藤計劃映画時評集1」(早川書房)

を読み始めた。34歳で夭折し、たった3冊の本誌か残さなかった作家が、映画について書いた本である。夭折したが故か、一部で

 「天才」

といわれることもある作家が映画作品をどう見たか。興味があって読み始めたのだが……。

ま、よほど映画好きの人でない限り、読む必要はないと思います。
私? 読み始めたから、とりあえず読みますけどね。