2014
05.28

2014年5月28日 楽あれば

らかす日誌

苦あり。
苦あれば楽あり。

なるほど、昔の人は人生の摂理を短い言葉で言い表す能力に富んでいた。

無線LAN設定の勝利感に酔ったまま、私は日曜日から、届いたばかりのNAS、QNAP-TS121の設定に取りかかった。インターネットで検索すれば、取扱説明書に始まり、設定の体験談、失敗談が五万と出て来る。

「大丈夫だよ。何しろ、無線LANの設定だってうまくいった。しかも、NASの設定は、BUFFALOで一度経験済みである。できないはずがないだろ?」

怖いもの知らず、とはこのことであろう。私は、かなりの自信を持ってこの作業を始めた。

最初の作業は、別に買ったWDのHDDをNASにセットすることだ。極めて簡易な作業で、HDDをネジ4本でNASのトレーに取り付け、トレーごとNASに再装填すれば作業は終わりである。

次は、NASに電源コードを繋ぎ、LANケーブルを差し込む。電源コードはテーブルタップへ、LANケーブルはルーターへ。これで準備は完了。電源スイッチを入れる。

さて、次の作業は? ネットで検索した手順書を見る。このNAS、取扱説明書など一切入っていない。ここまで終えたらこのアドレスにアクセスしろ、と書いた紙が1枚入っているだけなのだ。

アクセスした。何々、次はQfinderというソフトをダウンロードしてインストールせよとある。はい、了解。ではダウンロードしましょ。あ、終わったな。だったらこれをダブルクリックして、インストール……。

「インストールに失敗しました」

ん? 失敗? ま、そんなこともあるよね。じゃあもう一度。

「インストールに失敗しました」

何で2度も失敗するんだ? ダウンロードしたファイルが壊れてたのか? だったら、もう一度ダウンローーから始めて……。

「インストールに失敗しました」

私はMacではないパソコンにからきし弱い。いや、最近はMacにだってずいぶん弱くなった。トラブルが起きると脂汗を流すだけで、まともな対応策が分からない。NASとは一種のパソコンだという話を聞いた。それも、Macではないパソコンである。
だから、今目の前にあるのは、分からないものが2つ重なったトラブルである。私をパニックに陥らせるには十分すぎる条件だ。

「おい、どうすんだ? どうすんだよ!」

しかし、パニクってばかりでは先に進まない。どうする?

「わかった。だったら、ウインドウズでやってみようじゃないか」

我が事務所には、会社が仕事用にと配っているウインドウズパソコンがある。勝手にソフトをインストールするのは原則として禁止されているが、このようなときには、当然のことながら無視する。

「なるほど。こちらではうまく行くではないか」

ウインドウズパソコンでは、うまくインストールできた。何故Macでうまく行かないのかは不明だが、ここは先に進むしかない。手順書通りに作業を進めた。すると、

「Quick Setup」というボタンが現れた。これをクリックすれば、とりあえずセットアップは終わるらしい。クリックした。

作業が始まった。必要な時間は70分近い。ずいぶん大量の作業があるのだな、と見ていると、10分ほどで突然作業が中断した。正確な表記は記憶にないが、トラブルが起きたことを知らせていた。

仕方ない。また最初からのやりなおしである。ボタンを押す。
すると、直ちに作業が中断してトラブルを知らせる画面が出た。もう一度やってみた。同じである。
おい、Macからもウインドウズからも、初期設定ができないぜ。どうすればいい? それが分からぬ。

とりあえず、一晩寝た。 

翌月曜日、ネットで問い合わせ先を探し、QNAPの日本代理店のひとつに電話をした。

「いやあ、そんなこと、聞いたこともないですが」

といいながら、電話に出た兄ちゃんは、

「だったら、ブラウザに次のアドレスを打ち込んでください」

から始まるアドバイスをくれた。ブラウザでこのNASに入り込み、設定をしてしまおうというのである。電話を繋ぎっぱなしにして、いわれた通りの作業を進める。おっ、おっ、おっ、見えてきたではないか、我が愛しのQNAPが。
さらに指示通りに作業を重ね、

「で、私はネットワークオーディオで使うNAS、つまりミュージックサーバーになってくれたらいいんです。他に使おうとは思っていませんので」

とお伝えすると、

「だったら、今見えてるMultimediaというフォルダにサブフォルダをつくって、それにMusicという名前をつけてください」

私だって、この程度の指示は十分読み解ける。

「はい、作りました。できたんで、このフォルダに音楽データを入れてやればいいんですか?」

「はい、そうです」

「ちょっと待ってください。アルバム1枚分だけ入れます……。はい、コピーが終わりましたので、これからiPadで見てみます……。お、ある。見えた。うん、これでいいんですね」

「そのはずですが」

「ありがとうございました。これで使えます。これからすべての音楽データをここに入れ終わったら、NASを無線LANの子機に繋ぎます。ありがとうございました。多分、これで大丈夫だと思いますが、どこか分からなくなったらまたお電話を差し上げますので、よろしくお願いします」

丁重に礼を申し述べて電話を切ったのはいうまでもない。

勝利感に酔うとは、このようなことだろう。難関といわれるNASの初期設定を、何とか乗り切った。後はすべての音楽データをここにいれ、憎っくきBUFFALOのNASを一刻も早く追い出さねばならない。
そういえば、無線LANをBUFFALOからNECに入れ替えたら、音が途切れる症状が出なくなった。とうことは、BUFFALOのNASよ、お前の責任ではなかったのか? だが、すでに代替機が実用段階になった。同じBUFFALOの無線LANが原因であったのだから、同族としてお前もともに責任を取らねばならぬ。
というか、お前はこれから、ネットワークオーディオに並々ならぬ関心を示している桐生の元有力者O氏にもらわれていくのである。彼の地で奴隷労働に従事せよ!

作動を確認で来た以上は、もう待つ必要はない。直ちに音楽データを記憶させよう。ドラッグ・ドロップで、Macからデータをコピーし始めた。

残り時間10時間

BUFFALOほどではないが、結構時間を食うものだ。作業は深夜までかかったらしい。それでも昨27日朝、目覚めるとコピーは終わっていた。

最近、朝食後の定例行事は、音楽である。
昨朝も朝食後、音楽の時間となった。iPadから見ると、音楽データの入ったNASは2つ見える。新しく登場したQNAPと、従来のBUFFALOである。
BUFFALOは有線でネットワークプレーヤーにつながっている。一方のQNAPはまだ大元のルータと有線でつながっており、ネットワークプレーヤーとは無線で結ばれているに過ぎない。だが、迷わずQNAPを選ぶ。テストも兼ねた音楽鑑賞だから、当然のことである。

さて、最初に選んだアルバムが何であったからは定かではない。だが、私に耳には、前日まで以上にふくよかな音が聞こえてきた。
NASとは所詮、音楽データをデジタルで蓄えている倉庫に過ぎない。その倉庫から呼び出したデジタルデータをアナログに変換するのがネットワークプレーヤーの仕事である。
だから、BUFFALOから出て来るデータと、QNAPから出て来るデータは丸で同じものであるはずである。それを同じプレーヤーでアナログ変換するのだから、違った音になるはずはない。
という理屈はその通りである。しかし、少なくとも私の耳には、

「QNAPの方が遥かに深みと柔らかさを持った音が出て来る」

と聞こえた。

ま、それはどうでもいい。多分、苦労した思い出がそう思わせたのだろう。

「やっとできた!」

無線LANの取り替えに続き、私はほぼ独力で、NASの入れ替えにも成功したのであった。

あったはずだった。なのに昨日、私はQNAPを不良品として返品した。何があったのか?

その間の事情の説明に、私をネットワークオーディオの世界に誘ったSさんに出したメールをコピーすると、こうなる。


QNAPは先週末に手元に届き、日曜日から必死になって設定をしておりました。とにかく迷路を進むような難作業で、一時はうまく行き、すべてのFLAC音源をコピーし、再生しました。気のせいかも知れませんが、QNAPから出て来る音は、何とな耳に優しく、音質が向上したような気がしました。
ここまでは、パソコンとQNAPを、大元のルーターに接続しての作業でした。従って、聴いた音楽も、無線でプレーヤーに飛んでいたということになります。
そこまでできたので、QNAPをプレーヤーのそばに移動し、無線子機につながったハブに接続しました。すると、LAN接続ができません。ネットで見た、HDDを入れ直してみる、という方策も採りましたがだめです。
あきらめて、
『それなら、QNAPは有線接続して、音楽データを無線でとばそう』
と考え、大元のルーターに有線接続しました。正常に動いていたときと違うのは、パソコンが無線接続になっていることだけです。
ところが、です。QNAPがLANを認識しないのです。何をやってもだめで、パソコンからも見えません。
ここまで来て諦め、返品の手続きを取りました。
さて、QNAPとはなかなかの難物です。では、代わりのNASをどうしよう、というのが次の課題でした。手元には、すべての音楽が入った3テラのHDDが残っています。これをいかせるものは、と考え、一時は国産品のRockDiskNextも考えましたが、『遅い』という評価があったこともあり、やっぱりQNAPにしました。ただし、型番は、LINNとの組み合わせで定評のある119にしました。それより1000円ほど高い121は、より新しい機種で、確かCPUもより早いものが採用されていたので購入したのですが。


という次第で、昨日返品手続きを取り、代わりの機種を発注した。
いったい何が起きたのか。いまだに分からない。一度稼働したのに、なぜ2度目は稼働しないのか?

メールには書かなかったが、返品を決めたのは、電話で設定を手伝ってくれたお兄ちゃん(彼には、LANにつながらなくなった時点で2度目の電話をかけた)が、ほぼ絶句しながら、

「それだったら、初期不良もあり得ますね」

といったからである。とにかく、ネットワーク上から姿を消し、何ともアクセスできないNASには手の施しようがないではないか。

で、本日夕、代替機が届いた。「TS-119P Ⅱ」という機種である。

「しかし、それはいいが、俺、自力でこれを設定できる?」

それが昨日からの課題だった。日曜から火曜にかけての作業で、私はすっかり自信を失った。

「ということなんだけど、詳しい学生、いない?」

ふと思い出して、群馬大学理工学部の先生に電話をした。何度も一緒に酒を飲んだ仲良しである。

「ああ、そう。面白い学生がいるから、彼から電話させますよ」

すぐに電話がかかってきた。ひょっとしたら、研究室でゼミの最中でもあったか。

「ということなんだけど、手伝ってもらえるとありがたいと思って」

怖ず怖ずと説明すると、彼は力強く語った。

「はい、分かりました。お伺いします」

僕にできるかどうか、というためらいはない。できるだけやってみますけど、というできなかったときに対する備えもない。
こんないいかた、よほど腕に自信がないとできない。

「あのう、機種は何でしたっけ?」

聞かれたのはそれだけである。機種名を告げると

「はい。わかりました」


彼は土曜日午後に来てくれる。車で迎えに行こうかと申し出たら、

「いや、自転車で行きますから大丈夫ですよ」

終わったら、彼に夕食を御馳走しようと思っている。何を食べたがるだろう?

人生とは。
照る日曇る日、
楽あれば苦あり、
苦あれば楽あり、
捨てる神あれば拾う神あり、
とにかく、糾える縄の如し。

胸を張ったり落ち込んだり、なかなか私の人生も忙しい。しかし、結果としていい人と知り合い、仲良くなれれば、これに超したことはないと、悟りの心境にいる私である。