09.23
2014年9月23日 素数
「ねえ、ボス。素数って何なの?」
横浜の瑛汰からそんな電話がかかってきた。昨夕のことである。
「素数? 瑛汰、お前、まだ小学校2年生だよな。素数なんて、何処で知った?」
さて、最近の教育体系では、どのあたりで素数という概念に触れるのだろうか。多分、素因数分解をする、つまり最大公約数、最小公倍数を学ぶまでは必要ないわけだから、中学校まで、ひょっとしたら小学校高学年までは知る必要のないことであるはずだ。
「あのね、ボスがこの間、古本屋で買ってくれた数学の本があったでしょ。瑛汰、それ読んでるんだ。もう第4章まで読んで。それで、素数って出てきたの」
ああ、そうか。瑛汰が、誕生祝いにブックオフでいっぱい本を買って欲しいというから、一緒に川崎のブックオフに行ったのだった。そういえば、子ども向けの数学の本もその中に入っていたなあ。
「そうか、あれに出てきたのか。うん、素数ってのはだな、1とその数以外では割りきれない数のことだ。2は1と2でしか割り切れないから素数、3も1と3でしか割り切れないから素数。でも4は1と2と4で割り切れるから素数じゃない。分かったか?」
「うん、分かった」
「そうか、でも瑛汰、お前、いま読んでる本、面白いのか?」
「面白いよ」
「読んで、分かるのか?」
「分かる、分かる」
しかし、である。小学2年生に素数はなあ……。
素数は、その面白い性質ゆえに、昔から様々な人が研究してきた。1から10までの間にある素数は4個、11から20までには4個。とすると、数字は10個に4つが素数か? と思うとさにあらず。21から30までには2個しか現れず、31から40までも2個だ。が41から50になると3個になり、51から60までだと2個、61~70は再び2個になり、71~80は3個に戻る。そして81~90は2個で、91~100は1個。
数学者とは、秩序を恋い求める人たちである。この不規則に現れる素数を何とか規則の中に納めようと様々な努力をしたがうまく行かない。じゃあ、というので、素数を作る公式を工夫して……。
ま、そのあたりは好き者に任せておけばいいのだが、しかしである。好き者が、趣味なのか学問なのか区別がつかない作業を延々と続けて素数の性質を少しずつ明らかにしたおかげで、我々はいま、とてつもない成果を受け取っている。
公開暗号鍵、である。その詳しい仕組みをここで書く能力は私にはないが、インターネットでの通信の秘密を守るために使われている。ネットで安心して買い物ができるのも、素数のおかげなのである。
ま、それはそれとして、小学2年生だった私は、素数の「そ」の字も知らなかった。それなのに、小学2年生で素数に触れる。理解できたかどうかはともかく、人類が延々と築き上げてきた知識の一端に、わずか8歳にして触れた瑛汰は、これから何を作り上げているのだろう?
で、私であるが、延々と続けてきた高校入試数学がとうとう最終章、「動く図形」に入り、その全13問(それぞれに演習問題が1問ずつあるので問題数は26題)中2問まで進んだ。残りわずかである。あと2週間もすれば完成するであろう。
これまでの正答率は、さて5割程度か。計算間違いで誤答となったものを、計算間違いをしなかったら、と仮定すると、正答率は9割程度か。
残りは、どうしても自力では解法が見つからなかった。解答を見て
「ああ」
と思ったものもあるが、見ても理解できなかったものもある。私に解法が見つからなかった問題を解ける人がいて、彼が示した解答を、私はそれでも理解できない。
ふむ、私の頭脳とはその程度のものか。
終われば、次は高校数学に進む。そのための参考書、問題集はすでに買い求めた。中学数学で苦しんだ私が、高校数学と仲良くなれるのかどうか。
ま、仲良くなれなかったら放り投げればいいだけのことだ。三角関数、微分、積分、指数関数、対数関数、数列……。
楽しみなようであり、苦しむだけのようでもあり。
加齢とは困ったものである。
腰に不具合が生じ、ギターの弾きすぎで右肩が痛み、それだけでもいやになるのに、今度は左手首がおかしくなった。ちょいと左手でギターの弦を押さえる格好をしてみて欲しい。手首がかなり不自然に曲がり、さらに指を広げようとすると手首に無理がかかるのがおわかりになるだろうか?
そういうわけで、左手首も痛めてしまった。ギターを抱えると痛みが出るので、しばらくサボっていたことを初めてご報告する。
が、である。私が通い詰めている整形外科医はおっしゃった。
「大道さん、45を過ぎて、何処も痛まない人なんてほとんどいないんですよ」
ということはあれか。45を過ぎたら、痛みとうまく付き合うのが人生の鉄則か。
ということで、1週間ほど前からギター練習を再開した。
再開するには、左手首と右肩を何とかしなければならぬ。右肩は、気がつけば回して筋肉をほぐす。気が向けば右手を引っ張って筋肉を伸ばす。
左手首は、とにかく痛むところをマッサージする。私が実行しているのは、左手をテーブルやデスクに置き、痛むところを右の肘で強く圧迫して刺激を与えることである。これをやるとかなり気持ちがよく、左手首もしばらくは無理な格好をしてくれるのである。
ということで、現在は指を動かす鍛錬のため、ドレミを繰り返している。それも、5弦(太い方から2番目の弦)の3フレットから始まるドレミと、6弦(一番太い弦)の8フレットから始まる2パターンのドレミをを繰り返す。
ドレミファソファミレ、ドミファソラソファミ、レミファソラソファミ、レファソラシソファミ……、と続けるのである。
こうして指を慣らした後は、曲に移る。いま力を入れているのは
You've got a friend
かつて、途中までやった曲である。それだけに習得は早く、あと1ヶ月もすれば何とかなるのではないか、と思えてきた。
そうそう、Bob DylanのTomorrow nightも現在のテーマソングである。
Tomorrow night, will you remember what you said to night ?
Tomorrow night, will all the thrill be gone ?
Tomorrow night, will it be just another memory
Or just another song, that's in my heart to linger on ?
Your lips are so tender, your heart is beating fast
And you willingly surrender to me, my darling will it last ?
Tomorrow night, will you be with me when the moon is bright ?
Tomorrow night, will you say those lovely things you said tonight ?
いま言ったこと、明日の夜まで覚えててくれるのかな?
俺、明日の夜を怖がらなくてもいいのかな?
明日の夜は、全く違った思い出になっちゃう?
それとも、俺がうっとりしちゃうもうひとつの曲になる?
君のキスって凄く素敵で、君の胸はドキドキしてたね
君は自分から俺にもたれかかってきて。ねえ、ずっとそうしてくれるって思っていい?
明日の夜、月明かりがでてたら俺といてくれる?
明日の夜、今夜のような、俺をとろけさすこと、言ってくれる?
ってな、まあ、甘さが先に立つラブソングではあるが、そして、ひょっとしたら私にはもう無縁の世界かも知れないが、でも、凄く綺麗な曲なんだよな。
加えて言えば、大変に歌いにくい。メロディラインに、この歌詞を乗せづらいんだよなあ。まあ、いつものDylan節ではあるが。
ということで、お休みなさい。